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悪役令嬢、断罪への手引き  作者: 翠雨
第一章 王立学園生活の始まり
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第十二話 クロノの呼び出し(2)

観閲ありがとうございます。

「特にこの豊かに薫るラベンダーの香り、わざわざ取り寄せて良かったですわ。

これからも取り寄せようと思うのですが、ラヴはどう思いますか? 」


『王太子は能力の有る人間に寛大だ。お前があいつに近づいて、信頼されるには、まず能力を示す必要がある。

と言うことで、『四大学園 大総合大会』だ。

流石のお前も知ってるだろ。毎年恒例の同盟を結んでる四国の王立学園が争う大会だ。この大会の結果はその年の同盟国での立ち位置を決める側面もある、だから、選手選びに余念がない。

そこで好成績を修めれば、今と随分変わると思うぞ』


彼は完璧な公爵令嬢の猫を被り、優雅に紅茶を褒める。

だが、頭に直接響く言葉は先程と変わらなく、非常に違和感を感じるが、これからも念話を使うにあたり、この違和感にも慣れなければならないのだろう。


「私もこの紅茶を気に入りました。取り寄せる事には賛成です」


『はぁ、能力を示すのは良いのですが、如何すれば、その大会の選手とやらに選ばれるんです? 』


「そうですわね。取り寄せいうことにしますわ。

所で、このお茶菓子、何処の物かお判り? 」


『そんなの簡単だ。毎年、大会の選手はその年の一年生を中心として選ばれる。つまり、お前は魔法科で学年一位をキープすればいいわけだ。

この学園の編入生で、建国の四英傑の末裔のお前に出来ねぇとは言わせねぇからな』


「たしか、最近有名になった王都の菓子店の物では? 王都から取り寄せたのですか? 」


『いや、この学園、国中から秀才・天才・異才・鬼才を集めてるんですよ。その中で一位の成績って無理があるでしょう』


「当たりですわ。ここのお店の物はとても紅茶に合いますの。

私、気に入ってしまって、取り寄せたんですのよ」


『やれ、お前なら出来る。むしろそれが出来ないならいらない』


その台詞と同時に、公爵令嬢として和やかに細められていた彼の瞳が、薄く開く。

彼の紫の瞳がこちらを探るように見詰める。


確かな威圧を感じて、息ぐるしくなった。


「それは良いですね。私も何か気に入った物を取り寄せようかな」


『やります、やります。やればいいんでしょう』


「良いですわね。私もラヴのお薦めの物を知りたいわ」


『その通りだ。わかってるじゃないか』


「あら、もうこんな時間。そろそろ行かなくてはいけないわ。

では、ラヴ、ご機嫌よう」


『ま、せいぜい頑張れよ』


捨て台詞を残して、彼は唐突に個室を出て行った。


「え、いや、うわっ」


彼の行動に私は暫しの間、呆然としていた。



ーーーーーーーーーー



私が衝撃から立ち直り、個室から立ち去ろうとしたときだった。


小刻みにサロンの床に使われている石材を叩くような音が聞こえた。


「あ、居た居た。ラヴィウスさん、どうも、リズベット・フィリン・タリアって言います。

編入試験以来ですね。

お嬢様の下僕仲間としてこれから頑張りましょう」


廊下からひょっこりと顔を出し、親しげに話し掛けてきたのは、編入試験で彼の使用人だと名乗った、あの少女だった。


「はぁ、どうも」


ん、待てよ? 彼女はクロノの使用人であるのだから、彼女の言うところの『お嬢様』とは彼の事だろう。

そして『下僕』……つまり……それは…………


いや、勢いで返事をしましたけど、私は決して、そんないかがわしい存在になった覚えは無い!


「むぅ、酷くないですか? 私が目の前にいるって言うのに。

と言うか、『下僕』って言葉がいかがわしく感じるなら、いかがわしいのはそういう事を想像しちゃうラヴィウスさんの頭ですよ」


目の前の彼女は拗ねたような声色でそう言った。


「声に出してました? 」


「出してるって言うより、叫んでましたね」


済みません……


「まぁ、下僕の自覚はこれから育っていくでしょうし、今はこれぐらいで勘弁してあげましょう。

それより、私はラヴィウスさんに言いたいことがあるのです。

貴方、キャラの作りが甘いですよっ」


ビシッと音がしそうな勢いで、彼女は私に指を指した。


キャラの作りが甘いとは?…………あの、リズベットさん、私キャラを演じてるわけじゃないんですけど…………


「良いですか、敬語キャラとは、敬語の時と素の時とのギャップが萌えポイントなんです。

誰にでも何処ででも敬語を使っていれば良いって訳じゃないんです。

折角、男の子設定なんですから、一人称は『僕』でいきましょう。親しくなるほど敬語を崩していく形でお願いします。

さぁ、私のことはリズベットと呼び捨てで、幼馴染み設定を存分に活かして」


敬語キャラ?ギャップ?よくわからない単語がところどころに混じる物も、敬語を崩して親しさを演出するという彼女の意見には納得する。


一人称を僕にするという物も、普段から意識して変えていれば、より男性らしくなるのでは無いだろうか。


今は兎に角、王太子殿下にクロノとの関係がバレてはいけないのだ。出来ることならば何でもやっておくべきだろう。


「うん、リズベット、これでいいです……これでいいかな? 」


敬語を使わないように意識してみる。


「ばっちしですよ。ラヴィウスさんヤバイです。イケメンです。最っ高ですっ」


キラキラとした瞳を見ながら、ふと思いついた。


「そうで……そうだ、僕とリズベットさ……は幼馴染みの説明で……だったね。

それなら、僕のことをラヴィウスさんと呼ぶのは不自然では無いか?

確かに爵位の差はあるから呼び捨てにしろとまでは言わないけれど、出来れば、元の名前のラヴと呼んで欲しい」


確かにそうですね、と呟きながら彼女は笑う。


「そうだ、私はお嬢様とラヴさんの性別の事も知ってますし、お嬢様の乳兄妹ですから、安心して頼ってください。

どんと来いです!」


彼女はこちらにウィンクをして、胸を張った。

確かに、秘密を共有出来る仲間というのは、なかなか頼もしい物だった。


「私はこれで失礼しま…………あ、忘れてた。

お嬢様からの伝言です。

『明日からお前の身支度にリズベットを向かわせることにした。そのただ縛っただけという風な髪型はいただけねぇ。

あと、制服の刺繍のモチーフ考えとけよ』だそうです」


今度こそ失礼しますね、と言ってリズベットは部屋に入ってきたときと同じように踵でリズムを刻みながら去って行った。


怒濤の編入初日、私、いや、僕は頼れる仲間? を手に入れたようです。


観閲ありがとうございました。

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