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『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』  作者: 雨宮ぐみ


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第15話 健一くんの「秘密」を知りたい!

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――まえがき――


もし、あなたが古い写真の中にいる青年に――


一目惚れしてしまったら、どうしますか?


しかも、その青年が生きていたのは、今から80年も前。


名前しか知らない。


どんな声なのかも、どんな性格なのかも分からない。


もう二度と会うことなんてできない。


……普通なら、そう思いますよね。


16歳の女子高生、五十嵐ひまりも、最初はそう思っていました。


夏休み。


母親の実家で偶然見つけた、古いアルバム。


そこに写っていたのは、昭和十九年の海軍兵学校の学生たち。


その中にいた、一人の青年――如月健一、18歳。


ひまりは、写真を見た瞬間に恋をしてしまいます。


「……かっこいい」


「どんな人だったんだろう」


「どんな声で話すのかな」


「笑ったら、どんな顔をするんだろう」


写真の中の彼を眺めながら、どんどん想像を膨らませていくひまり。


そして、叶うはずのない願いを口にします。


「夢でもいいから……会ってみたい」


ところが、その夜。


写真が不思議な光を放ち――。


気を失ったひまりが目を覚ますと、そこは昭和十九年。


そして目の前には――。


「大丈夫か?」


写真の中の青年、如月健一が立っていました。


「…………え?」


「どうした?」


「……健一さん?」


「なぜ、俺の名前を知っている?」


こうして始まった、80年の時を越えた二人の恋。


現代の女子高生と、戦時中を生きる海軍兵学校の青年。


スマートフォンも、コンビニも、SNSも知らない健一。


そして、昭和の生活や戦時下の常識をまったく知らないひまり。


二人が一緒にいるだけで、毎日が大騒ぎ。


笑ったり、喧嘩したり、嫉妬したり。


時には胸が締めつけられるほど切ない時間を過ごしながら、二人は少しずつ本当の恋を知っていきます。


しかし――。


二人の間には、決して越えることのできない「時代」という壁がありました。


そして健一は、戦艦大和へ。


「必ず帰ってくる」


「待ってる。絶対に待ってるから」


二人は未来を約束します。


けれど――。


戦争という大きな運命が、二人を引き離してしまいます。


それでも、ひまりの恋は終わりません。


80年の時を越えて、もう一度――。


大好きな人に会うために。


これは、写真から始まった恋が、時代を越えて奇跡を起こす物語。


笑えて、キュンとして、時々泣ける。


そして最後には、きっと笑顔になれる。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


どうぞ、ひまりと健一の80年越しの恋を――最後まで見届けてください。

第15話 健一くんの「秘密」を知りたい!


