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隠し扉の真実  作者: 北島 将


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第四話『神楽、お前もあっち系か (一)

(一)


「とりあえずこの小説と、SDカードを課長たちに渡しに行ってきます」


 そう言って席を立った神楽を目で見送って、俺はもう一度頭の中を整理した。この辺がスキンヘッド安田や五十八みたいな脳筋とは違う。


 まず、織田まりかや……。


 柴田修一の病室に泊まり込みで付き添っているぐらいやから、かなり親密な関係やと言える。そんなまりかが、一連の事件を知らないのは不自然にも思えた。


 いや、むしろ積極的に関わっていたと考えた方がしっくりくる。


『元々私は、ああいったパソコンなどは苦手でしてね、企画から編集まで、あの子が全てやってくれています』


 修一の事務所で会ったときに、彼はそう言っていた。何の気なしに「SDカード」をまりかに渡して、中身を確認して貰ったとしたら……。


 ゆかりの事件が動画で残っていた。もし織田祐輔の動画もあったと仮定して、それをまりかが見たとしたら、あいつら四人への復讐に協力してもおかしくはない。


 石清水八幡宮前の防犯カメラには、山根あかりが誰かと『電話で話しながら』歩いている姿が記録されていた。


 四月三十日の午後十一時頃や。押収したあかりのスマホに残っていた、室田康太と大迫真司への発信時刻よりも前やった。


 もし、その電話の相手が、あかりを呼び出した人物やったとしたら……。


 修一や合田雄二のような男からの呼び出しなら、さすがのあかりも警戒して、あんな時間に家を出るのをためらうんやないか。


 相手が女やったから、油断したんかもしれん。


 だとすると、電話の相手は……まりかやった可能性もある。


 そして、修一が書いた小説の中には、山根あかりをどうやって呼び出したのかは書いていなかった。


 もう一人、俺が気になるのは、修一の幼馴染みの男――内田権蔵や。


 毎年欠かさず、福井まで一緒に釣りに行くほどの仲の権蔵が、ゆかりのことを知らないという方がおかしい。


 余命三ヶ月の修一の復讐に、陰で協力している可能性は否めない。権蔵にとっても修一は、ただ一人の家族みたいなもんやろ。高井正弘と会った時、彼を見張っていた男の目は鋭かった。そして、警察より早く高井正弘を見つけて拉致し、福井まで連れてきた者がいたとしたら……。


 所詮、俺の中での推測や。


 けど修一は、七歳ぐらいから児童養護施設で育っている。のちの広域暴力団大川組若頭で内権組組長・内田権蔵とは、この児童養護施設で知り合っている。修一は十二歳の時、権蔵と二人で少年鑑別所に収監されたと書いてあった事を思い出した。考えてみれば、内田権蔵と修一は、お互い自分の親より長い付き合いということや。


 コンコンとノックがして、「失礼します」と、織田まりかが入ってきた。


「所長の意識が戻りました」


 まりかの表情は、嬉しい反面、複雑な思いも混じっていた。


「彼と話せますか?」

「いえ、まだそこまでは……難しいと思います」


 ベッドの側の椅子に腰掛けて、まりかは言い淀んだ。


「この小説には、SDカードの事が書かれてありました。あなたもカードの中身……いや祐輔君の記録が残っていて、それを見たんじゃないかと、俺は思っています」


 俺は、単刀直入にこの小説を読んだ疑問を、まりかにぶつけた。


 その問いにまりかは、目を伏せて何も言わなかった。


「四月三十日の午後十一時ごろ、石清水八幡宮前の防犯カメラに、誰かと通話をしながら背割堤へ向かう山根あかりが映っていました。小説には、この部分が抜けています」


「……あの女は……暴行を受けている祐輔を見て笑っていました」


 まりかの呟くように話す声に、俺は合田雄二の聴取が頭に浮かんだ。


『気を失う直前に、あかりの声が聞こえて……』


『スマホで撮影しながら、大きい声で笑ってました』



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