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悪役令嬢、断罪への手引き  作者: 翠雨
第一章 王立学園生活の始まり
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第十話 Sクラスと王太子殿下

お久しぶりです。

もう少しで、投稿する速度を上げられそうなので、お待ち下さい。


観閲有難う御座います。よろしければ、感想、ご指摘等よろしくお願いします。

「注目ー、今日から編入して来たレアン・ディティアンとラヴィウス・ユトア・シロワネアだ」


意外とフランクなSクラスの担任教師から紹介されて、挨拶をする。

改めて、Sクラスの面々を見回すと、髪が魔力に染まっている者や、美形がとても多い。


やはり、基本的には高位貴族になるに連れ、能力値も高くなる物なのだろうか?


「ディティアンの席は其処の、グレステラの隣、シロワネアの席は……王太子殿下の隣だな」


先生の視線の先には私がここに来る原因となった女装の彼と、輝く蜂蜜色の短い髪の毛先を、王家特有の赤い魔力に染め、サンストーンのような明るいオレンジの瞳をした、凄い美形がいた。


「王太子殿下は……優秀、ね」


思わず、小さく呟いてしまう。彼は一見、線が細く、優しげな顔立ちをした、男だ。


その線の細さでは、武術の腕が立つとは思えない。

かといって、魔法が得意なのかと聞かれれば、否定せざるを得ないだろう。短いとはいえ毛先しか魔力に染まっていないということは、彼が王家の人間にしては魔力量が少ないことを意味しているのだから。


つまり……だ。

彼はいこの優秀な学年のこの最優秀のクラスの席を魔法でもなく武術でもなく、学力だけで手に入れて来たのだろう。


私がこのクラスに入れたのはあくまでも筆記と魔法の試験の結果を足した成績が基準を満たしていたからに過ぎず、魔法の試験で凡庸な結果しか残せていなかったとしたら、合格はしていなかっただろう。


この優しげな王子は、笑顔の裏に、どんな才能を持っていて、どんな努力を積み重ねてきたのだろうか。


「アッシュ先生、何故、僕だけ殿下などと呼ぶんですか、他の者は家名で呼び捨てだというのに」


「いやぁ、流石の俺も国家権力には逆らえねぇからな。今の内に次代の王にゴマすっておかなきゃな」


教師と軽口を叩き合いながらも、全く隙の無いその姿に畏怖を覚えた。



ーーーーーーーーーー



授業が終わり、休憩時間に入る。隣の王太子殿下は私に微笑んだ。


「知らない人間は少ないと思うが、僕はヴィンセント・サニアル・パレスエルテという。この国の王太子だ。

これから宜しくねラヴィウス君。

この学園に所属している間は王太子なんて事は関係なく学園の一生徒だ。

気軽にヴィンスとでも呼んでくれると嬉しい」


「私はラヴィウス・ユトア・シロワネアと申します。

これから、よろしくお願いします。」


当たり障りの無い挨拶をしておく。こんな人間、出来ることなら関わりたく無いのだが、クロノが断罪されるためにはこの人に近づかなければならないのだろう。

正直、かなり憂鬱である。


「あのさ、僕、君に聞きたいことが有るんだ。良ければ一緒に昼食をどうだい? 」


人の良さそうな笑みを浮かべて、私を昼食に誘う姿は、慣れない編入生を気にかける、優しい王太子その物だった。

だが、それならばレアンも食事に誘っていなければおかしい。

何を聞かれるかはわかっている、その問いに対する答えも用意してある、だが、改めてこの王太子を相手にするとなると、本当に誤魔化せるのかと不安になった。



ーーーーーーーーーー



「さて、昼食も一段落したし、質問しても良いかな? 」


人気の無い学園の裏庭で、王太子殿下、ヴィンスと昼食を取った。

彼が食堂のシェフに作らせて、わざわざ裏庭まで運ばせた昼食はとても美味しかったが、目の前に彼がいるとなると、どうも味わった気にならなかった。


「君はシロワネア家の人間だろう。シロワネア家は僕の婚約者の家、グレステラ家の傍系の筈だ。

だが……君のその髪、グレステラ家の魔力の色じゃ無い、だからといって他国の間者ではないだろう。

その魔力の色は始祖の四英傑が一人の『魔道の至宝』レイヴン・レイデルが末裔、レイデル辺境伯家の物なのだから。

君は一体、何者なんだい? 」


彼の優しげな瞳がスッと細められた、表情は笑みの形から動いていないというのに、何とも言えない不快感がこみ上げてくる。


まるで、首筋にナイフを突きつけられ、「動くな、殺すぞ」と言われているような。

間違ってはいないだろう、彼のこの問いには、少なからず、そんな意図も込められているのだろうから。


わかっている、ここで彼に怯えた様子を見せれば終わりだということを。


努めて優雅に目の前に置かれた紅茶に口を付け、自分史上最高に美しく見えるように笑顔を作った。


「王太子殿下、そんな恐ろしい顔をなさらないでください。私は正真正銘、シロワネア家の人間ですよ」


王太子殿下は少し目を開き、眉をひそめた。彼の問いに対して、表面上だけでも余裕を持って言葉を返せたことが珍しかったのかもしれない。


「私は所謂、先祖返りというもので、何代も前に入ったレイデル辺境伯家の血が濃く出ただけです。

その証拠に私は幼い頃から体が弱くて、今年の学園の入学試験の時までは、学園に通える状態ではありませんでしたから」


先祖返りの子供には有りがちな症状だ。元々の体に合わないまでの力が備わることで、魔力が安定しなくなり、体が弱くなる。


勿論、元々レイデル辺境伯家の人間である私は経験したことの無いものだが。


王太子殿下は暫く考え込むような仕草をした。


「まぁ、あり得ない話ではないんだよね。良いよ、今回はここまでで許そう」


でも、僕の身内に手を出したら、死んで貰うよ。

耳元で小さく囁かれたその言葉に固まる私を置いて、王太子殿下は立ち去ったのだった。


王太子殿下に脅されたこの昼下がり、やっぱり私では腹黒さんを騙すことは出来ないようでした。

腹黒王太子、降臨!

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