第一章 幕開け ~部隊編成~
始める前に一つ言っておかなければならないことがある。
それは、この世界と私たちが住んでいる世界には
何のつながりもないということだ。
それだけをあなた方の脳裏にはめ込んでおけばなんの問題もない。
第一章 幕開け ~部隊編成~
今から一年前(1923年3月19日)、
最初で最大の攻撃が明華からこの世界線での山陰地方と呼ばれる付近に向けられた。
その日は大雨で視界も悪く、こんな日に攻撃しに来ることもないだろうということで
付近での防衛は完全に油断していた。
そして、明華軍約7万人の軍勢が海岸付近に上陸し防衛支部に一斉に銃弾が浴びせられた。
そのことにやっと気づいた防衛本部は約8万5千人の軍人たちが急遽招集されることになったのだ。
しかし時すでに遅し、三つ目の防衛支部は陥落しかかっている状態だったが、
それでもなんとか、日本軍は防衛に全力を注ぎ、死守した。
その結果がこれだ。とても悲惨だろう。
日本軍側の死者数 約8分の6
明華軍側の死者数 約8分の7
合計死者数 14万人
日本軍は何とか侵略を防いだ。守り切ったのだ。
だが、これだけではこの話は終わると思うかい?そんなはずはない。
戦いがきっかけとなり今まで平和に同盟を強調していた国がその約束を破り、次々と
各地で争いが発生したのだ。
どの国でも戦いに向けて軍隊を増設し、新しく仲がいい国だけで同盟を組み、
敵なる国を破壊しようともくろむようになった。
当然、日本も次なる戦争(明華への攻撃)に向けて準備が行われていた。
そこで日本は新しく、特化型少数戦闘部隊(N_E部隊)がつくられることになった。
この部隊をつくれば普通の軍隊では難しい作業の数合わせができると考えたのだ。
そして一年後、日本では新しく増設する精鋭部隊を彼らに作らせることにした。
「仁木大尉、ちょっとお話があるんですけど」
やや緊張した笑顔で並木伍長は声をかけた。
「君かね、今はちょっと手が離せないんだ。すまないけど、あっちに行っててくれないかね」
面倒なおもむきで仁木はまた、机にある手紙にふたたび目を通した。
「大尉、今はこんな資料よりこっちを見てください」
「なんだ、そんなに大事なことなのか?」
話しかけてもまともに聞いてくれない。仁木に並木はうっとうしさを覚えた。
「そうなんです。実は軍部から連絡が届いてまして何やらまた新しく
部隊をつくるそうなんです。」
仁木は答えた。
「ああ、そりゃそうだろう。いまどき、こんなご時世で軍を拡張しない国があるかね?」
「でも、今回の部隊はまた何か、名前かな?よくわからないんですけど、並みの部隊とは
全然違うらしいんです。」
「名前?どれ、何が違うんだ?」
そういい、仁木は並木から資料をひっぱたくようにうばいとった。
「N_E_部隊?なんだこりゃ、また大胆な部隊をつくるこった...」
「じゃあ、僕はこれで」
並木はそういい、元の部署に帰っていった。
これで一息つけるという思いが顔からにじみ出ているので当然、仁木もあきれている。
「あいつは親が国のお偉いだからな、軍事の知識がまるでないな。
こういうやつが日本を背負っていくんだろうな(笑)」
「それにしても、またやることが増えた。
とにかくこの資料の部隊の人員確保、まずはこれだな」
仁木はこの資料に書いている部隊に適している人材を招集することにした。
神奈川県 横浜
「なんだ、仁木先生じゃないですか。お久しぶりですね」
彼の名は、佐井木 文春。あの「山ヶ岳防衛作戦」で生き残ったわずかなベテラン隊員であり、私の元教え子だ。
今では、軍の中でもトップエリートの存在になっている。
「いやぁ、久しぶりだね、佐井木君。実は君に頼みたいことがあってね」
「何ですか頼みたいことって?」
佐井木は少し驚いているようだ。
それもそのはず、私は彼に頼みごとをしたことが今までないからだろう。
「君に向いてると思う仕事があるんだよ。」
と仁木は少し強引に、この部隊の資料を渡した。
「何ですかこれ。特化型少数戦闘部隊?初めて聞いた名前ですね。」
「何やら日本が新しく作る部隊みたいでな。率直なんだが、それに所属してほしいんだ。」
佐井木はえっというまでもなく私の顔を二度見した。
彼はあの山ヶ岳防衛作戦で部下を何人もなくし心に傷を負い、その影響もあり、今は部下の指導に当たっている。
「少し、考えさしてください」
