# 第二話 連れ去られる六人
王城前の広場に、六人の人間が並ばされていた。
紅を引きかけたまま連行された花嫁姿の少女 ── リアナ。
市場の籠を取り落としたままの女 ── マリエル。
仕立てのピンを口にくわえたままの青年 ── テオ。
鎧の留め具を半分外したまま跪いた騎士 ── エドリック。
パンの粉が頬に付いたままの娘 ── ミオ。
そして、白衣の魔術医 ── アイリス。
それぞれの背後に、それぞれの番が立っていた。
獅子族の将軍サラフは、マリエルの肩に手を置いていた。マリエルの目は焦点を結ばず、ただ「子供」とだけ繰り返していた。サラフは何も言わなかった。彼の手は震えていた。番が母であったという事実を、獣の本能はうまく処理できなかった。
エルフォニア王が、震える声で宣言を読み上げた。
「番に選ばれし六名は、本日をもって獣国の客人となる。これは古き盟約に基づく ── 」
リアナは、群衆の最前列を必死に探した。婚約者のレオがいた。彼は唇を噛み切って、血を流しながら、それでも彼女の名を呼ばなかった。呼べば斬られる。声を上げれば、彼女が斬られる。リアナは、唇だけを動かして「ごめんなさい」と言った。
馬車に乗せられる直前、アイリスは荷物の中の羊皮紙を一枚、こっそり抜き出した。
番というものの定義、嗅覚機構、神経反応 ── 観察日誌をつけなければ、と思った。
怯えるかわりに、観察する。
それが、彼女が選んだ生存戦略だった。




