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乞う路傍の雪以下なら夢と仰せ  作者: 杜若表六


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笑劇のプラン

ぜひ皆の衆も実践してご笑覧されてください。

少なくとも、日本の喜劇小説は、その最高のものにおいても、どうしても、シリアスになってしまう。それは、とりもなおさず、同時代を意識して、目の前の狭い読者を笑わせようとしているからだ。

もし、目の前の読者を笑わせることが目的であれば、小説として文字に残す必要はスンゴウもない。それにふさわしい媒体は無数にあり、各界のコメディアンたちが、それをあらゆる観点からいって小説より高度に成し遂げている、もしくはそうしようとしている。

 書くこと自体の滑稽さをおびき寄せること。

 過去から、未来から見て、滑稽となるものを書くこと。

 時代意識として、メタであること。

 くだらないこと。

 白紙に糞をひるような。

 感心させないこと。

 読者を驚かせないこと。退屈させること。幻滅させること。

 冗長かつ超長大であること。『別れる理由』はこの点において達成した。

 衒学的であり、通俗的であり、下手に観念的であり、卑しく実際的であり、傲慢であること。動物園のゾウアザラシのように。

 読み始めて五分以内に読むのをやめさせること。

 自分で読んでも五分以内に読むのをやめるように書くこと。

 過去と未来についての低俗で稚拙なヴィジョンをふんだんにぶちこむこと。

 読者が知っていることと知りようのないことを入れること。

 いちばん楽しんで、いちばん語っているのが作者であること。

 笑わせよう、呆れさせようという意志のほかは、おしなべて狂っていること。

 脳内に積み上げた書物の山に火をつけて、蕩尽すること。

 あらゆる同時代的なものを、陰に陽に笑い飛ばすこと。

 あらゆる反時代的なものにかぶれて、笑われること。

 理性でも反理性でも、ムズカシイ語彙の仕様を間違えること。

 極限まで上げてどん底まで落とすこと。

 ついに完結しない、ついに書かれない、何も残らない、ひとつのひっどく生臭い祝祭であること。

 燃やし尽くすかにみえて、水をかけること。空気を読まないようにみえて、みっともないまでに妥協すること。

 ブンガクを書かないこと。私はブンガクを書かない、とかっこよく宣言しておいて、それにだらしなく固執すること。

 死んでも死にきれない、殺されても死なない無敵の存在であること。だがしょっちゅう即死するべし。

 絶頂に達したあとに、余計なくだりを挿入して、顰蹙と非難を食らうこと。

 読者に媚び、へつらい、おもねり、嫉妬し、結託し、同一化し、神聖化し、神話化し、もはやぐだぐだした内輪の雑談になること。だが破廉恥なほど公衆の面前に開陳されていること。

 金にとことんまでこだわること。ただし手はとにかく抜くこと。

 絶対に後悔させること。ただし作者は大満足でグースカ寝ていること。

 後半にいくほどくりかえしを多くして、グダらせ、とにかく引き延ばし、結論をださず、迂回し、ナメクジみたいにぬるぬる気持ち悪い感触の文章にすること。

 筋をとおさないこと。気分次第でテーマを変えること。

 何も新しいものを生み出さないこと。美しいもの、聡明なアイデア、魅力的な善や悪、ぜんぶ引用でなくてはならない。

 技術偏重を公言しておいて、イマイチな効果しか出さないこと。ただし本人は本気であるべし。

 人間賛歌でありつつ、非人間への賛歌でもありつつ、コインで裏が出たらちゃぶ台をひっくり返すこと。

 常に内心で舌を出していること。それがバレバレであるような稚拙な悪意を描くこと。

 理念を積極的に出すこと。次のページでは否定するか忘れること。

 漫画やテレビ文化、インターネット、とくにネットの掃きだめといわれてるような文化に従属すること。サブのサブのサブの、カルチャーですらないような遊びであること。

 攻撃的・反撃的であると同時にとても弱くチンケであること。

 社会人たると同時に社会の窓を開けていること。

 この箇条書きを脱線すること。

 この箇条書きを秘中の秘として冒頭に置くこと。

 権力・権威・大衆・強者・弱者・同類・その他を内心で嫌い、本心からそれらにおもねること。

 唯一神マルクス四兄弟・漫画太郎大明神をあがめよ。彼らはただ一つの宇宙の中心であり、二つとないこの世の原理である。

 茶番劇を書くのではなく、書くことの茶番を取り戻せ。引き起こせ。強制執行せよ!

 書いてやばそうなことを書くことなかれ。ただしその旨よくよく詳細に記入せよ。

 最初の一行と最後の一行は適当にそこらへんの本からパクっとけ。その間もパクれ。

 書くことなくなったらこの箇条書きを思い出せ。羅列せよ。それだけで少し文字数が稼げる。

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