表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
316/317

316 宰相の非道な戦術とその対応

 矢文作戦の指示を出したセラードが戻って来るまでの間、俺はあれこれと考えを巡らせる……が、どうにも今は状況がよろしくない。


 なにより問題なのは、時間がない事だ。


 4月になったとはいえ、まだ朝晩は肌寒い。

 壁の上で十字架にかけられている子供達の体力は、もって数日だろう。


 それまでに対策を講じないといけないが。力攻めをしたら、宰相は人質を殺すだろう。


 それも一気に全員殺すとカードがなくなってしまうので、『軍を引かないなら1時間に1人ずつ』とかの、嫌なやり方でやってくる気がする。


 それに耐えて攻撃を続行するメンタルは……俺にあるかどうか分からないけど。

 ここに来るまでに多くの死者を出す戦いをしてきたのだから、今更身内だからという理由で10数人の犠牲を避けるために軍を引くのは、身勝手に過ぎるのではないかという気持ちはある。


 だけど、この体の本来の持ち主である皇帝との約束もあるので、できれば人質の命も助けたい。


 みんなの表情からしても、子供を見捨てるというのはあまり気持ちのいい選択肢ではないみたいだからね。



 ……という訳で、セラードが戻ってきてメンバーが揃った所で話し合いだ。


 まずは……とりあえずこの質問かな。


「今の状況を打開するのに、なにかいい手がある人いる?」


 そう言って全員を見回すが、みんな押し黙って言葉を発しない。

 まぁそうだよね……。


「じゃあ、今から全力で総攻撃をかけたらどんな結果になると思う?」


 その問いに、現場の総指揮官であるリーズが少し考えて答えてくれる。


「敵に秘密兵器などがなければ、強引な力攻めでも攻略はできると思います。

 ただ、敵の士気次第ですが日数は5日以上。損害は数千か、下手をしたら万を覚悟する必要があるでしょうね」


 敵の士気か……緊急で集められた住民達で構成される守備隊の士気はどんなものだろう?


 故郷を守るのだという使命感に燃えていれば高そうだけど、望遠鏡で見る限り、表情に覇気はない。


 多分、宰相は領民にもあまり好かれてはいないのだろう。

 子供をはりつけにするような人が好かれる訳もないよね。


 それなら矢文で寝返る可能性がありそうだけど、宰相の事だから妻子を避難名目とかで城に監禁し、それを人質にして男達を前線に駆り立てるくらいの事はやっていそうだ。


 それだと、おいそれと裏切ったり降伏したりできないだろう。

 士気は低くても、戦いは泥沼になる予感がする。


 ……やっぱり城塞じょうさい相手に力攻めはしたくないね。


 時間をかけてよければなにかしら方法はあるんだけど、そこは封じられた。

 宰相は本当にやる事がいやらしい。一周回って感心してしまうほどだ……。



「セラード、一旦帝都まで退いたとして。その後どんな交渉になると思う?」


「……今更皇帝陛下と宰相の組み合わせで国を運営できるとは思えませんから、国を割る事になるでしょうね。

 宰相領を。あるいは周辺の宰相派貴族の領地まで含めて、別の国として独立させる。


 そして安全保障のために……申し上げにくい事ですが、陛下のお母上の身柄は宰相預かりとなる……くらいが落とし所だと思います」


「だよね……」


 俺もそんな所だと思うが、シーラやアフマン将軍達は到底納得しないだろう。


 和平が成った後なら、少数の護衛だけで皇帝と母親の面会とかはできそうだから、この体の持ち主的にはそれでもいいかもだけど……俺としても納得できかねる。


 宰相が全部の権限と財産のほとんどを放棄して国外に亡命とかが、ギリギリ受け入れ可能な範囲だった。


 それだってシーラやアフマン将軍にとっては大いに不満だっただろうに、国を割って宰相の独立国を作るなんて、他の宰相に恨みを持つ人達からしても、到底収まりがつかないだろう。


 そんな事をしたら『皇帝は身内可愛さに宰相と手を握った』とか言われて、反乱の火種になるかもしれない。


 ……もしかしたら宰相、そこまで考えての計略かもしれないね。この手の悪知恵は実によく回りそうだから。



 ――しかし、力攻めはダメ。退却もよくないとなると、残る手段は非常に限られる。


「シーラ、精鋭部隊を率いて夜襲をかけて、磔にされてる人質を救出するのって可能かな?」


「……正直難しいと思います。やれと命じられればやりますが、成功する可能性は低いでしょう」


 まぁそうだよね。

 敵にしてみれば最後の切り札。これを失ったらもう後がなくて負け確定なんだから、奪還に来るなんて想定済みだろうし、それはもう厳重に。全力で守っているだろう。


 そこに乗り込んで人質を救出し、足手まといになるだろう子供を10人以上も連れて戻ってくるなんて、そりゃ不可能だ。


 …………ん? 『全力で守っている』か……。



「――ねぇシーラ、『精鋭部隊を率いて、夜襲で宰相の首を取ってきて』ならできる?

 人質の奪還作戦を平行してやって、敵を誘導して注意を逸らすから。


 切り札である人質を全力で守ろうとしたら、宰相周りは手薄になると思うんだよね。

 宰相軍の正規兵は相当数が失われて、信頼できる護衛兵ってそう多くないはずだし」


 ――俺の言葉に、シーラの目が鋭く輝き。


「人質の奪還よりは可能性が高いと思います。ぜひやらせてください!」


 と、力強い返事が返ってくる。


「よし、じゃあそれでいこう。

 今夜夜襲をかけるから準備をして。俺も同行する」



 そう言った所で、場の空気がシンとなって、全員の視線が俺に注がれるのだった……。




帝国暦170年 4月14日


現時点での帝国に対する影響度……80.789%


資産

・3145万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×10


配下

シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達101人(部下・帝国復興軍部隊長95人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)※2人戦死

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

カーミラ(部下 蜂起軍選抜部隊長 元男爵家長女)

サラクス(臣下 帝国東部で最大勢力の辺境伯)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