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乞う路傍の雪以下なら夢と仰せ  作者: 杜若表六


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赤い戦士のぼうけん

 ファミコンが家にない私にとって、友人宅のそれは非常に魅力的なものだった。時たま、手に取ることがあると、恐ろしい魔力によって時間をごっそり飛ばされた。幼い日のことゆえ、我々が遊ぶのはアクションゲームが主だった。いや、そんな区別もなく、開始して5分で意味のわからないカセットは「ツマラナイ」という烙印を押され箱に戻された。コマンドを選び、アイテムを使う「難解な」シミュレーションゲームやRPGを気の短い我々が選ぶはずもなかった。


 ある時、面白そうなカセットを見つけた。「ドラゴンクエストⅣ」とある。そこには緑色の髪をした剣士が描かれていた。主役だろう。期待を胸に電源を入れた。我々の目の前に現れたのは、赤い甲冑を着込んだ剣士であった。その意味がよく理解できなかったが、操作法は直感的に理解できたので、友人と交替で遊んだ。碌な準備も回復もせずに魔物の群れに突っ込み、よく死んだ。死が交替のきまりだったので、ちょうど良かった。老剣士には気の毒なことをした。


 結局一章もクリアしないまま、データが消えたか行き詰ったかで私の初のドラクエ体験は終わった。それから長いこと、主人公はライアンだと思っていた。


 そんなドラクエとのはじめての出会いから、これまでにいくつかこのシリーズを遊んできたが、それにつけて思うのは、ドラクエがとても思い出に残る存在だということだ。それぞれの作品が持つ魅力は違うが、そのどれもが強烈な記憶となって心に残る。それは何気ない台詞であり、美しい情景(それがたとえ粗いドットだとしても!)であり、すぎやまこういち氏の紡ぐ、あの名曲の数々である。特に音楽……ゲーム音楽の枠に入りきらない、その格調高い芸術は、聴き返すたびに、遠い過去……訳も分からずスライムを素手で殴っていたあの頃、不気味な洋館での様々な怪奇に恐怖したあの時、物言わぬ勇者が初めて邪悪な魔王の前に立ったあの瞬間に、誘ってくれるのである。その時の感動は言葉にできない。


 それから、冒険の世界を彩り、盛り上げてくれるのは、数々の魅力的な敵役達である。思うに、彼ら――偉大な魔王や、配下の魔物達、はてはチンケな盗賊まで―は、ドラゴンクエストの特徴をもっとも顕著に表しているのではないか。本当に、救いようのない、根っからの悪人もいれば、一方的に悪とは言えぬ過去を持つ者もいる。そして、必ずや打ち倒さなくてはならぬ、宿命の敵も存在する。……一見明るいファンタジーに思えるドラクエだが、その背後に流れるテーマは、深く、重い。しかしそれは勇者の前に立ちふさがる「正統派敵役」達によって、無理なく我々の心に沁み込んできた。彼らには感謝しなければならない。もちろんその所業は別としてだ。

 ……こんなことを考えていると、また赤い剣士に会いたくなった。彼はきっと、まだ子供たちを探しているだろう。かわいらしい魔物と一緒に。微力ながら、その手助けをしてやれたら、と思う。

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