season1 第9章 「今日も来てくれてありがとう」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"頑張ることができない日もある。それでも、誰かが待っていてくれるだけで、人はまた一歩を踏み出せる。"
冬が近づくにつれて、朝起きることが少しずつ苦しくなっていった。
目は覚めているのに、体が動かない。
制服に袖を通しては脱いで、また着て。
時計の針だけが進んでいく。
「今日も行けないかもしれない……。」
そんな日が増えていった。
学校へ着く頃には、もう給食の時間になっていることもあった。
別室のドアを開けると、別室の先生はいつもと変わらない笑顔で迎えてくれる。
「おはよう、Ami。」
「……おはようございます。」
遅く来たことを責められたことは、一度もなかった。
その優しさに、何度も救われた。
しばらくすると、廊下から聞き慣れた足音が近づいてくる。
コンコン。
「Ami、いる?」
養護の先生だった。
「今日も来てくれてありがとう。」
先生は会うたびに、そう言ってくれた。
「来るの、大変だったでしょう?」
私は小さくうなずく。
「……はい。」
「でも来られたね。」
その一言だけで、胸がいっぱいになった。
先生は時々保健室から救急箱を持ってきて、手当をしてくれることもあった。
養護の先生は気づいてたのかもしれない。
学校来る前にきっと....って。
1度だけ言われたことがある。
学校着いたらちょうど保健室から出てきたところで、「今日、大丈夫じゃないよね?」、そう言われた時私は「大丈夫」って言ってたけど本当は限界だった。
そのこともあって救急箱を持って来てくれることが増えたのかもしれない。
私は毎回「ありがとう……ございます。」って同じことしか言えなかった。
けど少しずつだけど、「ありがとう」が自然に言えるようになっていた。
それは先生たちが、何度も私に「ありがとう」を伝えてくれたからかもしれない。
放課後になると、保健室へ寄るのが習慣になっていた。
「今日はどうだった?」
「少し疲れました。」
「そっか。よく来たね。」
その何気ないやり取りが、私にとっては一日の終わりを安心して迎えられる時間だった。
ある日、保健室を出ようとすると、養護の先生が私を呼び止めた。
「Ami。」
「はい?」
先生は少しだけ寂しそうに笑った。
「もうすぐ三学期だね。」
その笑顔の理由を、このときの私はまだ知らなかった。
春が近づく頃、大好きな先生たちとの時間が少しずつ終わりへ向かっていることを――。




