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『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』  作者: 雨宮ぐみ


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12/30

第12話 人生初デートは、昭和十九年!?

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――まえがき――


もし、あなたが古い写真の中にいる青年に――


一目惚れしてしまったら、どうしますか?


しかも、その青年が生きていたのは、今から80年も前。


名前しか知らない。


どんな声なのかも、どんな性格なのかも分からない。


もう二度と会うことなんてできない。


……普通なら、そう思いますよね。


16歳の女子高生、五十嵐ひまりも、最初はそう思っていました。


夏休み。


母親の実家で偶然見つけた、古いアルバム。


そこに写っていたのは、昭和十九年の海軍兵学校の学生たち。


その中にいた、一人の青年――如月健一、18歳。


ひまりは、写真を見た瞬間に恋をしてしまいます。


「……かっこいい」


「どんな人だったんだろう」


「どんな声で話すのかな」


「笑ったら、どんな顔をするんだろう」


写真の中の彼を眺めながら、どんどん想像を膨らませていくひまり。


そして、叶うはずのない願いを口にします。


「夢でもいいから……会ってみたい」


ところが、その夜。


写真が不思議な光を放ち――。


気を失ったひまりが目を覚ますと、そこは昭和十九年。


そして目の前には――。


「大丈夫か?」


写真の中の青年、如月健一が立っていました。


「…………え?」


「どうした?」


「……健一さん?」


「なぜ、俺の名前を知っている?」


こうして始まった、80年の時を越えた二人の恋。


現代の女子高生と、戦時中を生きる海軍兵学校の青年。


スマートフォンも、コンビニも、SNSも知らない健一。


そして、昭和の生活や戦時下の常識をまったく知らないひまり。


二人が一緒にいるだけで、毎日が大騒ぎ。


笑ったり、喧嘩したり、嫉妬したり。


時には胸が締めつけられるほど切ない時間を過ごしながら、二人は少しずつ本当の恋を知っていきます。


しかし――。


二人の間には、決して越えることのできない「時代」という壁がありました。


そして健一は、戦艦大和へ。


「必ず帰ってくる」


「待ってる。絶対に待ってるから」


二人は未来を約束します。


けれど――。


戦争という大きな運命が、二人を引き離してしまいます。


それでも、ひまりの恋は終わりません。


80年の時を越えて、もう一度――。


大好きな人に会うために。


これは、写真から始まった恋が、時代を越えて奇跡を起こす物語。


笑えて、キュンとして、時々泣ける。


そして最後には、きっと笑顔になれる。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


どうぞ、ひまりと健一の80年越しの恋を――最後まで見届けてください。

第12話 人生初デートは、昭和十九年!?


