第四話『神楽、お前もあっち系か』(三)
(三)
「神楽。はよ、帰りや」
まりかが退室した後、神楽が忙しそうに動いているのを見ながら、俺は神楽に言った。
「あ、そうです。大野晴子への聴取が始まりました」
そやないねん。せっかく思い付いたストーリーを忘れてしまうやんけ……。
「私より、まりかさんといる方がいいですか?」
いきなりド直球な質問がきて、俺は固まってしまった。
べ……別にやましいことは何もない。
「あほか。仕事の話をしよか……」
「わかりました。一回目の聴取は、昨日の午後一時から大野晴子の病室で行われたようです。ただ、あくまでも任意の事情聴取だそうです」
「誰が聴取したんや?」
「こちらからは、久世さんと佐藤さんが担当しました」
落としの久世……。
オアシスで、俺から煙草をパクっていったおっさん。
俺の手が怒りで震えた。
「久世さんの報告では……。病室の大野晴子は、流産したことや室田康太に裏切られたことなどが重なって、かなり精神的に落ち込んでいる様子だと」
「まあ、それはそう……やろな」
「ここからは久世さんの報告書を読みます」
――
私は、三月三十一日の夜、室田康太を背割堤に呼び出しました。
その際、私は室田に、
「結婚してくれないなら、今までのこと全て話すから」
と言いました。
すると、室田は、
「……は?」
と言いました。
「こんな時間に呼び出しといて、何を言い出すかと思えばこれや。妊娠した、責任取れ、結婚してほしい? 何で俺がお前なんかと結婚せなあかんねん」
私は心の中で、何かが崩れていく感じがして、顔が強張るのを感じました。
「そこまで言わなわからんか」
室田康太は、私の肩を押して突き飛ばすと、吐き捨てるように言いました。
私は、この男に何を期待していたのだろうと思い、怒りがこみ上げてきました。
そこで、室田に、
「ねぇ、この場所、覚えてる?」
と、聞きました。
室田は返事もせず、ただ私を睨んでいました。私は続けて「私、知ってるよ。この場所で、あんた達がやったこと」と言いました。
すると、室田は「何の事や? 俺達がやった事って言われてもなぁ。沢山ありすぎて分からんわ」と言いました。
私は「忘れたの。本当にクズだね」
と、言い返しました。
室田康太は、私の『クズ』の一言に切れたみたいでした。
「まあ、本当の事だからしゃあないか。それに昔の話やろ。いちいち蒸し返すな」
開き直って私に、そう言いました。
――
いつもの事やけど、事件の当事者から聞く話は、しんどいなぁと思って聞いていた。




