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第二章生きる理由

 始める前に一つ言っておかなければならないことがある。

それは、この世界と私たちが住んでいる世界には何のつながりもないということだ。

 それだけをあなた方の脳裏にはめ込んでおけばなんの問題もない。


 

 俺は不安だ。


 初の軍人としての仕事が、聞いたこともない部隊に所属され、しかもその部隊が少数精鋭部隊だというのだから。


 唯一の救いは訓練時代の同期で友人のイーちゃん(伊東 太一)がいてくれたことだ。


 そして招集された俺たちは電車に乗り、指定された基地へ進行形で向かっている。


「俺たちどうなるのかな?」


 イーちゃんが不安げに聞いてきた。


「さあね、どっか遠くに配属されんじゃない」


 正地には聞いてないのだが、不満げにそう答えた。


 正地は苗字だ。あと、正地との仲は深くない。


 そこまでしゃべってはいないし、性格が合うってわけじゃないから。


「まあ、少なくとも俺は死にたくないね(笑)」


 俺は少し冗談気に口ずさんだ。だがこれは本心だ。


「はは、俺もだよ。センダの言うとおりだ」


 イーちゃんの先田の言い方には癖がある。


 カタカナ表記にしていることの意味は伝わっただろうか?。


 とはいえ一応、まだ着くまでの時間はある。ゆっくりしよう。


 正地は気分が悪いといい、トイレに行った。多分、シンナーを吸い、微笑っているのだろう。


 ここ(この世界線)では麻薬も合法だ。戦争の影響により警察の人間は戦争に向かわされているからだ。


 今は法より戦争に力をいれているのだろう。


 俺は訓練時代、正地に一緒にシンナーを吸おうかと誘われたことがあるが断った。


 一回吸ったことがあるが、俺にはあまり向いていないを思ったからだ。


「センダはさ、人殺すの好き?」


 イーちゃんが唐突に聞いてきた。


「俺はあんまりかな」


 そう言わないと道徳的におかしい(戦争に道徳なんてないけど)。


「そりゃそうだよね」


 冗談紛れに話してきたが、我ながらシュールだと思っているのだろう。


 イーちゃんは電車がつくまで、薄い雑誌と俺との距離を開いていた。



 電車がつき、配属先の基地まで徒歩でいった。


 距離はあまり駅から離れていないしね


 夕暮れが近づいてくる。それと同時に愛を思い出した。


 家族はもういないのに。



「センダ、あれが俺らの配属先だよ」


 イーちゃんは緊張気味に言った。


 相変わらず正地はどんよりしている。


 僕たちは配属先の基地の門の前に立ち、チャイムを鳴らした。


 すると、基地の中から人が出てきた。


 名前は、仁木というらしい。


 仁木さんははこの基地の説明をしてくれた。


「ここは君たちがほかの部隊に呼ばれるまでの待合所みたいなものだ」


 俺は言った。


「どういうことですかほかの部隊に呼ばれるって」


「君たちの部隊は普通の部隊ではしないような難関の仕事をする部隊の手伝いだ

だから君たちだけでの単体行動はしない。」


 俺たちは大きく勘違いしていたようだ。


 それからほどなく説明も終わり、俺たちは宿舎に三週間いることになった。


「センダ、なんと仁木さんが言うにはこの部隊のトップは佐井木 中尉みたいだね」


 イーちゃんは自慢げに言った。


「そうだね、あの佐井木さんがいるなら安心かもね」


 俺は少しだけ安堵感を覚えた。聞いたこともない部隊に名の知れた軍人がいるんだから。


「それよりも正地のやつ遅いよな。またシンナー使ってんのかな?」


「そうかもね」


 すると、廊下から叫び声が聞こえた。女が驚いたんだろう。


「なんだ、誰かやらかしたのか?」


 やらかしたとは簡潔に言うと自殺のことだ。


 戦争にビビったやつがすることだ、だが大抵は未遂で終わってる。


「正地が倉庫でやらかした」


 仁木さんがあきれたように言った。


「正地がですか。で、どうです様子は?」


 イーちゃんが言った。


 別に俺らはこんなことぐらいで驚いたりはしない。


 こんなこと訓練時代に何回もあった。


 軍隊に入るつもりが気が変わり、もうやめたいだとか言ってね。


 訓練校では規律が厳しく相当な高熱を出さなきゃ休ましてくれないし、脱走なんかしたら正座のままで百回くらい殴られる。


 辞めるなんてことはできない。だって戦争に行く人間がだんだんと少なくなってるからな。


(そりゃあ、誰だって死にたくないさ)


 正地は一応何とか一命はとりとめたらしい。原因は、シンナーの大量摂取だそうだ。


 彼は二度とシンナーは吸うことはなくなった。


(上の人に止められたんだろう。人手がいなくなったら困るからな)



