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激震。三番勝負 第69話

「みなさん。なんの騒ぎですか?」

アカネが外の騒がしい様子に気づき出て来た。


刀など武器に興味のあるロルフはいち早く騒ぎに気づき

すでに特等席で見物状態で待機していた。

「おお、アカネ起きたか。

これから面白いものが見れるぞ」


「えっ。なんですか?」

アカネが不思議そうに目を瞬かせる。


「ニコたちとラビリオスの方の模擬戦だ。

模擬戦だが真剣でやるみたいだぞ」

ロルフがワクワクしながら身を乗り出して説明する。


「そっそんな、面白い事になっているんですか?」

アカネがパッと目を輝かせ、興奮して言った。


「ああ、そうだ。対戦相手も決まったようだから

もう始まるぞ」

ロルフが副庭のヒリヒリとした空気を指差して言った。


「そんなぁ〜私も参加したいです!」

アカネがうずうずとした様子で言った。


園長が三者へ向けて順番を決めるように言う。

「どの対戦から始めるか、決めてくれ」


「爺さん。俺からやらしてくれ」

ヴォルガディンが一歩前に出てガルディアスに言った。


「仕方ないか。ニコと対戦できるなら、わしは何番目でもいいぞ」

ガルディアスが余裕の笑みを浮かべて言った。


「なら、一番最後だ」

マグナードが即座に釘を刺すように言った。


かくして対戦順が決定した。

第一試合:クレイグ 対 ヴォルガディン ―― リーチと技巧が交錯する【長柄対決】。

第二試合:ガルド 対 マグナード ―― 大地を揺らす超パワー同士の【重量級対決】。

第三試合:ニコ 対 ガルディアス ―― 圧倒的な威力をぶつけ合う【大剣対決】。


園長がクレイグとヴォルガディンの間に立ち戦いの

開始を告げるようだ。


「始まるぞ……」

ロルフが息を呑んで言った。


園長が懐から一枚の銅貨を取り出し静かに言った。

「わしがこの銅貨を空中に飛ばす。

これが地面に落ちた音が、開始の合図だ」


ピンッ……二人の間の空中に弾かれた銅貨が空を舞い


チリン……と冷たい地面に触れた。


だが二人は相手の反応を確かめるように睨み合う。


……一瞬の静寂……

『ブンッ!』

突然の風切り音と共に、剛剣が横薙ぎに走る。


『ギリッンー』

クレイグの剣槍が下に受け流しながら反動を利用し

斜めに切り下ろす。


『ガッキンーン』

ヴォルガディンが弾かれた槍の柄で受けた。


その重い一撃に足元の地面が震える。


「やるな、クレイグ!」

ヴォルガディンが凶悪な笑みを浮かべ

凄まじい速度で槍を連続で突き出してくる。


『シュババババッ!』

嵐のような無数の突きがクレイグを襲う。


だがクレイグは冷静だった。

長い柄を巧みに操り、剣槍の腹で

次々とその鋭い突きを弾き落としていく。


『ガキンッ!』『カァンッ!』

火花が散り、金属音が副庭に鳴り響く。


「まだまだぁっ!」

ヴォルガディンが大きく踏み込み

必殺の刺突をクレイグの胸に向けて放つ。


クレイグは避けきれず肩を掠めたが

リシェルのかけた『精霊の風衣』が風の盾となり

刃の直撃を薄く弾き流した。


「チッ、やはりその魔法厄介だな!」

防御されることは承知の上だったが、ヴォルガディンは

わずかに体勢を崩したクレイグへさらに追撃の薙ぎ払いを放つ。


クレイグはその重い横薙ぎを、手にした剣槍の腹で

『ガキンッ!』と辛うじて受け止めた。


だが、ヴォルガディンの圧力は凄まじく

鍔迫り合いのまま、ジリジリとクレイグが押し込まれていく。


その瞬間、クレイグは引くのではなく

逆に一歩前に踏み込み、手首を鋭く返した。


『ヒュンッ』

通常、長柄の武器で受け止めた状態から攻撃に転じるには

一度武器を引くか、大きく振りかぶる必要がある。


しかし、クレイグの武器は『両刃』の剣槍だった。


受け止めた状態から一切引くことなく、手首を返すだけで

裏側の刃がヴォルガディンの首筋めがけて

下から跳ね上がるように斬り裂いた。


『ギィィィンッ!』

