もみの蝶

温暖で太陽と水に恵まれた豊かな土地にあるクァ神国は、天を神と崇める宗教国家。
神に仕える舞徒『神の蝶』になって三カ月、ローサは舞徒の頂点に君臨する白蝶ルエ・ムーの弟子として楽しい日々をすごしていた。
しかし、足首を怪我したルエを治療のために医学舎へと連れて行ったせいで、『鬼肌』の医学徒カーナとルエを出会わせてしまう。
異教徒として差別の対象にある『鬼肌』に近づくことをためらわないルエは、『鬼肌』との間に生まれた混血として蔑まれるローサを構わず弟子に迎えてくれた、公平さと強い好奇心の持ち主だった。
信徒の体に触れることを許されない身でありながら医師になることを志すカーナの存在は、ローサから愛する師との平穏な日々を奪っていく。