season1第10章 「変わらない日なんてない」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"『また明日ね。』その言葉が、ずっと続くものだと思っていた。"
三学期も終わりが近づいていた。
少しずつ暖かい日が増え、校庭の桜のつぼみも膨らみ始めていた。
私は相変わらず別室で過ごしていたけれど、学校へ来られる日は少しずつ増えていった。
「おはよう、Ami。」
別室の先生の声。
「今日は来られたね。」
養護の先生の笑顔。
昼休みには国語担当の先生が顔を見せてくれる。
そんな毎日が、当たり前になっていた。
その日も、お昼休みに国語担当の先生が別室へやって来た。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
少し前なら、返事もできなかった。
でも今は、先生の顔を見て話せるようになっていた。
「最近、声がよく聞こえるようになったね。」
先生が嬉しそうに笑う。
「最初の頃は、うなずくだけだったのに。」
私は照れくさくなって、小さく笑った。
「先生たちのおかげです。」
その言葉に、先生は少し驚いたような顔をした。
「……そんなふうに思ってくれてたんだ。」
「はい。」
たった一言だったけれど、先生は何度もうなずいていた。
「ありがとう。」
その"ありがとう"は、いつもより少しだけ優しかった。
放課後。
保健室へ行くと、養護の先生が机の上を片付けていた。
「先生、お手伝いします。」
「ありがとう。じゃあ、このプリントを一緒にまとめてもらえる?」
二人で並んでプリントをそろえる。
静かな保健室には、紙をめくる音だけが響いていた。
「Ami。」
「はい?」
「来年は、どんな一年になるかな。」
先生はプリントを見つめたまま、ぽつりとつぶやいた。
「……分からないです。」
そう答えると、先生は優しく笑った。
「そうだよね。でも、大丈夫。」
「Amiなら、きっと少しずつ前へ進める。」
その言葉が、なぜか胸に残った。
帰り道。
昇降口で国語担当の先生とすれ違った。
「また来週ね。」
「はい。また来週。」
私は手を振った。
先生も笑顔で手を振り返してくれた。
その"また来週"が、
先生と交わした最後の約束になるなんて――
そのときの私は、まだ知らなかった。