「……暑い」


昼下がり。


ひまりは縁側でうちわを仰いでいた。


「暑い……暑すぎる……」


「さっきから、そればかりだな」


隣では健一が本を読んでいる。


「だって暑いんだもん」


「夏だからな」


「令和の夏も暑いけど、ここも暑い!」


「令和というのは、そんなに暑いのか?」


「エアコンがありますから」


「えあこん?」


「部屋を涼しくする機械です」


「……便利な時代なんだな」


健一は少し笑った。


「はい。めちゃくちゃ便利です」


ひまりはうちわをパタパタさせながら、健一を見つめた。


「……」


「何だ?」


「健一くんって、普段何してるんですか?」


「今か?」


「はい」


「訓練をして、勉強をして、食事をして、寝る」


「……」


「何だ?」


「真面目すぎる!」


「そうか?」


「もっと趣味とかないんですか?」


健一は少し考えた。


「読書くらいだな」


「へぇ……」


ひまりは興味津々になる。


「どんな本を読むの?」


「色々だ」


「恋愛小説は?」


「……読まない」


「どうして?」


「興味がない」


「じゃあ、恋愛には興味ないんだ?」


「……」


健一がひまりを見る。


「今はある」


「……!」


ひまりの顔が一瞬で赤くなる。


「そ、それって……」


「君がいるからな」


「……!」


ひまりはうちわで顔を隠した。


「健一くん、ずるい……」


「何が?」


「急にそういうこと言うところ!」


健一は不思議そうな顔をしている。


「本当のことを言っただけだ」


「……もう」


ひまりは嬉しそうに笑った。



---


しばらくして。


ひまりはふと思いついた。


「ねえ、健一くん」


「何だ?」


「私、健一くんのこともっと知りたい」


「俺のこと?」


「はい」


「何を知りたい?」


「好きな食べ物!」


「魚だな」


「好きな色!」


「……青」


「好きな季節!」


「春だ」


「好きな場所!」


「海」


「好きな人!」


「……」


健一が黙った。


「……?」


ひまりが首を傾げる。


すると健一がひまりを見る。


「今、目の前にいる」


「…………」


「ひまり?」


「……もう無理!」


ひまりは顔を真っ赤にして立ち上がった。


「今日の健一くん、反則です!」


「何がだ?」


「知らない!」


健一は笑った。


「君は本当に面白いな」


「健一くんが恥ずかしいこと言うからでしょ!」


「そうか?」


「そうです!」



---


午後。


二人は庭を歩いていた。


ひまりはふと、健一の横顔を見る。


「……」


昨日までなら、ただ「かっこいい」と思っていた。


でも今は違う。


この人には、家族がいて。


友達がいて。


夢があって。


そして――。


まだひまりが知らない人生がある。


「健一くん」


「ん?」


「健一くんは、将来どうなりたいんですか?」


その質問に、健一の表情が少し変わった。


「将来……」


「あ、答えたくなかったらいいです」


「いや」


健一は少し遠くを見る。


「俺は、海軍士官になりたい」


「……」


「国のために働きたいと思っている」


ひまりの胸が少し痛んだ。


この時代に来てから、何度も聞いた言葉。


「国のため」


「海軍」


「戦争」


そして――。


ひまりは知っている。


昭和十九年。


戦争は、まだ終わっていない。


「……そうなんだ」


「ああ」


健一は笑った。


「立派な軍人になりたい」


ひまりは笑顔を作った。


「きっとなれますよ」


「ありがとう」


「……」


でも、胸の奥には不安が広がっていた。



---


夕方。


ひまりは一人で縁側に座っていた。


「……どうしよう」


健一の未来を考える。


ひまりは、歴史を知っている。


戦争の結末も知っている。


そして――。


大切な人が戦争に行ってしまうことも。


「……嫌だ」


思わず呟く。


「健一くんには……ずっと生きていてほしい」


そのとき。


「ひまり?」


「!」


健一が立っていた。


「何かあったのか?」


「……何でもない」


「泣いているのか?」


「え?」


ひまりは慌てて顔を拭った。


「泣いてません」


「泣いているだろう」


健一が隣に座る。


「何があった?」


「……」


ひまりは答えられない。


本当のことを言えない。


――あなたは将来、戦艦大和に乗る。


――そして戦争で……。


そんなこと、今の健一に言えるわけがない。


「……健一くん」


「何だ?」


「約束して」


「何を?」


「ずっと……元気でいて」


健一は少し驚いた。


「急にどうした?」


「いいから」


「……分かった」


「絶対?」


「ああ」


「私より先にいなくならないで」


その言葉に、健一の表情が曇った。


「ひまり」


「……」


「俺は簡単にはいなくならない」


「本当?」


「ああ」


「約束?」


「約束だ」


健一は、ひまりの小指に自分の小指を絡めた。


「俺は君との約束を破らない」


ひまりの目に涙が浮かぶ。


「……ありがとう」


「だから、もう泣くな」


「……はい」



---


その夜。


ひまりは眠れなかった。


布団の中で、健一の言葉を思い出している。


『俺は君との約束を破らない』


「……」


胸が苦しい。


歴史を変えないと決めている。


だから、健一の運命を変えることもできない。


それでも――。


「……好き」


ひまりは枕を抱きしめた。


「大好きだから……」


そして、その夜。


ひまりは夢を見た。


真っ暗な海。


遠くに大きな船が見える。


その船に向かって、誰かが叫んでいる。


『ひまり!』


「……健一くん?」


振り返る。


しかし、そこには誰もいない。


次の瞬間――。


海が大きく揺れた。


「きゃっ!」


ひまりは飛び起きた。


「……夢?」


胸が激しく鼓動している。


「なんだったの……?」


窓の外は、まだ暗い。


ひまりは胸を押さえながら、もう一度目を閉じた。


けれど――。


夢の中で見た大きな船の姿が、いつまでも頭から離れなかった。


その船が何なのか。


このときのひまりには、まだ分からない。


ただ――。


二人の幸せな時間の裏側で。


戦争という大きな影が、少しずつ二人に近づいていた。


――第15話・終――

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――あとがき――


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』はいかがでしたでしょうか?


この物語は、令和を生きる16歳の女子高生・五十嵐ひまりが、古いアルバムの中に写っていた青年・如月健一に一目惚れするところから始まりました。


「写真の中の人に恋をする」


普通なら、絶対に叶わない恋です。


けれど、ひまりの「会いたい」という強い想いが時を越え、二人は昭和十九年で出会います。


最初は、現代っ子のひまりと、真面目で少し不器用な健一。


時代も違えば、生活も価値観も違う二人でした。


それでも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ惹かれ合い、恋人になっていきました。


二人の恋を描くうえで大切にしたかったのは、戦争そのものではなく、その時代の中でも誰かを好きになり、笑い、未来を夢見た若者たちの気持ちです。


健一にも、ひまりと一緒に過ごしたい未来がありました。


ひまりにも、健一と一緒に見たい未来がありました。


「また海を見よう」


「必ず帰る」


そんな普通の約束が、戦争によってどれほど大切なものだったのか。


だからこそ、二人が離ればなれになる場面は、物語の中でも特に大切にしました。


そして最後は――。


80年前には叶わなかった二人の約束を、令和の時代でもう一度。


健一の生まれ変わりとひまりが再会することで、二人の恋にもう一度、未来を与えました。


80年前にできなかったこと。


一緒に映画を見ること。


令和の街を歩くこと。


スマートフォンを見ること。


そして、何より――。


誰にも引き裂かれることなく、好きな人の隣にいること。


今度こそ、二人にはそんな普通の幸せを手にしてほしい。


そんな願いを込めています。


もし、物語を読み終えたあとに、


「ひまりと健一、この先どうなるんだろう?」


「令和で二人はどんな恋愛をするんだろう?」


そんなふうに想像していただけたなら、とても嬉しいです。


写真の中の一人の青年に一目惚れした少女。


そして、80年という長い時間を越えて、もう一度巡り合った二人。


恋は、時代が変わっても消えない。


そんな奇跡を、二人から感じてもらえたら嬉しいです。


最後まで、ひまりと健一の恋に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。


またどこかで、二人に会える日が来るかもしれません。


そのときはきっと――。


「健一くん、令和へようこそ!」


「……ひまり。まずはスマートフォンの使い方を教えてくれ」


「そこから!?」


そんな二人の声が聞こえてきそうです。


それでは――。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


これにて、二人の最初の物語は幕を閉じます。


最後まで読んでくださったあなたへ。


本当に、ありがとうございました。

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