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隠し扉の真実  作者: 北島 将


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第五章『隠し扉の真実』第三話 家族って何や(五)

五)


 ――


「はぁ? なんで俺がお前を助けるんだ」


 高野正弘は、泣いているひかりの髪を掴んで、顔に唾を吐きつけた。


「そんな……」


 ひかりの顔が絶望に変わるのが、画面越しにも分かった。


「おい、見ろよ。こいつ感じてるで」


「おい、もう十分楽しんだだろ、さっさと終わらせろ」


 高野……こいつは……。何を終わらせようとしている?


「分かったで」


 室井康太が、笑いながらひかりの首を絞めだした。


「あんたみたいなビッチが正弘と結婚なんてできるわけないやん」


 女の甲高い笑い声が頭に残った。


「やめろぉ!やめてくれ」


 俺は思わず、画面に向かって叫んだ。


「せめて、命だけは助けてやってくれ……頼む!……頼むから……」


 何度も、何度も、俺は声が届かない画面に叫んだ。同時に、こんなものを持ってきた百合を、弁護士や探偵などという仕事をしている己を憎んだ。


 知らなければ……という思いもある。そうすれば事件に巻き込まれた悲劇の父親でいられた。けどひかりの事件の真相を、ずっと一人で追ってきていた俺の前に、隠されていた扉がついに開いた。……けど、結果は……真実は、俺にとって極めて残酷だった。


 娘が殺されるところを見て、動じない親はいるだろうか?


 動画を閉じた俺は、手が震えが止まらず、しばらく何もできなかった。


――


 自分の娘が酷い目に遭ってるところを見せられた柴田修一の心を思うと、俺は吐きそうになった。


 ただ時系列に違和感があった。


 この第三章までに、山根あかりと室田康太の二人を、すでに殺していることになるからや。


 第一章で『どうだ、笑ってみろ。あの時のお前のように』

 と、「俺」は女に言う。


 第二章で、『ねえ、この場所覚えてる?』


 女が言った言葉に《忘れるわけはない》と、「俺」が思ったわけや。


《両方ともこの動画を見ての言葉なんやないか》


 この第三章の出来事が最初で、第二章が二番。第一章が三番と考えた方が矛盾がない。


――


 ひかりが殺された動画を見て、三日ほど過ぎていた。


「迫田真司が急に家に帰ってきて、何やら駐車場に運び込んでいった」

 という百合からの連絡が入った。


「急いで来てください」


《この女……。俺にあんなもの見せておいて、よくもぬけぬけと……》


 だが、あのSDカードに残っている動画に映っていた被害者の父親が自分だったとは、彼女も思っていないだろうと、俺はもう一人の自分に言い聞かせた。


 しつこく「早く来い」と彼女が急かすので、俺は急ぎ百合の自宅へ向かった。


 光を襲った男の一人が、この女の旦那だからだ。


《いっそ、見せしめにこの女の首を締めて……》


 と言う妄想に駆られるが、同時に自分は『弁護士だ』という思いもある。


 だが、警戒は緩めていない。動画に映っていた四人の他に、仲間がいてもおかしくはない。だとすれば、冷静に、すべてを見極めなければならないと俺は考えた。


 車を家の前につけてインターホンを鳴らした。ドアが開いて出てきた百合の挑発的な薄着姿に俺は驚きを隠せなかった。


《この女……どういうつもりだ?》


 俺の胸に、またもや殺意が芽生えた。



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