55.
手をつないで、奉太郎たちは大型商業施設へと足を運ぶ。
休日だからか、やはり人が多い。
(手をつないで正解だった)
奉太郎は一人心の中でつぶやく。
口に出さないのは、聖華を傷つけないためだ。
(昼神さん……すごく繊細だからな)
自分と手をつないだのは、迷子にならないため。
好きじゃないから、がーん……と。
そう言って、落ち込む聖華が容易に想像できたのだ。
(でも直ぐに、誤解は解けるんだろうなぁ……)
聖華のその単純明快さを、奉太郎は好ましく思っている。
だがそれを口に出すのははばかられた。
照れくさかったからだ。
「ふへへ~♡ 阿智くんちゅき~♡ ちゅきちゅきちゅき~……♡」
一方で、聖華は思ったことを全部口に出していた。
「人混みに迷わないようにしてるのも優しいし~♡ あたしの要望取り入れてくれたのもうれしすぎ~♡ ちゅき~♡」
(繊細なんだか、図太いんだか)
聖華は、奉太郎の一挙手一投足に大いに心を乱される割には、脇が甘い。
そんなつぶやきが聞こえてないとでも思っているのだろうか。
(多分わからないんだろうな。今……本当に幸せいっぱいなんだろうな)
聖華は、あまりに、わかりやすすぎる。
裏表がなさ過ぎる。
それを……奉太郎は本当に好ましく思っているのだった。




