protocol 17:闘技場の勝者
闘技場の司会者「ここまで連勝してきたチーム・陽炎! ついに、ラストバトルだ!」
会場に歓声が沸き起こる。
「まさか、これほどとは」「あいつらが勝つって、俺はわかってた」「もう、マナがねぇよ」
様々な声が飛び交う。
闘技場の司会者「彼らを待ち受ける最後の敵は――」
入り口の金属の柵が上がり、暗い通路から黒い法衣を纏った骸骨が現れる。
闘技場の司会者「デスメイジだ! これまで誰も倒すことができなかった強敵に、彼らはどう立ち向かうのか!?」
リディア「おいおい、誰も勝てないって、そりゃ勝たせる気がないだろ」
ディック「あいつもイビルマナレベル2ですね。ダークオーブ――高密度のイビルマナの塊を撃ってきます」
レイン「当たるとまずいな」
ディック「ええ。体内のイビルマナ濃度が上がって、魔物化します。気を付けてください」
メリー「魔法障壁を展開します」
メリーが詠唱すると、青白く光る正六角形の魔法障壁が現れる。
デスメイジは骸骨の手を前に突き出し、漆黒の球体を何発も打ち出してきた。それは魔法障壁に防がれるが、徐々に障壁へ綻びが広がっていく。
ディックが懐から煙幕を取り出して投げると、爆発音とともに周囲に煙が立ち込めた。デスメイジは四人を探すが、姿は見えない。
ディック「兄貴、十時の方向です」
片目にわずかに青く輝くレンズをつけて、ディックが告げる。
レイン「了解」
ズドン。デスメイジの左肩が砕ける。
ディック「メリーさん、六時の方向です」
メリー「アイアンロック」
光沢のある塊が右肩を打ち砕く。
ディック「姉さん、三時の――」
言いかけたその時、目の前の煙の中からデスメイジの頭蓋骨が不意に現れる。
ディック「ッ……!」
デスメイジが口を開き、黒い塊が射出されようとしていた。
そのとき、青く光る剣が頭蓋骨を貫き、砕け散らせる。
リディア「命拾いしたな、ディック」
リディアがニコニコと笑う。
ディック「リディアの姉さん、ありがとうございます」
煙幕の煙が晴れていく。
闘技場の司会者「勝者、チーム陽炎! 初の優勝者です!」
うおおおお、と会場に歓声が沸き起こる。
闘技場の司会者「優勝者には景品として、本闘技場特製の高濃度マナポーションが贈られます!」
レイン「みんな、よく頑張った。お疲れ」
メリー「これで、偽造マナポーションが手に入りますね」
ディック「はあ、死ぬかと思いましたよ」
リディア「こんなの朝飯前だろ」
闘技場の職員「お前ら、付いてこい。景品を渡す」
四人は闘技場の廊下へと案内される。長い廊下を進むと部屋があり、数人の闘技場の職員が木製の小さな箱から、青く発光する液の入ったガラスの小瓶をいくつも取り出していた。
闘技場の職員「これが景品だ。持っていけ」
四人は小瓶を受け取る。
レイン「ありがたく頂くよ」
四人は地上への階段を上がり、地下闘技場を後にする。
それを眺めていた、黒いフードを被った人物が一人いた。
石の階段を上りながら、
ディック「兄貴、ついにやりましたね」
レイン「まだ油断はするな。戻るまでは気を抜くなよ」
ディック「兄貴は心配性だな」
リディア「そういうところだぞ、ディック」
ディック「姉さんまで……メリーさんも何か言ってやってくださいよ」
メリー「帰るまでが任務ですよ」
ディック「はあ、そうですね」
四人はギルド:深淵の眼を出て、外へ向かう。
街は静まり返っていた。人通りが無いわけではない。通りには多くの人がいた。しかし、その誰もがただぼんやりと突っ立ったまま、身動き一つしていなかった。
メリー「どうなっているの?」
地面には、いくつものガラスの小瓶が落ちていた。中には青く光る液がわずかに残っている。レインはそれを拾い上げる。
レイン「マナポーションの小瓶……? まさか」
目の前に、黒いフードを被った者が立っていた。顔はよく見えない。その者が手を前に出し、四人を指し示す。
街中の人々が、一斉に四人へと視線を移す。目は白濁し、口からは青く光る唾液が垂れていたが、それは瞬く間に赤黒く変色していった。
リディア「どうやら、まだあたしらを休ませちゃくれないみたいだな」
ディック「勘弁してくださいよ」
レイン「メリー、マナの残りは」
メリー「雷魔法、三回分はあります」
レイン「対処しきれないな。なるべく戦わず、撤退だ」
街中の人間が狂暴化し、四人目掛けて一斉に突っ込んできた。




