season1 第12話 「もう一度、はじめまして」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"もう一度誰かを信じることは、思っているよりずっと難しい。でも、最初の一歩は、ほんの小さな『こんにちは』だった。"
中学二年生になって、何日かが過ぎた。
朝、学校へ着く。
教室の前まで行く。
でも、やっぱり中には入れない。
私は廊下から外を見ていたり、空いている狭い教室で時間を過ごしたりしていた。
3限と4限、それから給食の時間になると別室へ向かう。
去年と同じ場所。
だけど、去年とは違う。
あの先生たちは、もういない。
ふとした瞬間に、寂しさが込み上げてくる。
そんなある日のことだった。
別室の先生が、いつもより少しだけ嬉しそうな顔をしていた。
「Ami、ちょっといい?」
「……はい。」
「紹介したい先生がいるんだ。」
私は少し身構えた。
「先生……?」
「うん。」
別室のドアが開く。
そこに立っていたのは、新しい養護の先生だった。
「こんにちは。」
優しい声だった。
私は小さく頭を下げる。
「……こんにちは。」
先生は笑って、
「はじめまして。」
と言った。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が少しだけ苦しくなった。
――はじめまして。
去年までなら、いつもの先生が「こんにちは」と声をかけてくれていた。
そこにいたはずの人がいなくなって、新しい人が目の前にいる。
私は何を話せばいいのか分からなかった。
「Amiさん、ここで過ごしてるんだね。」
「……はい。」
「この部屋、落ち着く?」
「……まあ。」
「そっか。」
先生はそれ以上、無理に質問しなかった。
少し話して、少し黙る。
その繰り返しだった。
私は最初、ずっと下を向いていた。
でも先生は、帰ろうともせず、急かしもしなかった。
ただ、そこにいてくれた。
「また来てもいい?」
先生が聞いた。
私は少し迷った。
「……はい。」
それだけ答えた。
先生は嬉しそうに笑った。
「ありがとう。また来るね。」
先生が部屋を出ていったあと、別室の先生が私を見る。
「どうだった?」
「……普通です。」
「そっか。」
私は少しだけ考えてから続けた。
「でも……嫌じゃなかったです。」
先生は笑った。
「それなら十分だね。」
その日の帰り道。
私は新しい養護の先生のことを少しだけ考えていた。
まだ名前も、好きなことも、どんな先生なのかもよく分からない。
それでも――。
「また来るね。」
そう言ってくれた言葉が、なぜか心に残っていた。
次の日。
別室へ行くと、養護の先生がいた。
「おはよう、Amiさん。」
「……おはようございます。」
昨日と同じ挨拶。
でも、昨日よりほんの少しだけ自然に言えた。
先生は笑った。
「今日も来たよ。」
私は小さく笑った。
「……はい。」
まだ、心を開いたわけじゃない。
まだ、昔の先生たちを忘れたわけでもない。
それでも。
新しい「はじめまして」が、少しずつ「こんにちは」に変わり始めていた。
そして私はまだ知らなかった。
この先生とも、これからたくさんの時間を過ごすことになるなんて。




