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魔法侵蝕譚ーマナ・サピエンス  作者: A.N.C.


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13/21

protocol 11 : ギルド緊急依頼 ーダンジョン”捕食森林”の調査・鎮圧ー

ギルド「英雄の集い」。

依頼書が掲示板に貼り出されたのは、夜明け前だった。


朝になってギルドに集まった冒険者たちは、それを見た瞬間に足を止めた。

一人が読み始め、次の一人が後ろから覗き込み、

気づけば掲示板の前に人だかりができていた。


*******************************

緊急依頼:ダンジョン発生

依頼人:ギルド「英雄の集い」およびギレーネ・ブロンズ侯爵

報酬:二千万マナ

場所:アイアンレッド魔導演習隔離区域

ダンジョン名:「捕食森林」

依頼内容:ダンジョン「捕食森林」の調査・鎮圧


ギルド初期調査結果:

 該当エリアにて、樹木等の植物および動物の

急激な魔物化現象が確認された。

バートランド聖王国が制定した規定値以上の魔物化が

確認されたため、ダンジョンに認定。

ギルド職員による周辺エリアの調査により、

魔物化した植物が多数の蔦状の触手を用いて

動物および動物型魔物の捕食を行うことが確認された。

 なお、ダンジョン発生時特有の現象である、

魔法不発現象が確認されている。

魔法の再使用が可能になるまでには、他のダンジョン同様

ある程度の時間を要すると推測される。

探索時には非魔法装備の持ち込みが必須。

*******************************


人だかりの中から、声が上がり始めた。


「アイアンレッド魔導演習隔離区域って、あのブロンズ家の土地だろ?」

「魔導演習用の土地と聞いているが、実際何が行われているか、何の情報もねえ」

「危険な魔法実験でもしてたんじゃないの?」

「あんまり滅多なことは言わないほうがいいぜ」


別の冒険者が声を潜めた。

「貴族様に目をつけられたらどうなるか分からん」

「ああ、嗅ぎ回っていた情報屋のトムのやつも、先月から行方不明になったとか」

「にしても、報酬二千万マナか。しばらく働かなくてもいいな」

「その分、危険ってことだろ。

なにしろ、ダンジョン発生時特有の魔法が使用できない領域に

なっているみたいだしな。魔導士が役に立たないとなれば、

死者が出るのは時間の問題だ」


ざわめきは続いたが、依頼書に手を伸ばす者はいなかった。

二千万マナという数字が、危険の大きさを正直に物語っていた。

報酬が大きいほど、死に近い。

それはこの街の冒険者たちが、体で知っていることだった。


----------------------------------------------------------------------------

アイアンレッド魔導演習隔離区域 外縁。


区域の境界線に近づくにつれ、空気が変わった。

湿気が増し、草の匂いに何か別の臭気が混じり始める。

腐敗ではない。もっと生臭い、生き物の体液に近い匂いだ。


境界を越えた瞬間、それは目に見えた。

森林の縁が、変容していた。


木々の幹に黒紫色のカビ状のものが這い、

幹から幹へと伝播しながら広がっている。

侵食された木は脈動するように表面が波打ち、

枝が不自然な方向へ曲がっていた。

地面からは無数の細い触手が伸び、

風もないのにゆらゆらと揺れている。


いつ獲物が来てもいいように。



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