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乞う路傍の雪以下なら夢と仰せ  作者: 杜若表六


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ドグラ・マグラとムージル読んでの謎考察的対話

アンポンタン・ポカン「……むにゃむにゃ。いやしくも「可能性(潜在性)」についてアレコレ考えるなら、シッカリ「犯罪」「芸術」について考えなくてはならない。一つの見方でいうと、悪・犯罪は道徳・法律に対する批判であり、道徳・法律の網目からところてんのようにニュっと現れ出た可能性の形だ。では、真実な・クリティカルな犯罪、罪のない犯罪なんてものがあるのか。ひとつでも罪のない犯罪があるとすれば、それと諸々のおぞましい犯罪との違いはあるのか。」


正木「……ウーン……例えば、かの怪作家ム、ム、ムージル氏はある個所で、彼の同時代を「善を食い飽き、みなが悪に心を魅かれている時代」と形容している。そして悪を食い飽きたら、「道徳を胸のボタン穴に差すような」青年が現れるだろうと。ハハア、一種の悪ブーム・ファッション道徳だね。私見では、ソウイッタ道徳的関心の抑揚みたようなものは、古来よりズット繰り返されてきたんじゃなかろうか。とすると、私見では、そんじょそこらの犯罪だの悪だの善業だの善だのいったものは、あり得るだろう、という意味合いでの可能性であって、ここで話していると思われる、人間精神の歴史の奥底に秘めたる大潜在性、というニュアンスとはちょっと遠くなるんではないかな?」


アンポンタン・ポカン「……ホホウ……確かに。それでは、芸術についても同時に考えてみよう……。それこそ件の怪作家ム、ム、ムージル氏いわく、「芸術はつねに、生の創造とは一致しない絵空ごとの創造のことではないだろうか?」また、彼は、ホ、ホ、ホントウの芸術には、焦げた臭いがするともいっている。「神のように不気味な匂い」が。そして謎のような文句を残している。詩を書く時の高揚の火の匂いを、火が消えるまで嗅いでいるだけではだめだ。それは生半可な道徳批判と同類の態度だ。善も詩も、稀なものだ。と。」


正木「……フムフム、だからこう言いたいのだろう。つまり、絵空事としての生とは、可能性としての生だろう。テッテイ的にそれ自体焼き尽くされたホントウの芸術こそ、可能性としての生である。それと対になるように、つまり、それ自体生となったホントウの道徳批判こそ、可能性としての善である。だが、そのホ、ホ、ホントウの道徳批判とは絵空事のような善の理想とは違い、限りなく犯罪に近い善の行為である、とネ。ン、ナニ、違う、それではわからない、そうは思わない……? フムフム、よしよし、いいぞ、では君の意見を聞かせてもらおうかネ……。」


(などと脳内牢獄で自問自答、繰り返される諸行無常)

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