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歓喜の勝利と大剣の疑惑 第93話

ガルドがゆっくりと仲間たちのもとへ戻ってきた。


「ガルドー!」

ゴリムが大声で呼ぶ。

「やったじゃねえか! もっと喜べよ。圧勝だろうが」


はしゃぐゴリムとは対照的に、ガルドは静かに首を振った。

「いや……そんなことはない。相手も相当な使い手だった。

ニコとの修行がなければ、勝てていたかどうか……」


「ガルドさん、おめでとうございます」

ニコがやわらかな笑顔で言う。


「ガルド、おめでとう」

クレイグの少し緊張を残した声が続いた。


「ありがとう。これで、ようやく一息つけそうだ」

ガルドは小さく息を吐いた。


「ガルド、よくやった」

園長が短く告げる。


「ありがとうございます」

ガルドはまっすぐに頭を下げた。


「騎士団よりカイル、魔獣園よりクレイグ。両者、前へ」


呼び出しに応じ、第二試合の二人が静かに試合場の中央へ進み出る。


両者の位置を確かめたのち、グレイブが口を開いた。

「準備はよろしいでしょうか」


「はい」

カイルとクレイグが同時に応じる。


一拍の静寂。


「――それでは、第二試合を開始します」


宣言と同時に、カイルとクレイグは剣を構えた。


グレイブの手の中で、銅貨が静かに光る。

息を呑む気配が広がった、その刹那――

指先がわずかに動く。


『ピンッ』


弾かれた銅貨は、鋭い軌跡を描いて宙へと跳ね上がった。

きらりと光を反射し、回転しながら落ちていく。


や滑て――


『チリン』

乾いた音が、地面に響いた。


次の瞬間――二人は同時に踏み込んだ。


先に動いたのはカイルだった。

無駄のない一歩。重心は低く、剣は正中に構えられている。

教本に刻まれたような、隙のない構え。


対するクレイグは、間合いを取るように半歩引いた。

長い柄を持つ剣槍ソードスタッフが、円を描くように回る。


――間合いが違う。


カイルの剣が届く距離より、さらに一歩外。

そこがクレイグの領域だった。


「……っ」


カイルは躊躇なく踏み込む。

間合いの不利を承知で、正面から切り崩す。


鋭い踏み込みと同時に放たれる一閃。


だが――


『ギィンッ!』


金属が弾ける。

クレイグの剣槍が、横から滑り込むようにして

その軌道を逸らした。


そのまま返す刃。

長い柄を活かした遠心の一撃が、唸りを上げて迫る。


「速い……!」

カイルは即座に体を捻り、紙一重でそれを躱す。

頬をかすめる風圧。

ただの一振りで、間合いごと削り取られるような圧。


(重いだけじゃない……速い)


再び距離が開く。


カイルは呼吸を整えながら、わずかに構えを変えた。

正面突破だけでは届かない。

ならば――崩す。


踏み込みを浅く、左右へと細かく動く。

視線と足運びで揺さぶりをかける。


クレイグの視線がわずかに動いた、その瞬間――


踏み込む。

低い軌道からの斬り上げ。


『ガキィッ!』


今度は深く食い込む。

完全には受けきれない。


クレイグの腕がわずかに後ろへ押し込まれた。

「やるな……!」

クレイグの口元が歪む。


次の瞬間、剣槍が大きく唸った。


横薙ぎ。続けて回転。

柄の長さを活かした連撃が

まるで暴風のように襲いかかる。


一撃ごとに距離が狂う。

リズムを狂わされる。


カイルは防ぐ。弾く。躱す。

しかし――

(押されている……!)


防戦一方。だが、崩れない。


足は止まらない。

剣は常に最短を描く。


「はあっ!」

気合とともに踏み込む。


正面――あえて危険な内側へ。


懐に潜り込む。

剣槍の間合いを殺す距離。


一瞬、クレイグの動きが止まる。


そこへ――

渾身の突き。


『ガンッ!!』

確かな手応え。


だが――


「甘い」

クレイグが、笑った。


次の瞬間、剣槍の柄が滑るように動く。

近距離でも扱えるように、握りを変えていた。

肘を支点に、短く鋭い一撃。


『ドンッ!!』

衝撃が走る。


カイルの体がわずかに浮いた。


「くっ……!」

踏みとどまる。だが、その一瞬の隙。


クレイグの剣槍が、大きく振りかぶられた。


(来る――!)