「もちろんだ。よく考えるといい」
そう早く結論が出るわけもなく、私は東京に戻った。
二週間後、佐井木から電報が届いた。
「ヨウケン リョウカイ スグムカウ」
私はよかったの一言で顔をまとめた。佐井木だけでも大きな戦力になる。
それにしても、また部隊に配属されることを佐井木は了解したということは、過去から完全に立ち直ったということなのかもしれないなと、我ながら思うのであった。
鳥取県 大山町
「バン、バン。日本は強いんだぞ。すぐに明華なんか蹴散らしてやる」
子供たちは山で拾った木を銃の代わりにして、戦争ごっこをしているようだ。
「戦争は子供にも与えられるのか」
私はそういい、ある青年との約束の場所に向かった。
「こんにちは。あなたが仁木大尉ですか」
彼の名は、三村 弘幸。この町の防衛施設に所属している隊員で、成績は訓練時代からトップを貫いている。
「そうだ。私が仁木だ。それで君がこの町で成績トップの三村君かね」
私はトップを強調していった。
要求を了承させるには、まずほめることが一番だからだ。
「そうです。係長から話は聞きました。その部隊に入ればいいんですよね」
「うむ。君はこの部隊に必要だからね」
案外、話はすぐにまとまった。
言葉を強調しなくてもよかった。
三村がいうには兄をあの山ヶ岳防衛作戦でなくしており、その仇をとるために軍隊に入ったらしいのだ。
さいわい、これはあの戦いを報復するために組まれた部隊なので、彼の暗黙の条件にはピッタリなんだろう。
彼は、急いで準備を済ませ、この部隊に早々と配属された。
東京 日本軍事隊員養成所
私はまた東京に戻り、部隊の人員を確保するために今度は隊員を育成する日本軍事隊員養成所に車で向かった。
そこで卒業した軍人を紹介してもらうのだ。
「仁木君かね。久しぶりだ」
窓からあふれ出る夕日がまぶしい。
彼は、ここを管理する最高責任者の前田元大佐だ。
元だといっても私より階級が高かった軍人に逆らうことはタブーだ。
罵られてもそんなことはしない、いやできない。
「はい、いつも何かとお世話になっております」
「それで用件はなんだい」
「実は、新しく国から部隊を編成しろとのご命令を預かりまして
ここのもうすぐ卒業する軍人を何人か紹介してもらえないでしょうか?」
丁寧な敬語はこの歳でやっと、なつかしく感じられる。
「うむ、まだ実践経験が浅い隊員を部隊に編成か、
まあでも優秀なんが数人おる。どうじゃ」
憎たらしいしゃべり口調だと罵りたいな。
そんなことを思いながらも、正反対なことをいう。これが軍隊だ。
「もちろん大丈夫です。」
「わかった。ではさっそく紹介する」
そういい、前田は年や年齢、成績などを事細かく書いた資料を私に手渡した。
「えっと、これだ。まず一人目は彼だ。」
「先田 智之 二十一歳。運動神経にたけており実技の試験でも成績は甲(ほぼ満点に近い)。」
彼ながら一応、しっかりと探したのだろう。
これで彼らの未来が変わるかもしれないんだから。
「ほかには…これだ。」
「正地 一秀 二十五歳。成績はどの科目も甲か乙であり優秀。」
「伊東 太一 二十一歳。もともと父が医療従事者であり、薬などに詳しく、知識が豊富。
主に支援を担当することに向いていると思う」
前田は、ほかにもいろいろな隊員を紹介してくれたが最終的にこの三名に決定した。
少数部隊なので人数はあまり増やせない。
だが、みんな、少しうつろな目をしている。生きて帰る。そんなことを夜中に目を開け、考えていたのだろう。
「これだけの人材があるとは。ありがとうございます。」
「ではさっそく配属先を伝えてきます」
そういい彼はせわしなく部屋を出て行った。
あの歳であの動きはなかなかできる代物ではない。
人員はそろった。
佐井木 文春 階級 中尉。
三村 弘幸 階級 准尉。
先田 智之 階級 一等兵。
正地 一秀 階級 上等兵。
伊東 太一 階級 一等兵。
さっきも少々口ずさんだのだが、なぜこんなにも兵数が少ないかって?
この部隊は一部隊として活動するのではなく、ある意味ほかの部隊の人数合わせというか
支援部隊だからだと思ってもらえばそれでいい。
では私の役割は終わりとしよう。この編成に文句は皆無だ。きっと部隊の力になる。
どうでしたでしょうか。
この話はぜひとも最後まで読んでいってもらいたいものです。
これからもよろしくお願いします。




