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神話級の戦い。 第71話

大宴会の片付けもひと段落した様子を見て

ドラコニクスが楽しげに言った。

「ニコ殿。そろそろ始めますか」


「はっはい。やっぱりやりますか……」

ニコが露骨に嫌そうな顔をして言った。


「ニコ殿。ドラゴンこそ風の精霊に愛され、守られておるから

私の風の鎧とは次元が違うと思いますぞ」

先ほど負けたばかりのガルディアスが

脅かすように耳元で言った。


「そっそうなんですか!?」

ニコが心底驚いたような、引きつった声で言った。


「まあ、今は人化してるから少しはつけ入る隙は

あると思うがな」

歴戦の猛者であるバルドレインが、腕を組んで言った。


「うむ、確かにそうかもな」

ガルディアスが深く頷いて同意した。


「その、つけ入る隙ってなんですか?」

ニコが藁にもすがるような目で質問した。


「はっはっは、それがわかれば苦労はせん」

バルドレインが全く悪びれず、なげやりに言った。


「リシェルあたりに聞けば何か手掛かりになるかもな」

ガルディアスが、ふと思い出したように言った。


「私がなんですか?」

噂をされていたのが聞こえたのか

リシェルがひょっこり話しかけてきた。


「リシェルさん! ドラゴンの風の防御を崩す

方法はあるんですか!?」

ニコが救世主を見るような、藁にもすがる思いで聞いた。


「あっ、そんなことですか……簡単ですよ。

風の流れを読めばいいんですよ。強引に流れに逆らえば

弾かれるだけですよ」

精霊と親しいリシェルが、息をするのと同じくらい簡単そうに言った。


「その流れは、どうやって読むのですか!?」

ニコが身を乗り出し、食い入るように聞く。


「うーん、言葉で教えるのは難しいですね〜。

完全に感覚的なことなので……」

リシェルが首を傾げ、悪気なく身も蓋もないことを言った。


「そうなんですか……」と、ニコが絶望したように呟く。


「ニコ。さっさと始めるぞ!前に出て来い」

痺れを切らした園長が、逃げ道を塞ぐように大声で言った。


巨大な壁のようなドラコニクスを見上げながら

ニコは唾を飲み込んで所定の位置に移動した。


圧倒的な覇気を放つ姿とあまりの体格差に

周りの観客からもざわめきと不安が広がった。

「大丈夫かニコ……」

ガルドが、冷や汗を流して心配そうに言った。


「ニコならどうにかするはずだ!」

ゴリムが力強く拳を握りつつも

言葉とは裏腹に不安いっぱいの顔で言った。


「両者準備はいいですか?」

張り詰めた空気の中、園長が静かに確認する。


「いつでもいいぞ」

獰猛な笑みを浮かべ、ドラコニクスが余裕たっぷりに言った。


「はい」

大剣の柄を強く握りしめ、ニコも震えを抑えるような小さな声で言った。


園長が懐から、運命を決める一枚の銅貨を取り出した。


ピンッ……静寂に包まれた二人の間の空中に、高く弾かれた。


チリン……冷たい地面に触れた、その瞬間……。


『ブッウオォォォーンッ!!』

暴風のような凄まじい音を発したドラコニクスの大剣が

一瞬にしてニコに迫る。


ニコは迫る刃を最小限の動きでかわし攻撃へと転じたが

分厚い風の壁に阻まれ

ドラコニクスの体に触れる前に弾かれてしまった。


「……ダメか……っ!」

見えない壁に弾かれた反動で体勢が大きく崩れる。


その隙を神話の竜であるドラコニクスが見逃すはずもなく

すぐさま二撃目がニコを襲う。

『ブッウオォォォーンッ!!』


ニコは地を滑るように軽々とかわす

……しかし攻撃を躊躇ってしまう。


普通に斬り込んでも弾かれる。

(……リシェルさんの言っていた風の流れ……)

ニコは大きく距離を取り、ドラコニクスを

覆う見えない鎧を探りながら戦う。右から、左から

浅く鋭い踏み込みで牽制を繰り返すが

風の壁に阻まれ刃は届かない。


「どうしたニコ殿! 逃げてばかりで攻撃せねば勝てんぞ!」

ドラコニクスが余裕の笑みを浮かべ、ニコを挑発するように言う。


(瞬間移動の時はもちろん剣も一緒に移動してるはず

ドラコニクスさんに向かって瞬間移動すれば剣が風の防御を

すり抜けれるのでは……)


(……試してみるか……!)

