第三章 死ぬか死にかけで生きるか
始める前に一つ言っておかなければならないことがある。
それは、この世界と私たちが住んでいる世界には何のつながりもないということだ。
それだけをあなた方の脳裏にはめ込んでおけばなんの問題もない。
本当の戦場は全然迫力が違った。
俺らは船に乗り、西諸島のフィリピンの坂下第十五機動隊に配属された。
戦地ではどこかしら様々に銃弾が飛び交わしており、一日でも僕たちの配属された部隊の人間の誰かが負傷、死亡が多発している。
そんな中でも、俺たちは生きていた。あの時までは。
「ドン、パン、パン」
銃声がどこでも鳴り響き、たまに銃弾に当たった兵士が失神したり、叫び声をあげたりして、まさに地獄だ。
「センダ、弾がなくなった。早くくれ」
イーちゃんがそう口走った。この場所では礼儀も何もない。ただ、死ぬか死にかけで生きるかだけだ。
俺は急いでイーちゃんに弾を渡した。
ありがとうの一言もなく、戦いに戻り、俺は必死に銃を構え、撃った。
早く、帰りたい。家族に、お春に会いたい。
俺には本当の家族はいない。
だが、義理の母と義理の弟がいる。父は俺が九歳の時に死んだ。
母の方は俺が三歳の時に死んだらしい。
義理の母はまあ義理にしてはちゃんと面倒を見てくれたが女一人での稼ぎはしれている。
俺たちは(弟も含め)食べる金がない時は雑草なんかも食べたよ。
義理の母は女体屋をやっている。この世界線での風俗だ。そこで男の欲を母の体で解消させ、金をもらう。生きていくためには体も売らないといけない。
弟には惣菜屋をやっていると伝えている。
弟は背中に大きな傷がある。前の父は仕事が戦争でうまくいかず、酒、暴言、家での暴力に走るようになっていた。
そして弟はそんな父が恥ずかしく思い、こんなことやめてくれと訴えた。
だがそんな父は激怒し、弟に包丁で背中を上から縦へスパンと切り傷をいれた。
何とか傷は浅くですんだのだが、弟には一生モノの傷が入った。
そうして、当然のごとくその父とは離縁になり、俺の父、宏之はそんな母をかわいそうに思い、籍を入れたのだ。
「パン」
俺の横で銃の引き金が止まった。イーちゃんが撃たれたのだ。
「おい、大丈夫か。は、はやく伊東を看護婦に渡せ」
伊東を担架に乗せ、俺は運んだ。負傷した足から血をとぼとぼと落としながら。
「あああがっ、いっ痛い、痛い。助けてくれ先田、先田っ、やめてくれ、やめろ、やめろ、やめろ」
医者はイーちゃんの足を切った。血は吹き出し俺の顔まで飛んだ。イーちゃんは純潔な目を開け、涙を垂らしながら気絶している。イーちゃんの関節から先の足は台に置かれ、後でわかったことだが近くの林の中にぽいっと捨てられたそうだ。
しょうがないんだ。イーちゃん許してくれ。
彼の足はもうダメだった。敵の弾が運悪く足の血流部分に深く刺さり、切断しないと血が廻らなくなる。
そうして、イーちゃんは負傷兵を置いておく土壁の部屋に移動させられた。そこでの生活は、誰でも何となく想像はついていると思います。
看護婦さんたちが何十人もいる寝たきりの兵士の排泄をとったり、末期の負傷兵のウジ虫を取ったり、もうダメな場合は青酸カリを渡し自決、戦局が悪化し退避しなければならない場合は手榴弾を渡し、一斉に死んでもらいます。
ここは運が悪かった死にかけの軍人の最後の砦なのだ。
俺はイーちゃんを看護婦さんに任せ、再び戦地に向かった。
戦局はなにも変わらなかった。銃声が鳴り響き、我々も相手も互いに追い詰められている。
俺は名も知らぬ戦友に銃と弾をもらい再び相手の頭を狙い生きるか死ぬかの射撃ゲームを始めた。
「かあちゃん、かあちゃん」
僕の名前は太郎。にいちゃんの弟になったからおかしいよね。
「何?おかあちゃん今から仕事行くの」
「お惣菜屋いくの?」
「そうよ。おかあちゃんお惣菜屋行くからいいこにしてなさい」
かあちゃんは噓をついてる。だってお総菜屋の道なんて通ってなかった。一回だけなんだけど隠れてついて行ってみたら橋をとおってて、あおたにっていう女の人がいっぱい居る店に入って行ってた。
「かあちゃん、にいちゃんいつ帰ってくるの?」
「いつかよ、いつか。お国のために戦ってるからしょうがないじゃない」
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい。かあちゃん」
「ドン、ドン」
扉をたたく音がしてる。行かなくちゃ。
「はあい」
外にはおおきな男の人がいた。
「どちらさまですか?」
この言葉、かあちゃんから教えてもらったんだ。
「俺の名前は満田だよ。君の母ちゃんの知り合いだよ」
この人はかあちゃんの知り合いみたいだ。
「でなんできたの?」
「実はね君の母ちゃんが倒れたんだ。だから一緒にきてくれないかな?」
かあちゃん大丈夫かな?
そうか、かあちゃんを助けに行かなくちゃ。
「うん、わかった」
「えらいぞ。じゃあ俺の車に乗ってくれ」
「うん」
僕は車に乗った。母ちゃんの知り合いは車のエンジンを入れて、動かしたんだけど、眠くなって寝っちゃった。
目を覚ましたら窓の外でかあちゃんの知り合いの人ともうひとりの知らない男の人がしゃべってた。お金をもらったりしていた。あのお金かあちゃんにあげるのかな?
「小僧」
反対から声がした。すると僕は口を布で隠された。
「なにするのっ、ねえ、ねえ」
僕は息が苦しくなりそのまま、また寝っちゃった。
僕はわかった。
あの人たちに誘拐されたんだ。
それから僕はとある手術室に連れてかれた。
そして、おなかの中を開いて、僕の中にあるもの全部、もっていっちゃたんだ。
それで今僕はするすると空に昇ってる。いい景色だね。きれいだ。
あと、にいちゃんには感謝だ。だって日本を守ってるんだから。
どうでしたでしょうか。
この話はまだ続きますので今後ともよろしくお願いします!




