season1第11章「さよならと、はじめまして」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"新しい季節が来ても、心はすぐには切り替わらない。大切だった人がいなくなった場所には、少しだけ寂しさが残っていた。"
あれから4週間が過ぎ、最後だと知らなかった「また明日」の約束も終わることになった。
そして春休みが終わった。
今日から中学二年生。
校門をくぐると、去年と同じように桜が咲いていた。
「今年も始まるんだ……。」
そう思いながら、私は教室へ向かった。
廊下には、新しいクラスを確認する生徒たちの声が響いている。
教室の前まで行く。
中からは、友達同士で話す声が聞こえていた。
「おはよう!」
「今年もよろしくね!」
楽しそうな声。
私はドアの前で立ち止まった。
手をかけようとする。
でも――
やっぱり、入れなかった。
胸がぎゅっと苦しくなる。
私はそのまま教室の前の廊下にいた。
しばらくすると、先生がこちらに気づいた。
今年の新しい担任の先生だった。
「Ami、おはよう。」
「……おはようございます。」
「ここにいるんだね。」
「……はい。」
先生は教室の中を見てから、私を見る。
でも、
「教室に入ろう。」
とは言わなかった。
ただ、少し離れたところで私と同じように廊下を見ていた。
「無理しなくていいからね。」
私は小さくうなずいた。
しばらくして、先生が言った。
「今年一年、よろしくね。」
「……よろしくお願いします。」
それだけの短い会話だった。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
先生は私を急かさなかった。
教室に入れないことを責めもしなかった。
それだけで、少し安心できた。
その後、私は空いている狭い教室へ移動した。
そこには机と椅子がいくつか並んでいるだけ。
静かで、人の声もほとんど聞こえない。
私は窓の外を眺めながら時間を過ごした。
そして3限。
私はいつもの別室へ向かった。
ここは、私が少しだけ安心できる場所だった。
3限、4限。
そして給食。
去年と同じように、ここで過ごす。
だけど――
去年とは違うことが一つあった。
いつもなら、この時間になると養護の先生が顔を見せてくれた。
「Ami、元気?」
そう声をかけてくれる先生。
何気ない話をして、時には笑って。
私が学校で安心していられる場所を作ってくれた先生。
そして、別室へ来てくれた国語担当の先生。
私に何度も声をかけてくれた先生。
「今年も会える。」
そう、当たり前のように思っていた。
でも、その日は二人とも来なかった。
私は別室の先生に尋ねた。
「……先生たちは?」
少しの沈黙。
そして先生は、ゆっくり答えた。
「Ami。」
「国語担当の先生と養護の先生ね……この春で離任されたんだ。」
「……え?」
頭の中が止まった。
「離任……?」
「うん。」
私は何も言えなくなった。
昨日まで当たり前だった存在が、突然いなくなっていた。
「また会える」と思っていた。
「また話せる」と思っていた。
でも、その「また」はもう来ない。
私は机の上に視線を落とした。
新しい担任の先生。
新しい学年。
新しい一年。
周りには新しいものがたくさんある。
なのに、私の心は去年に置いてきてしまったようだった。
その日の帰り。
廊下で、新しい担任の先生とすれ違った。
先生は立ち止まって言った。
「今日はどうだった?」
「……分かりません。」
「そっか。」
先生はそれ以上聞かなかった。
ただ、
「また明日ね。」
そう言ってくれた。
私は少し迷ってから答えた。
「……はい。また明日。」
先生は笑った。
その笑顔を見ながら、私は思った。
大切な先生たちがいなくなった寂しさは、すぐには消えない。
新しい先生を、すぐに好きになれるわけでもない。
それでも――
「また明日」と言ってくれる人がいる。
それだけで、明日も学校へ来てみようと思えた。
この春、私は大切な人との別れを経験した。
そして同時に、新しい先生との物語を始めた。
まだ、その先生がどんな人なのかは分からない。
私もまだ、心を開くことができない。
でもきっと。
ここからまた、少しずつ変わっていく。
そんな気がしていた。