翌朝。


「……よし!」


ひまりは鏡の前で、両手を握りしめた。


今日は――。


「健一くんとの初デート!」


昨日、恋人になったばかり。


そして今日は、人生で初めてのデート。


令和でもしたことがない。


それなのに――。


「まさか、昭和十九年ですることになるなんて……」


ひまりは自分の姿を見る。


借りている着物。


髪も少しだけ整えてもらった。


「……変じゃないよね?」


鏡に向かって確認する。


「大丈夫!」


そう自分に言い聞かせる。


すると――。


「ひまり」


廊下から健一の声。


「は、はい!」


「もう出られるか?」


「今行きます!」


ひまりは慌てて部屋を出た。



---


玄関に行くと、健一が待っていた。


「……」


ひまりは足を止める。


「……かっこいい」


いつもの軍服姿。


何度見ても慣れない。


恋人になった今は、昨日までとは違う意味でドキドキする。


「どうした?」


「……何でもないです」


「そうか?」


「はい」


ひまりは照れながら健一の前に立つ。


「今日……よろしくお願いします」


「ああ」


健一も少し照れている。


「行こうか」


「はい!」



---


二人は並んで歩き始めた。


「どこへ行くんですか?」


「ひまりが決めるんじゃなかったのか?」


「あっ……」


ひまりはしまったという顔をする。


「決めてなかった……」


「……」


健一が苦笑する。


「初めてのデートなのに?」


「だって昨日、嬉しくてそこまで考えてなかったんです!」


「なるほど」


「……健一くんは、行きたいところないんですか?」


「俺か?」


健一は少し考える。


「それなら、海を見に行こう」


「海?」


「ああ」


「……!」


ひまりの顔が明るくなる。


「昨日の約束?」


「そうだ」


「令和の海を見る前に、まず昭和の海ですね!」


「そういうことだ」


二人は笑った。



---


海辺に到着すると――。


「わぁ……!」


ひまりは目を輝かせた。


「やっぱり綺麗!」


青い海。


潮の香り。


波の音。


令和で見る海と違うようで――。


でも、同じ海だった。


「健一くん」


「何だ?」


「海って、本当に繋がってるんですね」


「ああ」


「私たちのいた時代も」


「……そうだな」


ひまりは海を眺めた。


「なんか、不思議」


「何が?」


「80年も離れてるのに、同じ海を見てる」


健一はひまりを見る。


「……」


ひまりは気づかないまま続ける。


「だったら、令和の海も一緒に見られたらいいのにな」


「……ああ」


健一は静かに答えた。


「俺もそう思う」



---


「そうだ!」


ひまりが突然立ち上がる。


「写真!」


「写真?」


「写真撮りたい!」


「写真機なら、どこかにあるだろう」


「でも……」


ひまりは少し寂しそうに笑う。


「スマホがないから、健一くんと一緒の写真が撮れない」


「すまほ?」


「私の時代の写真を撮る機械です」


「なるほど」


健一は海を見ながら言った。


「なら、記憶に残せばいい」


「記憶?」


「ああ」


「写真がなくても、今日のことを覚えていればいい」


「……」


ひまりは健一を見る。


「それ、すごく素敵」


「そうか?」


「はい」


ひまりは笑った。


「じゃあ、絶対忘れない」


「俺も忘れない」


二人は海を眺めた。



---


その後、二人は町へ向かった。


ひまりは何を見ても楽しそうだった。


「これ何ですか?」


「ラムネだ」


「ラムネ!?」


「知っているのか?」


「もちろん!」


「飲んだことがあるのか?」


「あります!」


ひまりは瓶を受け取る。


「懐かしい~!」


「君の時代にもあるんだな」


「ありますよ!」


栓を開ける。


「……!」


ひまりは嬉しそうに飲む。


「美味しい!」


健一も飲む。


「……なるほど」


「どうですか?」


「悪くない」


「ふふっ」


二人でラムネを飲みながら歩く。


「なんか、普通のデートみたい」


「普通のデートだろう」


「……!」


ひまりの顔が赤くなる。


「そ、そうでした」


健一も少し照れたように前を向いた。



---


しばらく歩くと、小さな店の前でひまりが立ち止まった。


「これ、可愛い!」


店先に小さな髪飾りが並んでいる。


「欲しいのか?」


「え?」


「気に入ったんだろう?」


「でも……」


ひまりは首を振る。


「大丈夫です」


健一は店の人に声をかけた。


「これを」


「えっ?」


「健一くん!?」


健一は髪飾りをひまりに差し出した。


「……」


「どうぞ」


「でも……」


「今日の記念だ」


「……!」


ひまりは両手で受け取った。


「ありがとうございます……」


「気に入ったか?」


「はい……!」


ひまりは嬉しそうに笑った。


「一生、大事にします」


「そこまで大げさなものじゃない」