「なっ……両刃だと!?」

予想外の軌道から迫る刃に、階層主が驚愕に目を見開いた。


ヴォルガディンは咄嗟に体を仰け反らせて躱そうとしたが

剣槍の鋭い切っ先が、彼の喉元の皮膚に

ピタリと触れる寸前で止められていた。


再び、副庭に静寂が落ちた。

ヴォルガディンの額から一筋の汗が流れる。


「……俺の負けだ」

ヴォルガディンが武器を下ろし降参を示した。


「勝者、クレイグ!」

園長が高らかに宣言した。


「おおおっ! すげええ!」

観戦していたロルフたちが、興奮もあらわに大きな歓声を上げた。


階層主が敗れるというまさかの結末に

熱を帯びたどよめきが副庭に広がった。


「ガルド、マグナードさん前へ」

そのどよめきを鎮めるように、園長がよく通る声で言った。


ズシン、ズシンと地面を震わせながら

ゆっくりと歩き出す二体の魔獣。


ピンッ……再び銅貨が弾かれた。


チリン……と触れた瞬間。


二人の姿が掻き消えるように激突した。


『ガッキィィィーンッ!!』

二体の巨大な武器が真っ向からぶつかった。


二人とも凄まじい衝撃で後ろに押し戻されたが

すぐさま次の強烈な攻撃に転じた。


『ガッキンッ――ガッリィッ!』


ガルドが鉾槍を振るい、相手の体勢を崩すためのフック

マグナードの重い武器をガッチリと引っかけた。


しかしそのまま、恐るべき超パワー同士の力比べになる。


「ぐおおおおっ!」

「ぬんんんんっ!」


互いの腕の筋肉がはち切れんばかりに膨れ上がり

踏みしめた足元の地面が、重圧に耐えきれずグシャっと沈み込む


だが、大地を揺らすほどの凄まじい力は見事に拮抗し

二人とも一歩も譲らずにギリギリと押し合いを続けた。


やがて両者の息が荒く上がり、全身から滝のように汗が吹き出す。

限界まで力を振り絞り、二人とも完全に疲れ果てていた。


「これで……最後だぁっ!!」

「おおおおおっ!!」


互いに残された全精力を込めた、渾身の激突。

『ドゴォォォォンッ!!』

と爆発のような轟音が副庭に響き渡る。


その強烈な反動で、二人の巨体は同時に大きく後ろへと弾き飛ばされ

『ズドォンッ!』

と地響きを立てて仰向けにぶっ倒れた。


「はぁ……はぁ……っ」

大の字になったまま、荒い息を吐いてピクリとも動けない二人。

その見事な死闘を見届けた園長が、スッと右手を高く挙げて宣言した。


「そこまで! 両者、引き分けとする!」


「ニコ、ガルディアス殿前へ」

園長の低く重みのある声が響く。


歴戦の元ギルド長であるガルディアスは

軽く体をほぐしながら前に出た。

「さぁ〜お手なみ拝見といきますか」


「お手柔らかに、お願いします」

ニコが身の丈ほどある大剣を手に、礼儀正しく頭を下げて言った。


……観衆が息を呑み、静まり返る副庭に……


ピンッ……三度、運命の銅貨が弾かれた。

高く舞い上がった銅貨が……


神話の竜が風を刻みし大剣の一撃が

歴戦の猛者の覇気を纏いし大剣と激突する。

いまだかつてない、大トリを飾る最高峰の戦い。

今まさに火蓋が切って落とされようとしていた。

第69話

激震。三番勝負

お読みいただきありがとうございます!


ついに始まった、常識外れのコーチ陣との激絶な特訓!

第一試合から

クレイグの「両刃の剣槍」の特性を活かした見事な勝利や

ガルドとマグナードによる大地を揺らす力比べなど

見どころ満載の熱い展開となりました。


ヴォルンが鍛え上げた最高の武器と

リシェルのかけた『精霊の風衣』が見事に合わさって

魔獣たちの持ち味を極限まで引き出してくれています。


そしていよいよ、大トリを飾るのはニコと

元ギルド長ガルディアスによる大剣対決です!

ドラコニクスが愛用したことで風の精霊力が宿った大剣を

ニコがどう使いこなすのか。

歴戦の猛者であるガルディアスを

相手にどんな戦いを見せてくれるのか……!


次回、激動の第三試合をどうぞお楽しみに!


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