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【情念の画家】地味な僕のフェロモンと筆ペンで、彼女たちの理性が限界突破する件  作者: 船橋ひろみ
第五章(最終章):未来キャンバスと、素顔の肖像画(ポートレート)

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第131話:タクシーの沈黙、茨城のドンの圧

ピィィィンポォォォン!


「あ……!」


「何してんのよ、ともくん」


先に改札を通った陽菜が俺を見て苦笑いしている。


鈴江ちゃんのことを思い出していたらカードをタッチさせるタイミングがズレてしまった。

後ろのサラリーマンが舌打ちする。

すみません、とペコペコして再度タッチして改札を抜ける。


駅構内の時計を見上げた。

とりあえず、待ち合わせの時間には間に合ったようだ。


「いたいた。灯くん!」


聞き慣れた大野さんの声が響いた。

たぶん、俺が自動改札でマヌケにひっかかったので気付いたのだ。


コーデュロイのジャケットを羽織った大野さんが、ホッとした顔で俺たちに近寄ってくる。


「こんばんは。よかった、会えて……」


「あ、こんばんは。お待たせしました……

分かりやすい場所だし、間違えないですよー」


苦笑いして大野さんに答えたが、ちょっと困った顔で笑い返す。


そうじゃない人がいるらしい。


「こんばんは。初めまして、神栖陽菜です」


陽菜はやや緊張しながらも、体育会系のハキハキとしたあいさつで会釈をする。


「ああ、あなたが……

あら、ノスタルジー横丁のキャストさんにいたわよね?

案内係、とても良かったわよ」


「えっ……! あ、ありがとうございます!」


大野さんが微笑むと、元案内係は照れながら再び会釈する。


「そうそう、人混みをスイスイ抜けるから、スタッフさんたちから『水玉の稲妻』って呼ばれてなかった?」


硬直する陽菜。


『だからよ、現場じゃあ、誰が言い始めたか知らないが、青い稲妻じゃなくて……

『水玉の稲妻』って呼ばれてるらしい』


銀さんの言葉を思い出し、俺は思わず吹き出した。


「……議員秘書さんって、すげぇ」


「やあねぇ、もう、元秘書よ。

しげさんが引退したから、今じゃ全然情報が入って来ないのよ、これでも」


鼻白む陽菜。


大野さんはどこまで俺たちの事を知っているのだろう。

まさかいつも公園で抱きしめあったりとかまでは知らないだろうけど、やはりヘタなことはできそうにない。


どぎまぎする俺たちを促しながら、大野さんがペデストリアンデッキを颯爽と歩く。

スカートを翻す姿は、すれ違うおばさまたちよりずっと若々しい。


デッキから見える夜景を眺めながら、大野さんの後ろを歩くと、タクシー乗り場にたどり着いた。

大野さんがハザードランプが点滅した一台のタクシーに早足で近づいて、コツコツと窓をたたく。


開いた窓から車内に何か話してから、俺たちに手招きした。


「え、誰だろう?どこ行くのかな」


「塩浜さん以外いないだろ?どこだろうな、ホントに高級料亭かな」


「適当ねぇ」


大野さんが助手席に乗り込んだ。

呆れた口調の陽菜と並んでタクシーに近づく。


『当たり前が、当たり前じゃない……ことかな』


田辺先輩の言葉が頭をよぎる。

きっと、こんな何気ない会話が俺たちの結びつきを強くしていくのだ。


そう思うと、なんだかくすぐったい。


「やめてよ、なにニヤニヤしてんのよ」


がちゃっ。

後部座席のドアが開いた。

真顔に戻って覗き込む。


「こんばんは……!」


じろり、と見られて、何もしていないのにドキリとする。

ステッキに両手を重ねた塩浜さんが、岩のようにどっしりと座っていたのだった。

【担当:塩浜重三郎(実業家/元県議会議員)】

陽菜ちゃんという娘さんは、瑞恵に似ている。

灯くんが彼女をモデルにした理由が、隣に座らせてみてよくわかった。

余計なことを聞いて、少し困らせてしまったが……。

でも、この若い二人を見ていると、昔のワシらを思い出してならん。


次回、第132話『笑いの連鎖、家族の温度』


喜美江。お前がそんな風に笑うから、ワシまで毒気を抜かれてしまったわ。


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