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第4話:成田空港の喧騒と、不穏な足音

#サイプレス #サバイバルホラー #スラッシャー #サイコパス #学園 #恋愛 #ツンデレ #バカップル #友情 #異文化交流 #インドネシア #ウリンの意志 #2000年代ホラー

諏訪市での笑顔に満ちた集まりから一週間が経った。時は2018年8月下旬へと移る。長野県からの長い旅は、前夜からエドにとって始まっていた。出費を抑えるため、彼は上諏訪駅から成田国際空港へ直行するエコノミーの夜行高速バスを選んだのだった。高速道路の移動中、熟睡できなかったために体はバキバキに痛んだが、圧倒的なスケールを誇る国際線出発ターミナルに足を踏み入れた瞬間、その疲労感は一気に吹き飛んだ。空港のカフェから漂う香ばしい焙煎豆の香りが、ピカピカに磨かれたコンクリートの床の上を転がるスーツケースの軽快なキャスター音と混ざり合い、海外へ旅立つというリアルな高揚感を作り出している。壁に掛けられた巨大なデジタル案内板は、パチパチと点滅しながら、大洋を渡る航空便のスケジュールを映し出し続けていた。


カジュアルなデニムジャケットを羽織り、大きな登山用バックパックを背負ったエドは、5番柱の近くに立ち、集合場所に一番乗りしていた。それから間もなく、大都市特有の洗練されたファッションに身を包んだ若者たちが近づいてくるにつれて、エドの静寂は破られた。東京方面からは、ウィリアム・カーターが彼らしい男らしい笑みを浮かべて大股で歩いてき、その隣では、吉田千佳が少し不機嫌そうな表情を浮かべながらスーツケースを半分引きずるようにして歩いていた。特急列車のホームの方からは、京都からのカップルも姿を現した。宮城芽衣がとても楽しそうに手を振る一方で、一ノ瀬蓮は片手をズボンのポケットに突っ込んだまま、静かでエレガントなオーラを漂わせながらその隣をのんびりと歩いていた。こうして5人の仲間が再び集まり、テキサスへの夏休み旅行がいよいよ始まろうとしていた。


しかし、空港の本当の喧騒が始まったのは、彼らが航空会社の搭乗手続きカウンターの前に並んだ時だった。吉田千佳のスーツケースがデジタル計量器の上に乗せられた瞬間、画面の数字が26.5キログラムと赤く点灯した。無料受託手荷物の制限である23キログラムを完全にオーバーしていたのだ。


「えっ?! なんで重量オーバーなの?!」千佳はパニックになり、受付係の目の前で顔を真っ赤にした。彼女のツンデレな性格が、罪悪感を隠すために即座に発動する。彼女は振り返り、ウィリアムの胸を苛立ち交じりに指差した。「絶対にこれ、あんたのせいでしょ、このバカ外人! 昨日、シェアハウスで測った時はまだ大丈夫だって言ったじゃない! 私に恥をかかせたいわけ?!」


ウィリアムは彼女の小言に全く動じることなく、ただ声を上げて笑った。「おいおい、落ち着けよ千佳。昨日の時点では、今朝君が詰め込んだ大きな化粧ポーチと、追加の靴3足分の重さは入ってなかっただろ?」アメリカ人の青年はそう気さくに返すと、躊躇することなく空港の床に直接膝をつき、まだ余裕のある自分のスーツケースを開けて千佳を見上げた。「スーツケースを開けて。君の荷物の一部を僕の方に移そう。僕のにはまだスペースがあるから」


大きなスーツケースが床の上で開けられた時、千佳の私服の数着が、友人たちの目の前に今にも飛び出しそうになった。それに気づいた千佳は小さく悲鳴を上げ、顔を信じられないほど真っ赤に染めた。しかし、ウィリアムは機転を利かせ、自分の大きな体を使ってエドや蓮の視線から千佳のスーツケースを隠した。その男らしくて保護的な行動に、千佳の心臓は激しく高鳴った。ツンデレな少女はうつむき、服の裾をぎゅっと握りしめながら、消え入りそうな小さな声で呟いた。「あ、ありがと……。ムカつくけど、感謝するわ」ウィリアムはただただ広顔で笑い、愛おしそうに千佳の髪をくしゃくしゃと撫でた。


その一方で、京都のカップルにはまた違った喧騒が起きていた。純粋なENFPの性格を持つ宮城芽衣は、沖縄限定のお菓子でパンパンに膨らんだリュックを背負い、さらに悪いことには、非常に目立つ巨大な豚のマスコットぬいぐるみを大事そうに抱えていた。


「蓮くん、ちょっとこのぬいぐるみ持ってて! カバンからパスポート出すから!」芽衣は悪びれる様子もなく叫び、その大きな柔らかいぬいぐるみを恋人の腕の中に押し付けた。


