第十一話 クロノの呼び出し
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『放課後、Sクラスのサロンの個室』
短い文章が綴られた紙。
誰が書いたかなんて、一目でわかった。早速の呼び出しだ。
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放課後、クラスメイトに話を聞いて、サロンに向かう。高級菓子やお茶の有るサロンはSクラスの生徒しか使えない、限られた空間という物だ。
元々、このクラス別け制度は生徒のモチベーションを上げるためのものなので、その最上位であるSクラスの生徒はこれでもかと言うほど優遇されるのだ。
「遅いぞ」
個室に入ると、女装の美少年が仏頂面で腕を組んでいた。
「しょうがないじゃないですか。今日、転入初日ですよ」
今日、転入したばかりの人間にこの馬鹿でかい学園を迷わずに早く来いと言う方が間違っている。
「グレステラ家の人間たるもの、初めて行く場所であっても、完璧に把握しなければならない。
そして、仮であったとしてもグレステラ家の親族を名乗るのであれば、当然そのように動くべきである。
頭の堅ぇ叔母の台詞だ」
彼は組んでいた腕をひらひらと振りながら、肩をすくめる。
その行動は、彼がその叔母の言葉に納得していない事を表していた。
「所で、ここは個室と言っても学園内、しかもSクラスのサロンですよ。
もっと警戒された方がいいのでは? 」
嫌味ではなく、単純に疑問に思う。
なかなかに狡猾な彼が、こんな、能力の高い人間が居て、魔法を使えば幾らでも聞き耳を立てられるような場所で正体を曝すとは思えなかった。
彼は、一瞬首を傾げてから、納得したように頷いた。
「そうか、お前は知らなかったなぁ。
この部屋の壁は、世界で唯一、魔法を使わずに魔法を完全に弾く希少金属、フリップスナフトを使ってるんだよ。
流石に希少金属って言うだけあって、国単位でも集めるのに骨を折るほど希少だから、今のこの国の技術で可能な限り薄くされてるけどな」
彼はなんてこと無いように壁を軽く叩く。
「ほら、如何してもあるだろ。
高位貴族の子息令嬢が集まれば、外に漏らしたくない情報の一つや二つ、それを隠すための密談用だ。
あと、教師が試験問題を作ったりもするらしいぜ、この個室」
フリップスナフトと言えば世界で数えるほどしか鉱山のない希少金属だ。
しかも、この金属が希少なのは何も鉱山が少ないからだけではない。
数の少なさに対して、需要がものすごく高く、供給が追いつかないのだ。
確かに、魔法を弾く魔法石や魔道具は有る。だが、それは莫大な魔力を消費する物で、長時間は使用出来ないし、魔力の流れから魔法石や魔道具を使っている事を気取られやすい。
その分、フリップスナフトは金属としての性質で魔法を弾いているため、使い勝手が非常にいいのだ。
その希少金属を学園の部屋に使うなんて、やっぱり王立学園、半端ない…………
大貴族の彼とは違い、私は貧乏辺境伯家の生まれなのだ。
この学園の金持ち具合に慣れられる気が全くもってしなかった。
「わかったなら、用件だ。
まず、王太子の事。今日の昼、あいつに呼び出されたようだが、その髪の事だろ。
どうせ、上手く誤魔化せてないだろう」
私が上手く誤魔化して、王太子殿下の信頼を得ていたとしたら如何するんだ、と言いたいが、実際、私は王太子殿下の信頼を得るどころか、死んで貰うとまで言われたのだから、彼の言葉に頷かない訳にはいかなかった。
「やっぱりな、あいつはお前みてぇな腑抜けに誤魔化されるほど甘くねぇよなぁ。
だが、お前には王太子に信頼されて、将来臣下に誘われる位になってもらう。
元々、幼馴染み設定にしたのは、王太子と親しくなったときに俺の悪い噂や昔の話を吹き込ませるためだしな」
人の悪そうな笑顔を浮かべながら、紅茶に口をつける姿は悪役その物で、わざわざ悪い噂なんて流さなくても、その顔を王太子殿下に見せれば、一発で婚約破棄されるのではないかと思った。
「まぁ、誤魔化せなかったことはしょうがねぇ、でも、これからは俺が指令を出すからな、きちんと従え」
指令? とすると、私は何かあるごとに彼と密談しなければならないのだろうか?
「わかってなさそうな顔だなぁ。いいか、お前にやったその耳飾り、幻影魔法だけじゃなく、通信魔法も付与させた。所謂、念話って奴が出来るようになる」
『こんな感じで、念じたことが相手に伝えられる。
勿論、考えたことが全部筒抜けって訳じゃねぇ、安心しろ。
あと、話しながらでも、使える』
「わかったなら念話で返事をしろ」
『わかったなら念話で返事をしろ』
彼の声が二重に聞こえた。試しに言葉を念じてみる。
『わかりました。指令は口伝ではなく、この方法で伝えると言うことでいいですか』
試してみて、意外と簡単に念話が出来ることに驚く。
もう少し難しいのかと思っていたのだ。
「この紅茶は美味しいですわね」
『そうだ。じゃあ、用件の続きを伝える。お前も念話と実際の会話、同時にこなせるようになっておけ』
いや、それはなかなか難しいだろう。
簡単な念話に油断した今、そんな美味しい話はないのだと思い知りました。
観閲ありがとうございました。




