↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠し扉の真実  作者: 北島 将


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/36

第一章「子供ができたの殺人事件」第二話「第二話「会社名が『非道』て何やねん」(三)

(三)


 不意に本部からの着信音が鳴った。


 画面を確認した神楽が、俺へ小さく親指を立てる。


「山際課長です」


 電話に出た神楽は、二、三度相槌を打ったあと、俺たちを振り返った。


「マル害の身元が判明したそうです」


 そのまま通話をスピーカーへ切り替えると、部屋にいた捜査員たちの手が一斉に止まった。


「それで、名前は?」


『室田康太、三十一歳や』


 山際のおっさんの声が、静まり返った室内に響く。


『さっき送ってきた集合写真があったやろ。写真の裏に“康太”いう書き込みがあったさかい、大野晴子の交友関係を洗わせたんや』


 俺は、テーブルの上に置かれたアルバムへ目を向けた。


『別の班が晴子が勤めとる会社の関係者から、室田康太いう男が浮かんだ。運転免許証の顔写真を照合したところ、マル害と酷似しとる』


「住所は?」


『八幡市内のアパートや。背割堤からも、そう遠くない。管理人にも写真を確認してもろたところ、昨日から姿を見てへんらしい』


 俺は、アルバムを開き、もう一度、集合写真を見る。


 楽しそうにピースサインを作っている男……。


 昨日、背割堤で何者かに刺し殺された男は、写真の中では、自分が死ぬことなど欠片も知らずに笑っていた。


『今、指紋と歯科記録も照合しとる。せやけど、まず間違いないやろ……ただな、そうなると、ややこしいことになっとるんや』

 

おっさんの含みのある言い方に、俺と神楽は顔を見合わせた。


「ややこしいとは、どういったことですか?」


 俺の顔を見ながら、神楽はスマホに話しかける。


「マル害、室田と、四年前の事件が繋がったんや」


 その一言で、部屋の空気が変わった。


「……何と……ですか」


 四年前と聞いて神楽も察したのか、声が震えていた。


『鑑識から連絡があった。柴田ゆかりさんの体内から検出され、犯人由来とみられていた男性のDNA型と、今回のマル害のDNA型が一致した』


 神楽は、何も言わず静かに目を閉じた。


 女性としては聞きたくない言葉やったんやろ。


 俺は、神楽の肩にぽんと、手を置いた後、窓際まで行きカーテンを開いて外の景色を見た。


 ただ一つ、はっきりしたことがある。


 室田康太は、四年前の事件と無関係やなかった。


 その瞬間から、俺の中で室田は、背割堤で殺された哀れな被害者というだけの人間ではなくなった。


 死んだからといって、生前の行いまで消えるわけやない。


 俺の中で、被害者の仮面が剥がれて行く。


 窓の外を見ながら俺は四年前のあの日、向日町署へご遺体を引き取られに来た、マル害の親父さんの姿が目に浮かんだ。

 

 いや、俺にとっては忘れられない光景やった。


「お世話になりました」


 ゆかりさんの親父さんは、静かにその場にいた俺たち刑事に頭を下げた。


 泣くでもなく、取り乱す事もなく、ただ静かに毅然と……一言だけ残していった。 


 俺は急ぎ本部へ戻ることにした。


 晴子の部屋から消えたパソコンも気になる。

 

 今は四年前の事件の扉が少し開いたように感じたからや。一刻も早く捜査本部へ戻り、室田とゆかりさんをつなぐものを確かめるべきや。

 

「神楽、本部へ戻るで」


 振り向くと、そこには佐藤刑事しか残っていない。


 神楽は俺が言うより先に、もう玄関へ向かっていた。


「先輩……もう、いいですか?」


「……何がや」


「いや、先輩が出てくれないと鍵を閉められません」


「……そら、そうやな」


 俺は小さく咳払いをして、何事もなかったような顔で部屋を後にした。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。