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10年の眠りから覚めたら、助けた少年が執着侯爵になって激重な愛を注いできますっ!  作者: 越智屋ノマ@10/8書籍発売『兄王陛下』/コミカライズ進行中


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第23話:次の関係

「……っ!? シスター・エルダに結婚式の話を聞かれた!?」

ラファエルは声を裏返らせた。


――王太子との接触はかろうじて避けたものの、重要な話を聞いてしまった。ラファエルとエ(・)ル(・)ダ(・)の結婚式準備が進行中だという話を。


「……本当に泣いていたのか?」

家令の報告を確認しながら、ラファエルは谷底に突き落とされたような気分だった。


アニスたちからの報告によれば、エルダは大変ショックを受けていたらしい。悲しげに涙を流し、しかも『今の話を、私は聞かなかったことにしてほしい』、『レイには絶対内緒にして』とまで頼んできたという。


(シスター・エルダ。私との結婚を聞かなかったことにしたいというのですか……?)


抗議するでもなく、ただ忘れ去りたい……というのはどういう気持ちなのだろう?

無断で結婚を決められて、尊厳を傷つけられたと感じたのかもしれない――ラファエルは、そう理解した。


(だが、やむをえない事情があった……。あなたが呪いから完全に回復したら、きちんと伝えるつもりだったんだ)


精神的なショックを受けると呪いが再発するケースもあるとドクター・ピーナから聞いていた。なにが引き金になるか分からないから、エルダにはできるだけ刺激を与えないようにしてきたのだ。


(今すぐ事情を説明したい……。だが、ダメだ。シスターは、『何も聞かなかった』ことにしたがっている)

侍女から情報が漏れたと知れば、信頼関係に亀裂が入る。それだけは……。


「ともかく、一刻も早く仕事を終えてエルダのもとに帰るしかないな」

焦りを隠せない様子のラファエルを、家令は唇を微かに吊り上げながら見つめていた――。


   ***



それからおよそ3週間後。

領地での仕事を終えたラファエルは、ようやく王都のタウンハウスに帰り着いた。真っ先にエルダの部屋に向かおうと思っていたが――。


「……っ。シスター・エルダ!」

意外にも、彼女は玄関でラファエルの帰りを待っていてくれた。

その笑顔を見た瞬間、ラファエルは胸を撫で下ろした。

けれど――。


「おかえりなさい、ラファエル様!」

元気いっぱいの笑みを浮かべて、エルダははっきりと言った。『レイ』ではなく、『ラファエル様』と。

胸の奥がぎくりとしたが、ラファエルは平静を装って返事をした。

「ただいま戻りました、シスター。元気そうで何よりです」


「ええ。おかげさまでとっても元気です!」

今度は敬語だ。

明らかな距離感の変化に、エルダの脇に控えていた3人の侍女も戸惑っている様子だった。


「……それはよかった。私の不在中も、侍女達とリハビリをがんばっていたそうですね。明日からはまた私があなたのリハビリを――」

「あの。その話なんですけれど」

エルダはラファエルの声を遮った。やたらと明るく笑いながら、でも、どこかぎこちなさを感じる。


「今後のリハビリは、引き続きミモザたちにお願いしたくて」


……室内の空気が、固まった。

ラファエルは目を見開いて硬直し、侍女3人は息をするのも忘れている。


そんなラファエルたちを気遣うように、エルダはそわそわと慌て始めた。

「いえ、あの! 不満があるとか、そういうんじゃないんですよ? ……でもほら、私こんなに元気になったので。いつまでもラファエル様のお時間を取っちゃいけません。会いたい人もいるでしょう?」



会いたい人? 王太子のことか?

喉から問いが出かかって、けれどラファエルは呑み込んだ。

「これからは、ラファエル様自身のために時間を使ってほしいんです。だからお願いします!」


(シスター・エルダ。……やはり、勝手に結婚を決められたのが許せないのですね?)

口にするのも避けるほどエルダは受け入れたくないのだ――と、ラファエルは感じた。これ以上拒絶されないためにも、今は自分が引き下がるべきだ、とも。


「……分かりました。それでは今後のリハビリは、侍女たちに任せます」

「ありがとうございます!」

ぱぁ、と花咲くようにエルダの顔が輝いた。その晴れやかさが、むしろ悔しい。


……だが、自分はこのまま引き下がったりしない。絶対に。


「でも、私はいつでもあなたのことを気にかけていますよ」

ラファエルは一歩前に進み出ると、エルダの手をしっかりと握った。びくん、とエルダの身が強張って、耳まで赤く染まっていく。


(そういう反応を示してくれるなら、少しくらいは私を男とみなしてくれているのか――? そのまま、どこまでも私に溺れてくれればいいのに)


「ラ、ラファエル様……あ、あの、離していただけると……」

「離しません」

絶対に手離すものか。


「リハビリが順調ならば、もう『ひな鳥』扱いは必要ありませんね」

「え?」

実際、エルダはすでに病み上がりの状態ではない。だったら、これからは次の関係性を目指そう。

そう。

彼女自身が、ラファエルと結婚したいと思ってくれるような関係性を。

「私もそろそろ本気を出します」

笑みの形に目を細め、ラファエルはエルダを見つめた。




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