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『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』  作者: 雨宮ぐみ


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第25話 「初めての嫉妬!?」――大和にいる女の子って誰!?

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――まえがき――


もし、あなたが古い写真の中にいる青年に――


一目惚れしてしまったら、どうしますか?


しかも、その青年が生きていたのは、今から80年も前。


名前しか知らない。


どんな声なのかも、どんな性格なのかも分からない。


もう二度と会うことなんてできない。


……普通なら、そう思いますよね。


16歳の女子高生、五十嵐ひまりも、最初はそう思っていました。


夏休み。


母親の実家で偶然見つけた、古いアルバム。


そこに写っていたのは、昭和十九年の海軍兵学校の学生たち。


その中にいた、一人の青年――如月健一、18歳。


ひまりは、写真を見た瞬間に恋をしてしまいます。


「……かっこいい」


「どんな人だったんだろう」


「どんな声で話すのかな」


「笑ったら、どんな顔をするんだろう」


写真の中の彼を眺めながら、どんどん想像を膨らませていくひまり。


そして、叶うはずのない願いを口にします。


「夢でもいいから……会ってみたい」


ところが、その夜。


写真が不思議な光を放ち――。


気を失ったひまりが目を覚ますと、そこは昭和十九年。


そして目の前には――。


「大丈夫か?」


写真の中の青年、如月健一が立っていました。


「…………え?」


「どうした?」


「……健一さん?」


「なぜ、俺の名前を知っている?」


こうして始まった、80年の時を越えた二人の恋。


現代の女子高生と、戦時中を生きる海軍兵学校の青年。


スマートフォンも、コンビニも、SNSも知らない健一。


そして、昭和の生活や戦時下の常識をまったく知らないひまり。


二人が一緒にいるだけで、毎日が大騒ぎ。


笑ったり、喧嘩したり、嫉妬したり。


時には胸が締めつけられるほど切ない時間を過ごしながら、二人は少しずつ本当の恋を知っていきます。


しかし――。


二人の間には、決して越えることのできない「時代」という壁がありました。


そして健一は、戦艦大和へ。


「必ず帰ってくる」


「待ってる。絶対に待ってるから」


二人は未来を約束します。


けれど――。


戦争という大きな運命が、二人を引き離してしまいます。


それでも、ひまりの恋は終わりません。


80年の時を越えて、もう一度――。


大好きな人に会うために。


これは、写真から始まった恋が、時代を越えて奇跡を起こす物語。


笑えて、キュンとして、時々泣ける。


そして最後には、きっと笑顔になれる。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


どうぞ、ひまりと健一の80年越しの恋を――最後まで見届けてください。

第25話 「初めての嫉妬!?」――大和にいる女の子って誰!?


