第三章「不倫凸撃殺人事件」第一話・嘘つきは泥棒の始まりやで(十)
(十)
五月十五日の午後九時に、京都南インターのホテル街で、百合が男とホテルにいるとの報告を受け、真司に連絡。急遽、動画撮影になったんやと言う。
「ただ、ホテル前で待っていたんですが、急に連絡が帰ってこなくて、仕方無く事務所戻りました。その後も連絡を入れてはいますが返信が返ってこず、心配をしています」
ここまでは警察でも把握していて、ここ数日、真司の出入りはないそうや。
「これはそのときのメールのやりとりです」
と言って、修一は画面を開いて見せてきた。
メールの内容を確認すると、大迫と修一のやりとりは、二ヶ月前の四月三日から始まっている。室田康太の事件から二日後やな。
『ご依頼のあった調査の結果が出ましたので、一度事務所に来ていただきたいのですが、よろしいでしょうか』
これが、最初のやりとりやった。
三ヶ月前に依頼を請けたとしたら、浮気調査の期間(一ヶ月)を考えると、妥当と言えるやろ。
『明日にでも伺います』
まあ、ごく普通のやりとりや。
それから二日たった、四月五日午前十時五分。
『動画のことでお伺いしたい事があります』
大迫の方からメールを入れていた。見たところでは初めての感じがした。
『何でしょうか』
と、二分後に修一は返信していた。
『顔出しですが……』
あー、そこか。
そら、顔出しは嫌やろな。
『動画をご覧になれば分かると思いますが、身元がばれないように注意して編集を行っていますので、安心してください』
『了解です。仕事柄、顔出しはまずいので』
《そら……詐欺師やからな》
俺は、心の中で皮肉を言った。
『なんでしたら、動画をアップする前に確認していただいても結構です』
『いいえ、そこまでして貰わなくても大丈夫です。よろしくお願いします』
『分かりました』
この日のやりとりははこれで終わっていた。
イメージとは違う、丁寧なやりとりに見える。
確固たる証拠はまだないけどや。大迫がやってきたことを思えば、素直には受け取れへん。
次の日も会話をしていた。そして調査内容の報告や相談など、当たり障りのない内容のやり取りが事件が
『本日はわざわざお越しくださり、ありがとうございました』
大迫が、修一の事務所に行った後のやりとりらしい。
『七年も連れ添った奥様の裏切り。ご心中お察しします』
修一が、送った二日前のメールや。六月十三日午後七時三分と記録されていた。
『ありがとうございます』
大迫の返信は、午後八時五分。一時間後やった。
『お酒を飲まれてますか?』
『いえ、眠れないので睡眠薬を飲みました』
『そうですか、お気を確かに』
『あんなに仲がよかったのに』
と、真司は、『いや、そう思ってたのは自分だけでした』
と、続けて書いた。
『もう、消えてしまいたいです』
『変なことは考えないで、ゆっくりお休みください』
そして昨日、午後八時二十分。
『先ほど探偵からの連絡があり、奥様が男とホテルに入ってとの情報がありました』
『そうなんですか』これが、午後九時一分。
『我々の準備は出来ております』
『場所はどこですか』
『京都南インターの直ぐ近くです』
『すぐに向かいます、位置情報をお願いします』
『了解しました』
一分後にスタッフの場所の住所が送られていた。
『あ、それと進行はまりかさんでお願いできますか』
『はい。今日の進行は彼女にお願いしております』
嫁が浮気中という状況で、指名しとるところに、大迫の下衆な心が滲み出とる。
「消えたい」とか、演技やろと思われてもしゃあないで。
しかし、修一のメールへの、大迫の返信はなかった。




