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『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』  作者: 雨宮ぐみ


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第22話 「戦艦大和」――健一くんの新しい任務

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――まえがき――


もし、あなたが古い写真の中にいる青年に――


一目惚れしてしまったら、どうしますか?


しかも、その青年が生きていたのは、今から80年も前。


名前しか知らない。


どんな声なのかも、どんな性格なのかも分からない。


もう二度と会うことなんてできない。


……普通なら、そう思いますよね。


16歳の女子高生、五十嵐ひまりも、最初はそう思っていました。


夏休み。


母親の実家で偶然見つけた、古いアルバム。


そこに写っていたのは、昭和十九年の海軍兵学校の学生たち。


その中にいた、一人の青年――如月健一、18歳。


ひまりは、写真を見た瞬間に恋をしてしまいます。


「……かっこいい」


「どんな人だったんだろう」


「どんな声で話すのかな」


「笑ったら、どんな顔をするんだろう」


写真の中の彼を眺めながら、どんどん想像を膨らませていくひまり。


そして、叶うはずのない願いを口にします。


「夢でもいいから……会ってみたい」


ところが、その夜。


写真が不思議な光を放ち――。


気を失ったひまりが目を覚ますと、そこは昭和十九年。


そして目の前には――。


「大丈夫か?」


写真の中の青年、如月健一が立っていました。


「…………え?」


「どうした?」


「……健一さん?」


「なぜ、俺の名前を知っている?」


こうして始まった、80年の時を越えた二人の恋。


現代の女子高生と、戦時中を生きる海軍兵学校の青年。


スマートフォンも、コンビニも、SNSも知らない健一。


そして、昭和の生活や戦時下の常識をまったく知らないひまり。


二人が一緒にいるだけで、毎日が大騒ぎ。


笑ったり、喧嘩したり、嫉妬したり。


時には胸が締めつけられるほど切ない時間を過ごしながら、二人は少しずつ本当の恋を知っていきます。


しかし――。


二人の間には、決して越えることのできない「時代」という壁がありました。


そして健一は、戦艦大和へ。


「必ず帰ってくる」


「待ってる。絶対に待ってるから」


二人は未来を約束します。


けれど――。


戦争という大きな運命が、二人を引き離してしまいます。


それでも、ひまりの恋は終わりません。


80年の時を越えて、もう一度――。


大好きな人に会うために。


これは、写真から始まった恋が、時代を越えて奇跡を起こす物語。


笑えて、キュンとして、時々泣ける。


そして最後には、きっと笑顔になれる。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


どうぞ、ひまりと健一の80年越しの恋を――最後まで見届けてください。

第22話 「戦艦大和」――健一くんの新しい任務


「ひまり」


翌朝。


健一に呼ばれて、ひまりは振り返った。


「はい?」


「少し話がある」


その声を聞いた瞬間、ひまりは胸がざわついた。


「……何かあったんですか?」


「ああ」


健一は一枚の書類を手にしていた。


「昨日、配属先が決まった」


「……!」


ひまりの顔が明るくなる。


「本当ですか?」


「ああ」


「どこですか?」


健一は少し黙ってから答えた。


「……戦艦大和だ」


「……」


ひまりの笑顔が消えた。


「……大和?」


「ああ」


その名前を聞いた瞬間――。


頭の中に、あの夢が蘇った。


暗い海。


巨大な船。


そして、遠くから聞こえた健一の声。


『ひまり!』


「……」


ひまりの指先が震える。


「どうした?」


「……何でもない」


「顔色が悪いぞ」


「大丈夫です」


ひまりは無理に笑った。


「戦艦大和……すごい船なんですよね?」


「ああ」


健一は少し嬉しそうに話す。


「日本海軍の誇る戦艦だ」


「……そうなんだ」


「俺も、まさか乗ることになるとは思わなかった」


「……」


ひまりは俯いた。



---


「ひまり?」


「はい」


「何か心配なことがあるのか?」


「……」


言えるわけがない。


ひまりは知っている。


戦艦大和が、歴史の中でどんな最後を迎えるのか。


そして――。


健一が、その船に乗るということ。


「……大和って、危ない船ですか?」


健一は少し驚いた。


「危ない?」


「戦艦だから……」


「ああ。戦争だからな」


「……」


その言葉に、ひまりは何も返せなかった。


「でも、大丈夫だ」


健一は笑った。


「俺は帰ってくる」


「……!」


ひまりは顔を上げる。


「本当に?」


「ああ」


「約束してくれますか?」


「もちろん」


「……」


ひまりは健一の袖をぎゅっと握った。


「絶対ですよ」


「ああ」


「絶対、帰ってきてください」


「分かった」



---


その日の午後。


健一は大和への乗艦準備を始めていた。


ひまりは荷物をまとめるのを手伝っている。


「これ、持っていきます?」


「ああ」


「これも?」


「それも必要だ」


「……」


ひまりは健一の荷物を見ながら、少し寂しくなる。


「本当に行っちゃうんですね」


「任務だからな」


「……分かってます」


健一はひまりを見る。


「寂しい?」


「……はい」


「俺もだ」


「え?」


「君と離れるのは、俺も寂しい」


ひまりの胸が熱くなる。


「……健一くん」


「だから、手紙を書く」


「手紙?」


「ああ」


「毎日?」


「毎日は無理かもしれない」


「じゃあ、書けるときでいいです」


「分かった」


ひまりは笑った。


「私も書きます」


「ああ」


「いっぱい書きます」


「読むのが大変そうだな」


「ちゃんと読んでくださいね!」


「分かった」


二人は笑った。



---


夕方。


ひまりは健一に、以前渡した四つ葉のクローバーのことを思い出した。


「そうだ!」


ひまりは健一の制服の胸元を指差す。


「四つ葉、持ってます?」


「ああ」


