56.
「まずはお昼ご飯にしようか」
「さんせー!」
奉太郎の提案に、聖華が喜んで乗っかる。
(ほんとに、体全体で感情を表現するんだな)
聖華は嬉しいと飛び跳ねるし、逆に落ちこんでいるときは、体を縮める。
今は何度も隣で飛び跳ねていた。
「らんち~。ごはん~。阿智くんとごはん~」
彼女の上気した頬、柔らかい手。
そして……彼女の温かさ。
そばにいるといつもより、彼女の存在を感じられる。
(昼神さん……ほんとに綺麗だな。男達が、自分のものにしたいって気持ちもよくわかる)
飛び跳ねる度に、聖華の大きな胸が弾む。
それが道行く男どもの視線を集めていた。
「昼神さん。目立つから」
「へ? あっ! ご、ごめん……」
聖華はジャンプするのを止める。
(ふぅ……良かった。……良かった、か)
まだ自分のカノジョでも何でもない。
それでも、聖華が他人から、そんな風に性的な目で見られることを、奉太郎は許せなかった。
(昼神さん、誰でもやらせてくれるって噂に気づいていた。思ったより、他人から性的に見られたくないんだろう)
だから、飛び跳ねるのを止めろと言ったのだ。
(俺は……彼女に幸せになって欲しいし、幸せにしたい)
みさおに、過去に、決着を付けた。
前に進み、幸せになるために。
「良い感じのレストラン見つけておいたんだ」
「わぁい!」
しかし……歩くことしばし。
「ありゃー。混んでるね~」
店の前には、長蛇の列ができていた。
待合の椅子は全部埋まっており、店の外、隣の隣……そのまた隣まで、行列ができてる。
(しまった。休日の昼時だからな……。予約しておくべきだったな)
段取りの悪さに辟易する、奉太郎。
そのとき、きゅるる……と可愛らしい音が鳴った。
聖華は「と、鳥さんかなぁ~……あははは~……」と顔を赤くしてそっぽを向いていた。
(昼神さん、お腹すいてるみたいだ。ここでの食事にこだわって、お腹をすかせるのはよくない。……決断は早くしよう)
「昼神さん。お昼、地下のフードコートでもいい? そっちのほうが規模大きいし、店も多いから、直ぐご飯食べれると思うから」
人気店と比べると、ムードがないと言わざるを得ない。
この変更にがっかりされるかも知れない、奉太郎は少しばかり不安になったのだが……。
「えへー♡ ありがと~!」
「……?」
「アタシお腹ペコペコだったんだっ。だから……ありがとうっ!」
いつも通り、言葉の少ない聖華。
おそらく気を遣ってくれてありがとう、と言いたいのだろう。
(ああ、本当に……良い子だな。俺は……やっぱりこの子のことが好きだ)
「いこうか」
「おーす!」




