60.
聖華は、奉太郎が自分の提案を受け入れてくれたことを、心の中でじっくり味わっていた。
(ふへへ♡ ふへー♡ ふへへへー♡)
あまりに嬉しさに、心の声まで間の抜けたものになってしまう。
無論、表情にも彼女の浮ついた思いがありありと浮かんでいた。
「昼神さん?」
「ふへー?」
「大丈夫?」
「ちゅきー……♡」
聖華は無意識に告白の言葉を漏らしていた。
だが、そのことに彼女は気づいていない。
それほどまでに、夢見心地だったのだろう。
奉太郎はただ苦笑しながら「そっか」とさらりと流す。
フードコートでの告白など、ムードもへったくれもない。
聖華自身、そんなことに気づく余裕すらなく、ただ自分の思いを素直に、無意識のまま口にしてるだけだった。
「は! あ、あたし……今ぼーっとしてた?」
「そうだねそうだね」
奉太郎が笑ってやり過ごす。
その笑顔を見るだけで、聖華の口元がふにゃりと緩んでしまう。
「あ、昼ご飯できたみたいだね。取りに行こう」
「ふへー♡」
「ご飯落とすと危ないから、ちゃんとしてね」
「ふぁーい♡」
まるで雲の上に立っているかのような、おぼつかない足取りで、二人は昼食を回収する。
トレーにのったラーメンとオムライスを、自分の席へと運ぶ。
「昼神さん。ラーメンはこびしたらしゃれにならないからね」
「わかってまーす」
「ほんとに?」
「ほんとにー」
歩きながら、聖華はまた幸せを感じていた。
自分の体を気遣ってくれる、優しいカレシ。
(あたしって阿智くんを独り占めにできる、世界で最高に幸せな女ですなー♡ しあわせー♡)




