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乞う路傍の雪以下なら夢と仰せ  作者: 杜若表六


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小話いくつか

大聖堂の七対のガーゴイルには、一つだけ本物があるらしい。噂を聞いた物好きな男は夜中にこっそり忍び込み、石像を一つ一つたしかめて回った。翌日、こんな噂が生まれた。大聖堂には本当に化物がいるらしい、堂内を夜な夜なうろつき回っているそうな。別の物好きが夜中にそっと忍び込み、中をよく見て回った。そして次の日……噂は一晩ごとに変奏された。やがて二週間たって噂は絶えた。彼らはみな満足した。噂には嘘がつきもの。



私はいちめんの緑の上に寝転んだ。とつぜんの訪問者に驚く、小さな生き物のけなげな営みが聞こえてくる。頬をなでる風が心地いい――いつもはもっと冷たい風をあびているから。空を見上げる。こうしてみると、雲が様々な形をとるのがわかる。とがった山の形、太った鯨の形、どこかの島の形、そして懐かしい顔……すると突然、雲が恐ろしい形相をした怪獣の形に変わった。私は思わず右手で雲を薙ぎ払った。……ああ、びっくりした。



神は全知全能である。ホンネとタテマエもご存じだ。神はまず広大な宇宙を創り、一方で美しい天国があると被造物たちに教えた。また丸い大地を創り、一方で地上はどこまでも平たいと教えた。人間が知恵の実を食べ、最も賢くなった。彼らは大地は丸く、宇宙は広大だと子供たちに教えた。そして、地上は平たいという言葉の意味を忘れ、美しい天国は空想の産物であると考えている。「可笑しいな」神は微笑み呟く。「同じことなのだが」



ある生物兵器が、テロリストによって世界中にばらまかれた。人間を生ける屍に変えるウイルスだ。俺たちの街にもゾンビの群れが来た。全身からにおいを放ちながら、ゆっくり近づいてくる。次々と食べられていく。何しろ数が多い。増殖する感染者。と、物陰から一体が襲いかかってきた。俺は美味そうなにおいにたまらず、ゾンビの首筋にガブリと噛みついた。うまい。あっ、これでやつらの仲間入り!? 全身からにおいがたちのぼり……。

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