 そんなこんなで二週間後には正地の体調も良くなり、三週間後、ついに同部隊の佐井木中尉と三村准尉に正式にお会いすることになった。


「先田入ります」


「伊東入ります」


「正地入ります」


 俺たちはバカ大声であいさつをし(これが軍隊だ)、二人のいる部屋に入った。


「おう、君が先田君で隣が伊東君、そして正地君だね。


 俺は佐井木 文春だ。率直に言うが、君たちの隊長になった。よろしく」


 佐井木さんは恥ずかし気にしゃべった。


「俺は三村だ。佐井木さんの次の準隊長になった。よろしく」


 三村さんは前の配属先で優秀だったので、仁木さんからの推薦が入り、この部隊への入隊が決まったそうだ。


 俺らみたいな、数合わせとは全然違った。


「ではさっそくなんだが配属先を伝えておく。西諸島のフィリピンの坂下第十五機動隊だ。一応、軍人としての覚悟はできてるな」


 佐井木さんが聞いてきた。


 俺以外のこの二人は、軍人としては新米だけど死ぬ覚悟はできてる。そんなオーラを醸し出してる。


 だけど俺は違う。俺は生きて帰ろうと思ってる。戦争で死にたくはない。


 なぜなら俺は好い、好かれている女がいるからだ。


 女の名前は森田 春。お春だ。


 彼女とは同じ集落で生まれ育った。まあ、幼馴染とでもいおうか。



 学生時代(中学)、私は勉強があまりできなかった。


 その代わり運動は好きで成績もよかった。


 お春のお家は金持ちで、ちゃんと女学校に通っていた。


 昔からお互いに関わりを保ってきた面もあり、学校に通っていても毎週一回か二回くらいは顔を合わせていた。



「ねえ、先田君」


「お、おう久しぶりだね」


 お春と久しぶりに会った。なかなかの別嬪だ。


「先田君ってこれからどうするの?」


 いきなり問いを投げかけられた。答えるのが筋だろう。


「俺、実は軍に入ろうと思ってるんだよ」


 家庭環境は筋金入りの貧乏ってわけじゃないけど、高校に行く金なんて到底ない。


 お春は少し言動に後悔した顔を浮かべた。


「そうなんだ。じゃあもう会えないかもね」


「でも軍に入ってもまたここに帰ってくるから。安心してよ」


 どうなるかは知らない。でも人を心配させることはしたくない。そんな気持ちの現れだった。


「実はね先田君に来てほしいところがあるの。来てくれない?」


 俺に断る理由なんて一つもない。


「うん、もちろん」


 俺はお春に連れられ、校舎壁の曲がり角を通り、あの電信柱の裏にある路地へと進んだ。


 入り組んだ道筋をお春は難なく進んでいる。ここを何回も通っているのであろう。


 数十分かけようやくたどり着いた野原の先には小さくても水が透き通るようにきれいで、魚もすいすいと流れに乗って泳いでいる。本当に絵にかいたような河原だ。


「よくこんなきれいな川見つけたね。」


 最近では戦争になどに使う道具などを工場で作り、その廃棄物などを海に流し、廃棄物が水の流れによって川へ運ばれ、どんどんと綺麗さを失っている。こんな川は久しぶりだ。


「本当にきれいだよね」


「そうだね」


 お春は何かいいたげだった。


「どうしたの何か言いたいことでもあるの?」


 俺はお春に問いかけた。


「実は私ね、先田君のこと好きなの」


 俺は驚いた。俺みたいなやつのことが好きなのかと。


 別に顔は良いか悪いかだったら悪いに分類されるし、おまけに貧乏気味だ。


「俺みたいなやつが好きなの」


「うん。先田君が好き。先田君と一緒にいたい」


 しばらくの間、俺は沈黙した。


「本当に俺でいいの?だって俺、軍隊入るし」


 そんなことを言ってあきらめてもらおうとは思ってはいないに決まってる。


 俺みたいなのにかまってくれる女は彼女しかいない。


「そうだよ。先田君は私のことをど、どう思ってるのかな」


 すこしためらった様子で聞いてきたが、もう俺の答えは見つかっている。


「春のことが好き」


 お春の「お」の部分を抜いた。どうだろうか、ほんのちょっとだけ恋愛に見えただろうか。


 金銭的なことや将来のことを省けばもっと形になっていただろうがこれが俺の世界なんだ。しょうがない。


 俺たちは唇を重ねたりなんてする度胸もない。米国の人はそれを日常茶飯事にやっているということを友達は見回りに来てた米国軍人から聞き(なんてことを教えるのだろう)、俺に伝えてくれた。


 だから俺たちは恥ずかし気にお互いを抱きしめあった。



 好きの気持ちが心の芯まで燃え盛るまで。



 そして俺は無事、軍事訓練を済まし晴れて軍人となったのだ。


 軍人の給与は高い。それだけ命が消えうる可能性も高い。


 でも俺は家族のため、お春のために生きて帰える。



 そう俺は心に決めている。


 どうでしたでしょうか。楽しんでいただけたでしょうか。

また、次話も投稿しますので今後ともよろしくお願いいたします。


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