ニコが鋭い瞳で前を見据え、決心した。


『シュンッ!』

次の瞬間、ニコの姿が掻き消えた。


「むっ!?」

ドラコニクスの余裕に満ちた表情が、微かに動く。

絶対の自信を持っていた分厚い風の防御が

何の反応も示さなかったからだ。


風の壁を物理的に押し破るのではなく

空間そのものを跳躍するニコの刃。

ドラコニクスの懐深く、強固な風の鎧の『内側』に剣が出現する。


(いけるっ!)

ニコが神話の竜の大剣を、全力で振り抜いた。


『ガギィィィンッ!!』

火花が散り、凄まじい衝撃音が副庭に響き渡る。

風の防御をすり抜けたはずの必殺の一撃は、

ドラコニクスの反応速度と大剣によって

間一髪のところで受け止められていた。


「……ははっ! なるほど、空間ごと跳躍して風の壁の内側に出たか!

見事な発想だ、ニコ!」

ドラコニクスが、剣を激しく交えたまま

獰猛で嬉しそうな笑い声を上げた。


ニコの怒涛の攻撃が始まった。


『シュンッ!』

右から、左から、そして死角となる背後から。

風の鎧の内側へ、空間を跳躍して直接現れるニコの刃。

全方位からの見えない連撃が、嵐のように降り注ぐ。


『ガギィィィンッ!』『ガキンッ!』

ドラコニクスが最初はなんとか攻撃もまじえながら凌いでいたが

その巨体からは想像もつかない速度で大剣を振るい

ニコを迎え撃つ。


「はははっ! さすがだぞニコ!」

咆哮と共に反撃の刃が副庭を薙ぎ払うが

ニコはすでにそこにいない。

頭上、足元、再び右から。

息つく間もない全方位からの瞬間移動攻撃。


だんだん攻撃をする余裕がなくなり、

ついにドラコニクスの顔から獰猛な笑みが消え

完全な防戦へと追い込まれていく。

弾いても、弾いても、空間の死角から無限に刃が迫る。

神話の竜の圧倒的な反応速度をもってしても

ニコのスピードが上回り始めていた。


(ここだっ……!)

ニコが最後の一歩を踏み込み、空間を跳躍する。

同時に、ドラコニクスも本能のままに

持てる全てを込めて大剣を振り下ろした。


『ピタッ……』


激しく吹き荒れていた風が、嘘のように止んだ。

最終的にニコの剣がドラコニクスの喉元に

ドラコニクスの剣がニコの頭上に停止した。


互いの冷たい刃が、あと一ミリの距離で完全に静止している。

一寸の狂いもない、完璧な相打ち。


長い死闘に園長が引き分けを宣言し試合が終了した。

「……そこまで! 引き分け!」


「ウオォォォォーッ!!」

副庭に割れんばかりの大歓声が響き渡る。


ニコは限界を迎え、疲れ果ててその場に座り込む。


ドラコニクスが大剣を収め、ニコに歩み寄り言った。

「こんな心揺さぶる戦いは何年ぶりだろうか……

ありがとう。本当に楽しませてもらった」


「こちらこそいい勉強になりました。

ありがとうございます」

ニコが荒い息を整えながら、深い感謝の言葉を言った。


「次、誰か試合する者はいるか?」

園長が熱気の残る副庭のみんなに聞いた。


それぞれが興奮気味に話をしながら

次々と対戦カードが決まっていった。


「私も混ぜて下さーい」

ニコの戦いを見てウズウズしていたアカネが元気にお願いする。


「私。あなたと対戦したいです」

なんとアカネが、七十階層主フレアディオを真っ直ぐ指名した。


「ふっ……望むところだ」

フレアディオが不敵に笑って快諾した。


「おっと、ここにいたら邪魔だな」と言ってドラコニクスは笑い

ニコをヒョイと担ぎ上げ

大きな肩に乗せ、次の闘技の邪魔にならないよう中央から移動させた。


強者たちの熱気は決して冷めることなく

次なる激闘への期待が副庭を熱く包み込んでいた――。

第71話

神話級の戦い。

お読みいただきありがとうございます!


ついに神話の竜ドラコニクスとの決着! 空間を跳躍するニコと

それをギリギリで迎え撃つドラコニクス

……結果は、互いの刃が寸止めで交差する「引き分け」となりました。

圧倒的な格上を相手に、一歩も引かずに死闘を演じきった

ニコの成長を感じていただけたら嬉しいです。

戦い終わって疲れ果てたニコを、ドラコニクスがヒョイッと

肩に担いで退場するシーンは個人的にもお気に入りの一コマです。


そして熱狂冷めやらぬ中、今度はアカネがリベンジを決意し

七十階層主フレアディオを指名!

ニコたちの熱い戦いに触発された者たちが

上位の相手にどんな戦いを見せるのでしょうか?

次々と決まる対戦カード

魔獣園の特訓はまだまだ終わりません!


次回もどうぞお楽しみに!


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