全力で受けるしかない。


カイルは剣を構え、正面で受け止める。

振り下ろされる、全力の一撃。


『ギィィィィンッ!!』

凄まじい衝撃。


地面が軋む。


押し潰されるような重さ。

だが、耐える。


「まだだ……!」

カイルは歯を食いしばる。


その瞬間――


クレイグの目が、鋭く細められた。

「終わりだ」


次の一撃は、速かった。

防御の上から、さらに叩き込む。

角度を変えた、斜めの一閃。


『キィン――ッ!!』

甲高い音。


一瞬の静止。


そして――


『パキン』と。

カイルの剣が、根元から真っ二つに割れた。


折れた刃が、くるりと宙を舞い――地面へと突き刺さる。


静寂。


その中で、カイルは動かなかった。

ただ、折れた剣を見つめていた。


「――そこまで!」

グレイブの声が訓練場に鋭く響き渡る。

「勝者――魔獣園、クレイグ!」


「うおおおおっ!!」

魔獣園の観戦者から、一斉に歓声が沸き上がった。


「やりましたね、ルーナさん!

あとはニコさんが勝てば全勝ですよ」

アカネが弾んだ声で言う。


「ええ……ニコさんなら、きっと」

ルーナは静かに、しかし確信を込めて頷いた。


「クレイグ、やったな」

ガルドが声をかける。


「ああ……これで終わりじゃないが――

……やっと、ここまで来れたな」

クレイグは息を吐きながら、しみじみと言った。


「だな。本番はここからだ」

ガルドも短く応じる。


ふと、ガルドは隣に視線を向けた。

「ニコ、どうした? 緊張してるのか」

黙ったままのニコに問いかける。


「クレイグさん、おめでとうございます」

ニコは静かに口を開いた。


「ああ、ありがとう。

俺たちでも勝てたんだ――

ニコ、お前なら大丈夫だ、自信を持て」

クレイグの言葉は、まっすぐだった。


「騎士団よりベイル、魔獣園よりニコ。両者、前へ」


呼び出しに応じ、第三試合の二人が中央へ進み出る。


互いの位置が整ったのを見届け、グレイブが口を開いた。

「準備はよろしいでしょうか」


「――お待ちください」

静かに手を上げ、ベイルが制した。

「試合の前に、ニコ殿の剣を確認させていただきたい」


「理由を伺っても?」

グレイブが視線を向ける。


「武闘大会では魔法の使用は禁止されている。

武器への補助魔法も同様です」

淡々とした口調で、ベイルは続ける。

「ニコ殿の剣――振りがあまりにも軽い。

違Headersえを覚えました」


場の空気が、わずかに張り詰めた。


「……ニコ殿の剣に、何らかの魔法が付与されていると?」

グレイブが確認する。


「可能性は否定できません」


「……承知しました」


グレイブはニコへ向き直る。

「ニコ殿、剣を拝見してもよろしいですか」


「は、はい……」

ニコは戸惑いながらも、大剣を差し出した。

その表情には、はっきりと動揺が浮かんでいる。


「ニコさん……大丈夫ですかね……」

アカネが不安げに呟く。


「……大丈夫です……」

ルーナも小さく頷いたが

その声は自分に言い聞かせるようだった。


受け取った瞬間――


「……これは……!」

グレイブの手が、わずかに浮く。

しかし次の瞬間、その軽さに目を見開いた。


「なんだ、この軽さは……!」


思わず漏れた声に、周囲がざわつく。


「やはり……」

ベイルが小さく呟いた。


その時――


「待て!」

低く通る声が場を割った。


「その剣に魔法など付与されてはおらん」

ガルディアスが一歩前へ出る。


「わしは風魔法の使い手だ。気配を誤ることはない」


「ガルディアス殿。それは確かですか」

グレイブが問う。


「ああ。――あれは魔法ではない」


一拍置き、言い切る。

「風の精霊の加護じゃ」


ざわめきが一段と大きくなる。


「ニコ殿と刃を交えたわしが言う。間違いない」

ガルディアスは断言した。

「そして――加護は、禁じられておらんはずじゃ」


場の視線が、一斉にグレイブへと集まった。

「加護は禁止されておりません。

ニコ殿の剣に問題はありません」


ニコは張り詰めていた息を吐き、肩の力を抜いた。


「この騒ぎが試合に影響せねばいいがのー」

バルドレインがぼそりと呟く。


その言葉を振り払うように――


グレイブが声を張った。

「それでは――第三試合、開始します!」

第93話

歓喜の勝利と大剣の疑惑

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


第二試合はクレイグが勝利し

ついに魔獣園の連勝となりました。

間合いを活かした剣槍ソードスタッフの戦い

楽しんでいただけたでしょうか?

彼らが修行の末に「ここまで来れた」と実感するシーンは

書いていて私自身も少し熱くなりました。


そして第三試合の開始直前、ニコの振るう大剣の

「異常な軽さ」に待ったがかかりました。

ガルディアスの助け舟で無事に試合は始まりそうですが

ニコは少し動揺している様子……。

果たして、この影響はどう出るのでしょうか?


次回は、いよいよニコの戦いが始まります!

どうぞお楽しみに!

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