健一は内ポケットから、小さな紙を取り出した。


中には――。


ひまりが渡した四つ葉のクローバー。


少し押し花のようになっていた。


「ちゃんと持ってたんだ……」


「ああ」


「大事にしてくれてる?」


「もちろんだ」


ひまりは嬉しそうに笑う。


「じゃあ……これも」


今度は、健一からもらった軍服のボタンを取り出した。


「これを交換しません?」


「交換?」


「はい」


ひまりは自分の持っているボタンを見せる。


「健一くんのボタンを私が持って、私が持ってるものを健一くんが持つの」


「……」


健一は少し考える。


そして――。


「分かった」


健一は制服のボタンを一つ、ひまりに渡した。


「大切にするんだぞ」


「もちろん」


ひまりも自分の小さなお守りを健一に渡した。


「健一くんも」


「ああ」



---


夜。


二人は縁側に座っていた。


「健一くん」


「ん?」


「戦艦大和って……どんな船なんですか?」


「大きいぞ」


健一は少し笑った。


「初めて見たら驚くと思う」


「私も見てみたい」


「いつか連れていけたらいいな」


「……」


その言葉に、ひまりは胸が痛くなる。


「……うん」


「どうした?」


「何でもないです」


ひまりは笑った。


「見てみたい」


「なら、約束だ」


「……約束」



---


そして――。


数日後。


健一が戦艦大和へ向かう日。


朝から港は慌ただしかった。


ひまりは健一の隣を歩いている。


「……」


遠くに巨大な艦影が見えてくる。


ひまりは立ち止まった。


「……大きい」


目の前にそびえる巨大な戦艦。


その姿を見た瞬間――。


ひまりの脳裏に、また夢の光景が蘇った。


暗い海。


炎。


そして――。


「健一くん……!」


ひまりは思わず健一の腕を掴んだ。


「どうした?」


「……」


怖い。


言葉にならない。


「行かないで」と言いたい。


でも――。


歴史を変えることはできない。


健一には、ここで生きる理由がある。


任務がある。


ひまりは涙を堪えた。


「……気をつけて」


「ああ」


「絶対、帰ってきて」


「約束する」


健一はひまりの手を握った。


「俺は帰ってくる」


「……うん」


「ひまり」


「はい?」


「俺がいない間も、笑っていてくれ」


「……」


ひまりは泣きながら笑った。


「無理かもしれない」


「なぜ?」


「健一くんがいないと、寂しいから」


「……」


健一は少し笑った。


「じゃあ、早く帰らないとな」


「うん」


健一が歩き出す。


ひまりはその背中を見送った。


「健一くん……!」


健一が振り返る。


「大好き!」


一瞬、健一が驚く。


そして――。


「俺もだ!」


そう叫んで、船へ向かっていった。



---


ひまりはその場に立ち尽くしていた。


胸元には、健一のボタン。


「……」


大切なお守り。


けれど。


ひまりはまだ知らない。


この出会いが――。


二人にとって最後の「普通の別れ」になることを。


戦艦大和へ乗り込んだ健一を待っているのは――。


戦争という、二人ではどうすることもできない運命だった。


――第22話・終――

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――あとがき――


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』はいかがでしたでしょうか?


この物語は、令和を生きる16歳の女子高生・五十嵐ひまりが、古いアルバムの中に写っていた青年・如月健一に一目惚れするところから始まりました。


「写真の中の人に恋をする」


普通なら、絶対に叶わない恋です。


けれど、ひまりの「会いたい」という強い想いが時を越え、二人は昭和十九年で出会います。


最初は、現代っ子のひまりと、真面目で少し不器用な健一。


時代も違えば、生活も価値観も違う二人でした。


それでも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ惹かれ合い、恋人になっていきました。


二人の恋を描くうえで大切にしたかったのは、戦争そのものではなく、その時代の中でも誰かを好きになり、笑い、未来を夢見た若者たちの気持ちです。


健一にも、ひまりと一緒に過ごしたい未来がありました。


ひまりにも、健一と一緒に見たい未来がありました。


「また海を見よう」


「必ず帰る」


そんな普通の約束が、戦争によってどれほど大切なものだったのか。


だからこそ、二人が離ればなれになる場面は、物語の中でも特に大切にしました。


そして最後は――。


80年前には叶わなかった二人の約束を、令和の時代でもう一度。


健一の生まれ変わりとひまりが再会することで、二人の恋にもう一度、未来を与えました。


80年前にできなかったこと。


一緒に映画を見ること。


令和の街を歩くこと。


スマートフォンを見ること。


そして、何より――。


誰にも引き裂かれることなく、好きな人の隣にいること。


今度こそ、二人にはそんな普通の幸せを手にしてほしい。


そんな願いを込めています。


もし、物語を読み終えたあとに、


「ひまりと健一、この先どうなるんだろう?」


「令和で二人はどんな恋愛をするんだろう?」


そんなふうに想像していただけたなら、とても嬉しいです。


写真の中の一人の青年に一目惚れした少女。


そして、80年という長い時間を越えて、もう一度巡り合った二人。


恋は、時代が変わっても消えない。


そんな奇跡を、二人から感じてもらえたら嬉しいです。


最後まで、ひまりと健一の恋に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。


またどこかで、二人に会える日が来るかもしれません。


そのときはきっと――。


「健一くん、令和へようこそ!」


「……ひまり。まずはスマートフォンの使い方を教えてくれ」


「そこから!?」


そんな二人の声が聞こえてきそうです。


それでは――。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


これにて、二人の最初の物語は幕を閉じます。


最後まで読んでくださったあなたへ。


本当に、ありがとうございました。

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