314 敵の本拠へ
宰相軍を撃破した復興軍は、戦場から逃げた宰相を追って西へと向かう。
おそらく馬か馬車で逃げたので途中で追いつく事はできないだろうけど、領都で追いつけるだろう。
領都から更に先に逃げる可能性は……なくはないけど、高くないと思う。
今更宰相を受け入れる貴族がいるとも思えないし、国外逃亡を図ろうにも、西のジェルファ王国、北と東の遊牧民、どちらも俺の味方だ。
南はよく知らないけど、広大な砂漠だと聞いている。
南東は海に面しているらしいので、唯一有効な逃亡ルートとしては海路がある。
領都の東を流れている川を下れば海に出るはずなので、このルートだけは警戒しておこう。
そんな事を考えながら、行きとほぼ同じ日数をかけて。俺達は宰相領の領都へと戻ってきた。
以前来た時と違う点は、中にいる宰相軍兵士の大半は東の戦場で失われ。満足な守備兵がいないという点だ。
蜂起軍のアフマン将軍からもらった伝令によると。宰相を捕える事には失敗したが、我先に川を渡ろうとしている所を後ろから急襲し。
随伴していた騎兵2000のうち半数を討ち取り、馬はほとんど川を渡れなかったらしい。
歩兵部隊で騎兵相手に大戦果である。
今は蜂起軍が領都を取り囲んでいて、宰相が船で脱出した形跡もないらしい。
領軍が壊滅したので、領都内から無理やり兵士を集めて即席の防衛軍を編成しているらしいが、元の精鋭を誇った領軍には及ぶべくもないだろう。
もし宰相の最初の思惑通り。東に向かった復興軍を追いかけて殲滅する事ができれば、帝国は再び宰相の天下となっていたはずだ。
そのためにありったけの軍を率いて追撃するのは正しい選択だったけど、負けると悲惨な事になるよね……。
乾坤一擲の大博打に失敗した訳だから無理もないんだけど、さて宰相はこれからどうするつもりなのだろうか?
逃げようとしている様子はないみたいだけど、降伏を申し出てもこない。
まさか領都を守り切れると思っている訳もないと思うけど……。
窮すれば鈍すると言う言葉があるけど、追い詰められて判断力を失ってしまったのか?
あるいは負けを悟っていても、降伏を決断できずにいるのか。
それならいいけど、世の中には『窮すれば通ずる』と言う言葉もある。
追い詰められるといい策がひらめくという意味だけど、それじゃない事を祈りたいね……。
そんな事を考えながら、復興軍も領都を包囲し。
川を使って脱出できないよう、領都の東と川岸も固め。船も配置する。
……正直、俺としては宰相とその身内が脱出して国外に亡命すると言うなら、それも選択肢ではあるんだけどね。
シーラをはじめ、宰相を仇と憎む人達には受け入れ難いだろうけど。全権を剥奪して国外追放でも、一応復讐は果たされる……というのは無理があるだろうか?
とりあえず俺的には、穏便に済むならそれも選択肢だ。
それというのも、もしこの局面で宰相に採られたら嫌だなと思う戦法があるからである。
――それを警戒しつつ。とりあえず降伏を促す使者を送ってみる事にする。
内容は、『宰相とその一族が国外へ出るなら、命までは取らない。若干の財貨の持ち出しも認める』というもので。とりあえず矢文で領都内に射ち込んでみる。
もし先方が交渉に応じると言ってきたら、その時正式に派遣する使者は……散々迷ったけど、セラードに行ってもらう事にした。
セラードも宰相に家を潰され。
家名再興を期して妹のリーズと共に参加した西方遠征軍では、教国軍の奇襲攻撃を受けて、ジェルファ王国王都に当たる西方新領領都に置き去りにされた。
恨みは深いだろうけど、文官タイプで感情を理性でコントロールできる人材だ。
他の候補者は、シーラ・リーズ・アフマン将軍・カーミラと、恨みが深い宰相を前にしたら、多分考えるより先に手が出るタイプだからね……。
そんな準備を整えながら矢文への反応を待っていると。返事は文章ではない形で返って来た。
それは俺が警戒していた、この局面で採られると困る戦法。
そもそも戦法なのかどうかさえ疑問だが、対応に困る厄介な方法だ。
その報告を持ってきた伝令の言葉に、頭が痛むのを感じながら。
ともかく状況を確認しようと、俺は報告があった街壁北側へと向かうのだった……。
帝国暦170年 4月14日
現時点での帝国に対する影響度……80.789%
資産
・3145万ダルナ
・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)
・エルフの傷薬×10
配下
シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)
メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)
メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)
エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)
ティアナ(エリスの協力者 月給なし)
クレア(部下・ジェルファ王国宰相)
オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)
元孤児の兵士達101人(部下・帝国復興軍部隊長95人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)※2人戦死
セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)
ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)
船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)
怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)
キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)
セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)
ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)
カーミラ(部下 蜂起軍選抜部隊長 元男爵家長女)
サラクス(臣下 帝国東部で最大勢力の辺境伯)