「……健一くん、ちゃんとご飯食べてるかな」


健一からの手紙を受け取ってから数日。


ひまりは毎晩のように、その手紙を読み返していた。


机の引き出しには、健一から届いた手紙。


その横には、健一からもらった軍服のボタン。


そして――。


小さな写真。


あの日、アルバムからこっそり持ってきた、健一の写真だった。


「……会いたいな」


写真の中の健一に話しかける。


「今ごろ何してるんだろう」


すると――。


コンコン。


「ひまり、いる?」


「はーい!」


祖母が部屋に入ってきた。


「これ、ひまり宛てよ」


「え?」


差し出されたのは、一通の封筒。


「健一くんから!?」


ひまりは飛びつくように受け取った。


「ふふ。よかったわね」


祖母が部屋を出ていく。


ひまりは急いで封を開けた。


「……え?」


けれど。


いつもの手紙とは少し違っていた。



---


『ひまりへ。


今日は少し変わったことがあった。


大和の艦内で、君と同じくらいの年頃の女性を見かけた。


艦の関係者らしい。


君に話しておこうと思った。』


「……」


ひまりの笑顔が止まった。


「女の子……?」


続きを読む。


『特に何かあったわけではない。


ただ、君が知らないままだと心配するかもしれないと思った。


俺は何も心配する必要はない。


ひまりが一番大切だ。


それだけは忘れないでほしい。』


「…………」


ひまりは手紙を机に置いた。


「……女の子」


胸の奥が、モヤモヤする。


「大和に女の子?」


頭の中に、勝手な想像が浮かぶ。


綺麗な女の人。


健一に優しく話しかける。


健一も笑顔で答える。


「……」


ひまりの頬が膨らんだ。


「……嫌」



---


「いやいや!」


ひまりは自分の頬を両手で叩いた。


「何考えてるの、私!」


健一が何をしているかなんて分からない。


それに、健一はちゃんと手紙に書いてくれた。


『ひまりが一番大切だ』


その言葉だって信じている。


「……でも」


やっぱり気になる。


「どんな女の子なんだろう」


ひまりはベッドに倒れ込んだ。


「まさか……健一くんのこと好きだったりして」


「……」


想像すると、さらに嫌になる。


「やだ……」


枕を抱きしめる。


「私、嫉妬してる?」


しばらく考えて――。


「……してる」


自覚した瞬間、顔が熱くなった。


「私、健一くんのこと……本当に好きなんだ」



---


一方、その頃。


戦艦大和。


健一は甲板で海を眺めていた。


「如月!」


「ん?」


同期の青年が声をかける。


「この前、ひまりさんに手紙を書いただろ?」


「ああ」


「余計なことまで書いたな」


「何のことだ?」


「艦内に女性がいたって話」


「ああ」


「……あれ、書かないほうがよかったんじゃないか?」


健一は首を傾げる。


「なぜ?」


「女性のことなんて書いたら、嫉妬するぞ」


「嫉妬?」


「お前、本当に分からないのか?」


「……」


健一は少し考える。


そして――。


「ひまりが?」


「そうだよ」


「……」


健一の口元が、ほんの少し緩んだ。


「……少し、嬉しいかもしれない」


「お前なぁ……」


「だって、それだけ俺を想ってくれているということだろう?」


「はいはい。ごちそうさま」


同期は呆れたように笑った。



---


その日の夜。


健一は手紙を書いていた。


『ひまりへ。


先日の手紙のことだが――。


君がもし、あの女性のことで心配しているなら、安心してほしい。


彼女とは何もない。


俺が大切に想っているのは、君だけだ。


それに――』


健一は少し手を止める。


『君が嫉妬している姿を想像したら、少し笑ってしまった。


すまない。


でも、正直に言うと嬉しい。


俺は君に、俺のことを好きでいてほしいから。』


書き終えた健一は、少し照れながら便箋を折った。


「……これでいい」



---


数日後。


その手紙を受け取ったひまり。


「……」


読み終えた瞬間――。


顔が真っ赤になった。


「な、なによ……!」


『君が嫉妬している姿を想像したら、少し笑ってしまった。』


「笑うなー!」


ひまりは手紙を握りしめる。


「健一くんのくせに……!」


けれど。


頬は緩んでいた。


「……でも」


胸元に手紙を抱える。


「安心した」


そして、小さく呟く。


「私も……健一くんだけだから」



---


その夜。


ひまりは机に向かって手紙を書き始めた。


『健一くんへ。


女の子の話を読んだとき――。


正直、ちょっと嫌でした。


というか、かなり嫌でした。


私、嫉妬しました。


だって、健一くんのことが好きだから。


だから……』


ひまりはペンを止める。


少し恥ずかしい。


でも――。


思い切って書いた。


『健一くんも、私以外の女の子に優しくしすぎないでください。


これは彼女からのお願いです。』


「……!」


自分で書いておいて恥ずかしくなる。


「うわぁ……私、何書いてるの!?」


それでも最後に――。


『帰ってきたら、いっぱい話したいです。


大好き。


ひまり』


と書いた。



---


そして。


同じ頃。


大和の艦内では――。


健一が何気なく海を見ていた。


その表情は穏やかだった。


しかし。


その穏やかな時間は、長くは続かなかった。


「総員、配置につけ!」


突然、艦内に緊張した声が響く。


健一の表情が変わる。


「……何かあったのか?」


艦内が慌ただしくなる。


戦争の気配が――。


また一歩、二人に近づいていた。


健一は胸元の四つ葉を握りしめた。


「……ひまり」


そして心の中で呟く。


必ず帰る。


その約束だけを胸に――。


健一は持ち場へ向かった。


――第25話・終――

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――あとがき――


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』はいかがでしたでしょうか?


この物語は、令和を生きる16歳の女子高生・五十嵐ひまりが、古いアルバムの中に写っていた青年・如月健一に一目惚れするところから始まりました。


「写真の中の人に恋をする」


普通なら、絶対に叶わない恋です。


けれど、ひまりの「会いたい」という強い想いが時を越え、二人は昭和十九年で出会います。


最初は、現代っ子のひまりと、真面目で少し不器用な健一。


時代も違えば、生活も価値観も違う二人でした。


それでも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ惹かれ合い、恋人になっていきました。


二人の恋を描くうえで大切にしたかったのは、戦争そのものではなく、その時代の中でも誰かを好きになり、笑い、未来を夢見た若者たちの気持ちです。


健一にも、ひまりと一緒に過ごしたい未来がありました。


ひまりにも、健一と一緒に見たい未来がありました。


「また海を見よう」


「必ず帰る」


そんな普通の約束が、戦争によってどれほど大切なものだったのか。


だからこそ、二人が離ればなれになる場面は、物語の中でも特に大切にしました。


そして最後は――。


80年前には叶わなかった二人の約束を、令和の時代でもう一度。


健一の生まれ変わりとひまりが再会することで、二人の恋にもう一度、未来を与えました。


80年前にできなかったこと。


一緒に映画を見ること。


令和の街を歩くこと。


スマートフォンを見ること。


そして、何より――。


誰にも引き裂かれることなく、好きな人の隣にいること。


今度こそ、二人にはそんな普通の幸せを手にしてほしい。


そんな願いを込めています。


もし、物語を読み終えたあとに、


「ひまりと健一、この先どうなるんだろう?」


「令和で二人はどんな恋愛をするんだろう?」


そんなふうに想像していただけたなら、とても嬉しいです。


写真の中の一人の青年に一目惚れした少女。


そして、80年という長い時間を越えて、もう一度巡り合った二人。


恋は、時代が変わっても消えない。


そんな奇跡を、二人から感じてもらえたら嬉しいです。


最後まで、ひまりと健一の恋に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。


またどこかで、二人に会える日が来るかもしれません。


そのときはきっと――。


「健一くん、令和へようこそ!」


「……ひまり。まずはスマートフォンの使い方を教えてくれ」


「そこから!?」


そんな二人の声が聞こえてきそうです。


それでは――。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


これにて、二人の最初の物語は幕を閉じます。


最後まで読んでくださったあなたへ。


本当に、ありがとうございました。

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