決断
「エ?」
屋上の中心であん子がすっとんきょうな声をあげた。
それもそのはずだろう。
「イマナンテ?」
「あん子はなんで人間になりたいか、そう聞いたの」
あえて冷たさを突き通す。
あぁ、すごく驚いている。
「ダ、ダっテ……エっト、ニンゲンニナッテ、夏村サント、ナカヨクシテ、ソレデ……
「明確な理由はないのね」
「アぅ……」
自分が冷たいからだろうか。
あん子が困っている。
でも、自分の意見を言おう。
がんばれ自分。
「あのさ……」
少し声が震えた。
心のどこかでびびっている自分がいる。
言え、言うんだ。
「私、その……」
ごくりと唾を飲み込む。
強く握った拳の中はびっしょりだ。
しかし、意を決して発言する。
「あん子は人間に……なれないと、思う」
青空の下、沈黙が流れた。
その沈黙をあん子が破る。
「ハ、ハぁ?! ナレマスヨ! ワタシ、ゼっタイナリマスモン!」
「だって、どう考えたって無理でしょ?!」
むきになっているあん子につられ、自分もむきになってしまう。
落ち着かなければならない。
わかっているが止まらない。
「だいたい! あん子は、ロボットじゃん!」
「ソウデスロボっトデス! デモ、トクベツナロボっトナンデス!」
「なにそれ?! 特別なんかじゃないよ! ていうか、あん子って心臓あんの?! 血ながれてんの?!」
「シラナイデスっ!!」
「親とかいるの?! どうやって産まれてきたの?! ~~っ!!」
まったく止まらない。
気持ちが溢れて言葉にならない。
「オヤ……シラナイデスっ!! シラナイガイっパイデス!!」
「人間はね!」
また口が動く。
「親がいて血が流れてるの! みんなお母さんがいるの! だから、あん子はそうじゃないから違うの! あん子って悲しみしか感情ないよね! 人間ってもっとたくさんあるんだよ! だからね、人間にはなれないの! 諦めて!!」
一番伝えたいことを伝えられない。
こんなに偉そうにぺらぺら喋っているのに、肝心なことが伝えられない。
「えっとね……」
叫びまくって荒くなった息を整える。
「カンジょ……チ、イノチ、オヤ……」
「ワタシハ、ナレナイ……?」
「ねえ、聞いて……」
額に滲んだ汗を拭い、あん子の瞳をとらえる。
「私はあん子にね……」
言い終わる前に、あん子は頭から煙を出して固まった。
「え、あん子? ねえ、どうしたの?」
呼び掛けても反応がない。
「あん……あちっ」
触れるととても熱かった。
どうしようか悩んだか、ここに置いておくわけにも行かないのでおんぶして運ぶことにした。
「熱い……」
あん子のとんでもない熱と重みのおかげで、汗が流れ落ちる。
数々の生徒に変な目で見られ、先生にもたくさん聞かれた(上手く流した)。
しかしかまっている暇はない。
家に運ぼう。




