第十三話 猪突猛進型令嬢ティンウェル
まだ、お淑やかな女の子を書いてないだと……((((゜д゜;))))
王侯貴族がテーマの学園物なのに…………
観閲ありがとうございます。
「そこの貴方、そう貴方よ。
ラヴィウス・ユトア・シロワネア、グレステラ家の親戚の。
貴方に聞きたいことがあるの、この後よろしくて? 」
目の前に、ミルクティー色の緩く巻かれた長い髪を高い位置で一つにまとめ、その美しい空色の瞳に強い意思を浮かべた、艶やかな気品漂う少女が立っていた。
ティンウェル・フェレイン・セレヴィア公爵令嬢だ。
静寂を身に纏う、かの公爵令嬢とは違い、彼女の周りは活気に満ち、彼女もまた自分に絶対的な自信を持っている事が見て取れる。
『行って良いぞ。そいつはティンウェル・フェレイン・セレヴィア。セレヴィア公爵家の令嬢だ。
因みに、王太子の最有力婚約者候補で、あの腹黒王太子の本性を知りながら惚れている、ちょっと変わった令嬢だ。』
頭の中に直接彼の声が響く。
自信溢れる姿から、高位貴族なのだろうと予想していた彼女は、何と公爵令嬢だった。
「はい、特に用事はありません」
「良かったわ。では、こちらに」
ーーーーーーーーーー
彼女の後について暫く歩くと、Sクラスのサロンの個室にたどり着く。
話があると言われて、ある程度予想していた事だったが、他人には言えない事なのかと疑問に思う。
個室の、信じられないほど柔らかいソファに腰を下ろし、彼女に話し掛けた。
「それで、どの様なお話ですか? 」
「貴方は、クロステア様の幼馴染みだと聞きました。
クロステア様の苦手な物を教えて頂けませんか? 」
彼女は堂々とそう言った。
クロノから聞いた情報を思い出す。
確か彼女はあの王太子殿下を好いているという。ならば、好意を寄せている相手の婚約者に嫌がらせをしようとしているというのも納得出来る。
だが…………私には如何しても彼女がそんな事をするようには思えなかった。
彼女には、そういう事について回る『後ろめたさ』が一切、感じられなかったからだ。
「貴女は……如何してそんな事を知りたがるのですか? 」
わた……僕が問いかけると、彼女は驚いたかのように目を大きく見開いて、呟く。
「私が王太子を好きだと知っているのなら、嫌がらせでもするのだと考えないんですか? 」
まぁ、普通はそうだろう。
でも……
「やっぱり、そういう言い方をするって事は、嫌がらせをしようとしている訳じゃないんでしょう?
そもそも、そんな事をする人は面と向かって苦手な物を聞きに行ったりしませんよ。
もう一度聞きます。如何してそんな事を知りたがるんですか? 」
もし、本当に嫌がらせをしようとしているのだったら、いささか間抜け過ぎではなかろうか。
苦手な物を聞きに行くなど、嫌がらせをしようとしていると自ら告白しているような物なのだから。
彼女は頷く。
「確かに、よく考えてみれば、真っ正面から聞きに行くのはおかしかったか。
次回はもっと怪しげに聞き出さなければならないな」
深く頷くその様子に、つい、ツッコミを入れてしまう。
「いや、次回って、次もあるんですか? っていうか、口調崩れてません?」
彼女はむっと、口元を押さえ、薄い笑みを浮かべる。
「あら? 口調が崩れているとは何の事でして? 私、覚えがなくってよ」
明らかな棒読みの台詞。
「いや、流石に誤魔化せないでしょう」
その棒読みで誤魔化そうって、言うのは流石に無理が有るだろう。
彼女はその大きく丸い瞳を半月型に歪めると、小さく舌打ちをした。
「ちっ、流石に騙されないか。ラヴィウス、人が誤魔化してやろうとしたのを遮って、覚悟は有るんだろうな、聞いて貰うぞ私の愚痴を」
私はまたもや、何だか面倒くさい事に、首を突っ込んでしまったみたいだ。
そんな言葉から始まった彼女の愚痴は…………とても長かった。
と言うわけで、その中から僕を呼び出した原因となっただろう事を抜き出してみる。
1.公爵令嬢 ティンウェル・フェレイン・セレヴィアは、王太子殿下 ヴィンセント・サニエル・パレスエルテの事を好いている。
2.だが、だからといって王太子殿下の婚約者である公爵令嬢 クロステア・シルフィア・グレステラに悪感情を持っている訳ではない。むしろ、彼女の事を尊敬している。
3.そうだというのに最近、自分の取り巻きがクロステアへの嫌がらせを打診してくる。
4.非常に面倒くさい
5.だが、何とかして取り巻きの行動を止めなければ尊敬するクロステアに迷惑がかかる。
6.そうだ、苦手な物を聴き出して、それを避ければ良いのではないだろうか?
7.そうしよう。では、早速、幼馴染みに声をかけよう。
「と言うことなんだ。はぁ、すっきりした」
ティンウェルは満足げな溜息をつく。どうやら、人に聞いてもらいたかっただけらしい。
彼女まで、自分は男だと言い出すんじゃないかとハラハラしてしまった。
「それって私に話す前に取り巻きの方に相談した方が良かったんじゃないですか? 」
彼女に対して、僕が言えることは無いにも等しい。実際、こんな誰でも思い付くような事しか言えないのだが、今回の件はそれが一番の解決法な気がする。
「いや、そんな事を言おう物ならあいつらは『ティンウェル様はなんてお優しいんだ、心の中ではクロステア嬢への嫉妬もあるに決まっているのに……私達がティンウェル様に気付かれないように嫌がらせをするしかない』って言いだして収拾がつかなくなるに決まってる。
実際、昔、同じ事があった」
え、怖い……。
彼女はなんてこと無いように溜息をついているが……もう、それは取り巻きと言うより信者と言った方が正しいのではないだろうか。
でも……それなら、あの『言うこと聞いてくれないと嫌いになっちゃうゾ』が効くのではないだろうか。
「『言うこと聞かないと嫌いになる』のはどうでしょうか」
思い切って提案してみる。
「うん? どういう意味だ? 」
彼女は意味がわかっていないようで、首をかしげている。
「要するに、脅すんです。その取り巻きの方々は貴女を慕っているのでしょう。それならば、この脅しは通用するはずです」
彼女はポンと手を打ち、驚いたような顔をする。
「そうか、それはやったことがない。早速試してみようじゃないか。
ありがとう、ラヴィウス。礼を言おう」
興奮したように瞳を輝かせ、勢い良く席を立った彼女は、優雅な令嬢として、許される限りの速度で個室を飛び出した。
「…………え? 」
私にはこの個室に入ると置いて行かれるジンクスでもあるのだろうか?
王立学園、編入二日目、私は二回目の放置を経験しました。
一応、ティンウェルちゃん登場回。
王太子が好きな理由はまた今度です。




