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隠し扉の真実  作者: 北島 将


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第五章「隠し扉の真実」第一話 サスペンスと言えば崖や(六)

(六)


 漁港は規制線が張られて、鑑識班の作業も続いている。


「ご苦労様です。昨日はよう眠れたかね」


 小浜署で俺達を案内してくれた木田巡査部長が、声をかけてきた。


「お陰様で」と神楽が挨拶をして、「それで、現場の状況を教えてください」と訊いた。


「まず、マル害が閉じ込められていた小屋は、漁港から道路を挟んだあの三つ並ぶ小屋の左側です。偶然近うを通った漁師さんが、使うてえんはずの小屋からモーターの音が聞こえてきたで、不審に思い、中を確認して冷蔵庫の中で意識のないマル害を見つけたそうです」と、方言交じりで話してくれた。


「施錠はしていないんですか」


 神楽が小屋の近くで鍵の辺りを指さしながら木田に訊いた。


「はい、今は使っていない小屋で、盗られるようなものもないということで、施錠はしていないようです」


 不用心な気がするが、こういう地域では当たり前の光景なんやろなと、納得する。


「漁港の関係者の出入りはどうですか」


「ここ二日間、海が荒れて漁には出てえんかったらしゅうて、出入りは少なかったと思われます」


 男はすでに救急車で運ばれ、残された冷蔵庫だけが、妙に生々しく口を開けていた。


 俺は鑑識班が調べているその業務用冷蔵庫を遠目で見た。あの大きさなら大の男でも楽に入ることができるやろ。邪魔しても仕方がないので、俺と五十八は、付近の防犯カメラの位置を確認することにした。


「こら、期待でけへんな」


 五十八がため息をつく。仕方がないので、五十八と二人で港から少し山手へ入っていくと、若狭彦姫神社がある。それを横目に少し歩くと、クルーザーやらプレジャーボートやらが、ずらっと陸に上げられている場所があった。金持ちの遊び道具みたいな船を何気なく眺めていたとき、ふと、気がついたことがあった。


――もしかして、この中に柴田修一名義の船があるかもしれん。


「桔平、どないした?」


 ドラマのサスペンスなみに、ピピッと閃いた俺に、脳筋五十八が声をかけてきた。


「釣りや。五十八」

「なんやお前、言えや。釣りがしたかったんか」


 俺は一瞬、五十八に冷たい視線を送った。


《まあええ》


 神戸で育ち、結婚を契機に京都におった柴田修一が、もし、この場所を知っているとしたら、「釣り」やないか。本人も毎年この時期に釣りに行くといっていた。


《いや、待て。もし柴田修一が――室田康太、山根あかり、大迫真司。全ての事件に関与していたとして、ここまで理詰めで来た男が、ここに来て、すぐに足がつきそうな場所を選ぶはずあらへんのとちゃうか》とも思った。


 あくまでも推論や。


「全ての船の所有者を洗い出してもらいましょう。柴田修一本人名義だけでなく、親族名義など、あらゆる可能性を考慮してもらいます」


 神楽が俺の背後から声をかけてきた。


《なんでお前までおんねん。しかも何で俺が船を見てピンときたんがわかんねん》


 俺は言いようのない恐怖を感じてビビった。


「あと、周辺の民宿や旅館の宿泊記録も調べてもらいましょう」


《いちいち付いて来んと、自分の仕事せえ。お前は金魚のふんか……》


 まあ、こいつが付いてくるんは、小さいときからやけど、天ヶ瀬ダムで倒れて、一週間入院してから、そのベッタリが酷ひどくなったように思えた。


 たぶん、小学校から高校、果ては今に至るまで、バレンタインチョコレートがもらえへんかったのは、こいつが背後霊のように付いとったからやと、俺は神楽を恨めしそうに見た。


 とにかく、今の状況で俺達らができることはあまりなさそうやし、一旦引き上げて、小浜署からの報告を待つことにした。



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