対面
私たちは屋敷を後にする。行きよりも背中は軽くなったはずが、お仲間が一柱増えてしまった。
何故か彼女に興味を持たれてしまったらしく、しばらくの間は行動を共にすることになったのだ。
「それにしても、急に胡和ちゃんについてくるなんて言い出して……。喜助さんも内心では寂しがっていると思うわ」
照葉さんが、困ったように眉を下げて笑う。
「別に、どうしようが俺の勝手だろ。それに、俺はあいつを主人として認めた訳じゃない。他に所有者として相応しい奴が居るかもしれねぇからな」
「うーん……、私じゃ鍔芽様のお眼鏡に適うかどうか……」
私が苦笑混じりにそう言うと、
「人間には興味があったし、ちょうど良いだろ」
彼女は何でもないことのように言ってのけた。
鍔芽様は今、私の左肩の上で胡座をかいている。重さは殆ど感じない。けれど、肩の上に誰かを乗せて歩くなんて初めてのことで、どうにも落ち着かないのだ。何と言うか、まるで小鳥の止まり木にでもなった気分。
そんな他愛もない話をしているうちに、芸亭へ到着。その頃には、すっかり昼過ぎになっていた。
「お帰り〜、もう皆のこと待ちくたびれたわ。早速、ご飯を食べに……って」
顔を上げた余花さんが、不意に言葉を止める。その視線が、すっと私の肩へと向いた。
「……何、この日本人形?」
余花さんは大きな猫目をぱちぱちと瞬かせる。
「こちらは鍔芽様。刀の付喪神だそうです」
紹介すると、余花さんは物珍しそうに鍔芽様をじっと見詰めた。対する彼女は、私の肩の上で腕を組んだまま顎を上げる。
「よろしくな」
「ふーん。刀には興味無いのよね、私」
余花さんの気怠げな声音に、鍔芽様の眉がぴくりと動く。
「刀の良さが分からねぇとは、とんだすっとこどっこい野郎だな」
「いや、あんたみたいなちんちくりんに言われたくないんだけど……?!」
「何だと?!」
二人の間に、バチバチと火花が散る。初対面とは思えない程の勢い。いや、むしろ初対面だからこそ遠慮が無いのだろうか。
「まぁまぁ、二人とも喧嘩しないの。ほら、花鳥風月に行くわよ〜」
見かねた照葉さんが、慌てて間に割って入る。その一言で、二人は揃ってそっぽを向いてしまった。
駄目だ。仲良く出来る気配が、まるでない。そんな一抹の不安を覚えながら、戸締まりを済ませた私たちは芸亭を後にする。