「大げさじゃないです」


ひまりは髪飾りを胸元で大切そうに握った。


「健一くんが初めてくれたプレゼントだから」


「……」


健一の顔が少し赤くなる。


「そうか」



---


夕方。


二人は海辺に戻っていた。


夕日が海を赤く染めている。


「綺麗……」


ひまりは静かに呟いた。


健一も隣で海を見ていた。


「ひまり」


「はい?」


「今日、楽しかったか?」


「もちろん」


「そうか」


「健一くんは?」


「俺も楽しかった」


「……」


ひまりは少しだけ健一に近づいた。


「また、デートしたいです」


「ああ」


「次はどこに行きます?」


「そうだな……」


健一は考える。


「君の好きなところへ行こう」


「本当に?」


「ああ」


ひまりは嬉しそうに笑った。


「じゃあ、次はもっと楽しいところに行きましょう!」


「楽しみにしている」


「約束ですよ?」


「ああ」


また二人の約束が増えた。



---


帰り道。


ひまりはもらった髪飾りを大切そうに眺めていた。


「……」


健一が隣から見る。


「そんなに嬉しいのか?」


「はい」


「ただの髪飾りだぞ」


「違います」


ひまりは笑った。


「健一くんからもらったものだから」


健一は何も言えなかった。


ただ――。


「……そうか」


小さく笑う。


ひまりも笑う。


二人の手が、歩いている途中で一瞬だけ触れた。


「……」


どちらも離さなかった。


ほんの少しだけ。


指先が触れ合ったまま、二人は歩き続けた。


まだ手を繋ぐことには照れがある。


でも――。


二人の距離は、確実に恋人らしくなっていた。


そして、この日の記憶は。


ひまりにとって――。


昭和十九年で初めてできた、大切な恋の思い出になった。


――第12話・終――

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――あとがき――


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』はいかがでしたでしょうか?


この物語は、令和を生きる16歳の女子高生・五十嵐ひまりが、古いアルバムの中に写っていた青年・如月健一に一目惚れするところから始まりました。


「写真の中の人に恋をする」


普通なら、絶対に叶わない恋です。


けれど、ひまりの「会いたい」という強い想いが時を越え、二人は昭和十九年で出会います。


最初は、現代っ子のひまりと、真面目で少し不器用な健一。


時代も違えば、生活も価値観も違う二人でした。


それでも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ惹かれ合い、恋人になっていきました。


二人の恋を描くうえで大切にしたかったのは、戦争そのものではなく、その時代の中でも誰かを好きになり、笑い、未来を夢見た若者たちの気持ちです。


健一にも、ひまりと一緒に過ごしたい未来がありました。


ひまりにも、健一と一緒に見たい未来がありました。


「また海を見よう」


「必ず帰る」


そんな普通の約束が、戦争によってどれほど大切なものだったのか。


だからこそ、二人が離ればなれになる場面は、物語の中でも特に大切にしました。


そして最後は――。


80年前には叶わなかった二人の約束を、令和の時代でもう一度。


健一の生まれ変わりとひまりが再会することで、二人の恋にもう一度、未来を与えました。


80年前にできなかったこと。


一緒に映画を見ること。


令和の街を歩くこと。


スマートフォンを見ること。


そして、何より――。


誰にも引き裂かれることなく、好きな人の隣にいること。


今度こそ、二人にはそんな普通の幸せを手にしてほしい。


そんな願いを込めています。


もし、物語を読み終えたあとに、


「ひまりと健一、この先どうなるんだろう?」


「令和で二人はどんな恋愛をするんだろう?」


そんなふうに想像していただけたなら、とても嬉しいです。


写真の中の一人の青年に一目惚れした少女。


そして、80年という長い時間を越えて、もう一度巡り合った二人。


恋は、時代が変わっても消えない。


そんな奇跡を、二人から感じてもらえたら嬉しいです。


最後まで、ひまりと健一の恋に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。


またどこかで、二人に会える日が来るかもしれません。


そのときはきっと――。


「健一くん、令和へようこそ!」


「……ひまり。まずはスマートフォンの使い方を教えてくれ」


「そこから!?」


そんな二人の声が聞こえてきそうです。


それでは――。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


これにて、二人の最初の物語は幕を閉じます。


最後まで読んでくださったあなたへ。


本当に、ありがとうございました。

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