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乞う路傍の雪以下なら夢と仰せ  作者: 杜若表六


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完全に何ら愉快はない。


佐藤正信くんは、テストを三日後にひかえ、必死に勉強をしていた。

勉強とは、とどのつまり、知識を頭につめこんで、その量をきそうゲームである。彼は暗記が得意であった。長い文章も、その気になればそっくりそのまま覚えることができてしまえた。

今もセッセと、単語カードをつくって、片っぱしからこなしている。内容ウンヌンでなく、記憶することが楽しい。母親が部屋にお茶とおかしを運んで来た。彼女は息子にきたいしている。デキがいいと思っているからだ。ゲキレイの言葉をのべて出ていった。

いつもどおりのジュンチョウな、時間が流れていくように思われたが、何かがいつもと違う。ある英単語を覚えようとするが、頭にそれが入ったしゅんかん、まったくわけのわからない言葉に変化してしまう。言葉というより、刺客聴覚嗅覚など混ざり合った「情報」である。別の単語も、そのまた別の単語もソウなる。次々と、脳の中に意味の不明な情報がラレツされゆく。これにはコマった。なぜなら、テストにて良い点数を取得すためには、きっちりとした明確なただ一つの言葉が必要であるから。だがしかしこの夢幻のごときものも何か重大な秘密があるのではないかとも思われたがやはり三日後というこの時点での不可解な事件には舌打ちをするしかなかったし、また、これを外部に表出する際には再びもとの言葉に戻るということもありうる、とにかく今はひたすら一心に勉学にはげもう、というので意志が固定された。



当日はうららかな能天気であった。みな静であった。このような場であれば心おきなく我が力が生み出されるというものだ、さて、やるか。

問題は単純であったこのような質問を考える教師の思考も知れたものだ、生徒もなめられているしそれだけの愚かさをもっているのも確か。ぐいグイ、進むペンの、紙の上を踊る、スケートのようにすべるその摩サツ音だけ聞こえる。まこと甘美な音楽うたよ!


教師は窓辺の前から三番目の佐藤のさまをちらと見てギョっとした。彼は、目をぐりんぐりんと動かしかし、口からは不明な言葉のだだもれて、鼻息荒く、テスト用紙は文字でうまり、あきたらず、机、イス、床とゾクゾク読めぬ文字、文字で満たされ!……

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