58.
奉太郎たちは、フードコートへとやって来ていた。
二人並んで、座れる席を探して歩く。
休日のせいか、空き席はなかなか見つからない。
「あ、あそこっ!」
空いたと思った瞬間、別の誰かがすっと席に滑り込んでしまう。
「とられちゃった……」
「しょうがないね」
なかなか座れない状況が続いていても、聖華はまるで焦る様子がなかった。
むしろ、同じ目的を持って、二人で動いてる。
同じ時間を共有してるということが、嬉しかった。
(大好きな人と一緒に何かするって、なーんて素敵なんだろ~♡)
聖華はふにゃりと、口元をほころばせる。
このままずっと二人でさまよい歩いていても、少しも嫌ではなかった。
「あそこ空いた。いこう」
奉太郎がぐっと、聖華の手を引っ張る。
素早く、見事に席を確保する。
(ちょっとがっかり……だけど、えへへ♡ 阿智くんってほんとに頼りになるなぁ~……♡ しゅきぃ~……♡)
聖華の表情からすぐに察したのだろう、奉太郎は苦笑いを浮かべながら言う。
「ここに来た目的忘れたの?」
「まさか! じゃ、お店探しにいこー」
奉太郎はうなずくと、羽織っていた上着を脱いで、座席にかける。
手荷物を置いていたら、スリに遭ってしまうかもしれない。
そう思って、さっ……とスマートに動いてくれたわけだ。
「もー、阿智くん、かっこよすぎるよ~……♡」
「俺まだ何もやってないけど……」
「無自覚にスマートなところ、しゅき~♡」




