313 戦いの傷痕
サラクス辺境伯と部下達を連れてカーミラの陣に赴き。手短に顔合わせと、北での捕虜の扱いについての相談をする。
カーミラの部隊も手伝って武装解除を済ませ。あとは辺境伯軍の警備で、辺境伯領の領都であるサラクスの街へ移送されるのだそうだ。
街の中には入れずに郊外で管理するそうで、『1000人ずつくらいの小集団に分けると管理しやすいよ』と、以前帝国軍の捕虜を扱った時の経験からアドバイスをする。
あと、一般兵士には寛大な対応でいいけど、宰相の悪事に加担していたような上級者に関しては、監視を厳重にするようにとお願いしておく。
手短に話をまとめ、辺境伯についてきた部下30人の内10人には引き続き北で捕虜の管理に当たってもらい。
残りの20人を連れて、広い方の丘に向かう。
そこで先行していた辺境伯軍と合流する……が、なにやら皆さんの視線が鋭くて怖い。
何事かと思ったら、どうやら視線の先は遊牧民の軍らしい。
なるほど。辺境伯軍からしたら長年悩まされ続け、苦汁を舐めさせられてきた、不倶戴天の敵だもんね。
これからは仲間になる予定なので気持ちを切り替えて欲しいけど、すぐにとはいかないだろう。
とはいえ辺境伯領は遊牧民と交易をする最前線なので、なるべく早く関係を修復して欲しい。
これは辺境伯の指導力に期待だ。俺から重ねてよろしくお願いしておく。
一方で戦いの方は落ち着いたようで、宰相軍のほとんどは投降したらしく、戦闘らしい戦闘は起きていない。
なので辺境伯軍と接触しないように、遊牧民宛に『もう応援は大丈夫、ありがとう。一旦草原に戻っていて、後日また連絡する。同梱のお金は、今回消費した武器や食糧なんかの補充に使って』という内容をちょっと固めに書いた手紙を伝令に持たせ、金貨100枚を同梱する。
これは宰相が遊牧民を味方につけようとして積んだのと同額だ。
後日もっと巨額に相当するお礼が行くけど、とりあえず今回の戦いに関する食料と武器の消耗分を、普通の交易で補ってお釣りがくる額のはずだ。
余った分は、北で起きている干ばつに対応するための食糧調達に充ててくれればいい。
辺境伯にも話をして、遊牧民と交易をする手配を整えてもらう。
今後の友好関係の為にも、ぼったくったりしないようにと注意を添えてだ。
東部住民の感情は複雑だろうけど、商人なら損得だけで動いてくれる人もいると思う。
元々帝国東部は豊かな穀倉地帯なので、穀物が高値で売れるなら歓迎のはずなのだ。
そんな打ち合わせをした後、辺境伯軍は丘を降りていく。
しばらくは復興軍と共同で捕虜の把握と武装解除に当たり。ある程度落ち着いたら、復興軍は北に向かわせる。
カーミラの隊と合流して、宰相を追うのだ。
……南でも宰相軍の大半が降伏し、武装解除は順調に進んでいるようで。丘の上からそれを見ていると、伝令が入ってくる。
いわく、『北で捕らえた捕虜はおよそ5800名です』との事で、元が6000人だったから、ほとんどが捕虜になった計算だ。
一方で南は激しい戦いがあったのでそうもいかず。暫定の報告で『捕虜の数は2万1000から3000ほどの見込み』らしい。
元の数が3万5000だったとすれば、1万2000から4000の死者が出た事になる。
ざっくり3分の1だ。
そして復興軍の犠牲も少ない物ではなく。特に囮として圧倒的多数の宰相軍と撤退戦を戦ったリーズの隊は、3000人の内死亡420名、重傷630名の損害を出したらしい。
こちらも3人に1人を少し上回る数だ。
怪我はエルフの傷薬で癒せても、死んでしまった人はどうにもならない。
復興軍の最精鋭部隊だけに、大きな損失である……。
そして、長い間俺達と苦楽を共にしてくれたララク達元孤児からも。97人中戦死2名が出たとの事だ。
……軍師として、他の戦死者達と差をつけるのはいけない事だと分かってはいるけど。顔も名前も知っていて、一緒に暮らした事もある仲だ。
どうしても感情が動いてしまう……。
目が熱くなったのを、なるべく周囲に気付かれないようにそっとぬぐい。
表向きだけでも気持ちを切り替えて、武装解除の作業をじっと見つめる。
――キサがいつもより近い距離に来て寄り添ってくれたので、どうやらキサには気付かれているようだけどね……。
戦いに犠牲は付き物と分かっているつもりでも。
決定的な大勝利を収めた喜びよりも、親しい仲間を失った悲しみが先に立ってしまう。
多分俺は戦場に向いてないんだろうね……。
心がざわめく間にも時間は刻々と過ぎ。夕方には宰相軍の武装解除はほぼ完了して、復興軍はカーミラの隊と合流。再集結を果たした。
戦いの疲れもあるので、今日はここで休養とし。できるだけ豪華な食事をふるまう。
豪華と言っても戦場であり、強行軍の後なので物資も限られる。
遊牧民が集積しておいてくれた穀物と、戦いで死んだ馬の肉を使って温かい料理を作り、お腹いっぱい食べてもらうのがせめてもの御馳走だ。
そんなささやかな戦勝の宴を開き。休息をとった復興軍は、翌日から西への行軍を開始する。
目指すは宰相領の領都。
長きに渡る戦いが、いよいよ最終段階を迎えようとしている……。
帝国暦170年 3月27日
現時点での帝国に対する影響度……80.789%(+7.3) ※宰相軍壊滅
資産
・3145万ダルナ(-1億)
・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)
・エルフの傷薬×10
配下
シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)
メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)
メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)
エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)
ティアナ(エリスの協力者 月給なし)
クレア(部下・ジェルファ王国宰相)
オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)
元孤児の兵士達101人(部下・帝国復興軍部隊長95人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)※2人戦死
セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)
ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)
船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)
怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)
キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)
セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)
ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)
カーミラ(部下 蜂起軍選抜部隊長 元男爵家長女)
サラクス(臣下 帝国東部で最大勢力の辺境伯)