一ノ瀬蓮は、普段からクールでエレガントなイメージを保っている哲学青年だが、公衆の面前でそのピンク色の巨大な豚のぬいぐるみを抱かされる羽目になった。彼のポーカーフェイスは崩れなかったが、その視線はぬいぐるみを冷ややかに見つめていた。彼は得意の静かな関西弁で、鋭い哲学的文句を並べ始めた。「命の宿らん布切れの塊を、十数時間もかけてタイムゾーンを跨いで運ぶやなんて……。まったくもって非論理的な存在空間の無駄遣いやな。現代人は、己の魂の虚無から逃れるために、無機物に感情を依存させすぎや」


その重苦しい小言を聞いても、芽衣は一ミリも怯まなかった。彼女はむしろ距離を詰め、蓮の少し折れ曲がっていたジャケットの襟を両手で優しく整えた。そして、芽衣は最も純粋な満面の笑みで蓮の目を見つめた。「でもね、このぬいぐるみは、飛行機の中で私が蓮くんにくっつきたくなった時、蓮くんの腕の代わりになってくれるんだよ? だから置いてっちゃダメなの」


その瞬間、蓮の口は完全に塞がれた。普段なら他人の言葉をいくらでも論破できるはずの若い哲学者が、突如として完全に形無しになった。赤みが首元から耳の先へと一気に駆け上がっていく。蓮はあまりの気恥ずかしさと、超ストレートな恋人からの正面攻撃に激しく動揺し、赤面した顔を必死に隠そうと、不自然に壁の方へと顔を背けた。


左右で繰り広げられる二つのバカップルな光景を目の当たりにしたエドは、ただただ長い溜息をつくしかなかった。彼の哀れな独り身の魂が、この晴れやかな朝に再びズキズキと痛む。しかし、エドが自分の運命を嘆く暇もなく、芽衣が突然、アメリカ入国に必要な電子ビザであるESTAの控え用紙がカバンの中にないと叫び声を上げた。千佳もまた、ショルダーバッグの中にパスポートが見当たらないとパニックになり始めた。


大都市の女子たちが混乱に陥る中、エドは非常に戦術的で頼りになる救世主として一歩前に出た。大自然で鍛えた科学的な観察眼と、鋭いカメラのような記憶力を駆使して、エドは先ほど彼女たちがカバンを開けた時に目に入った荷物の構造を正確に思い出していた。


「芽衣、落ち着いて。ESTAの用紙は失くなってないよ。さっき電車の中で、リュックのフロントポケットに入っている推理小説の本の間に挟んでたよ」エドは非常に冷静で安定した声のトーンで言った。それから彼は千佳の方を振り向いた。「それと千佳、君のパスポートは、今君が左手に持っているそのデニムジャケットの右側のポケットの中に入っているよ」


二人の少女がエドの指摘した場所を確認すると、一瞬にして、それらの重要書類はまさに言われた通りの場所から見つかった。エドが見せた冷静な対応と空間分析能力に、ウィリアムは感心したように口笛を吹き、蓮は腕の中の豚のぬいぐるみを少し下げて、同じ男として深い敬意の眼差しをエドに向けた。エドは東大や京大の学生ではないが、現場における実戦的な状況把握能力は、彼ら全員を遥かに凌駕していた。


手荷物と書類の手続きがすべて終わると、受付係から国際線の物理的な航空券が5枚手渡された。ウィリアムはそのチケットを一人一人に配っていった。


エドは自分のチケットを受け取った。彼の目は、白い紙の上に黒い太字で印刷された文字の羅列に釘付けになった。「Tokyo (NRT) to Dallas/Fort Worth (DFW)」。


その瞬間、エドの胸の奥深くに、非常に冷たい奇妙な動悸が突如として走った。天体ナビゲーションや自然のエコシステムを深く理解する彼の本能が、目に見えない危険のシグナルを捉えたのだ。彼の脳は自動的に、目的地であるキャド湖が、極限まで霧が深く、文明から遠く離れて孤立した内陸の沼地であることをマッピングしていた。自分たちが何か暗いものに向かって進んでいるのだと、耳元で冷たい振動が囁いているかのようだった。


しかし、ウィリアムが楽しそうに彼の肩を組んだことで、エドの冷たい妄想は一瞬で打ち消された。「おいエド、行くぞ! 飛行機の搭乗が始まった!」ウィリアムは興奮気味に声を上げた。前方では、芽衣がまだ恥ずかしそうにしている蓮の手を引いて小さなステップを踏みながら歩いており、千佳は飛行機に乗る前にスナック菓子を買ってほしいとウィリアムの隣で不機嫌そうに文句を言いながら歩いていた。


友人たちの幸せそうな姿を見て、エドは微笑み、首を振った。彼はその不吉な予感を、太平洋を越える長距離フライト前の単なる緊張だろうと振り払った。エドは登山用バックパックのストラップをきつく締め直し、眩しい空港の照明の下、彼らと共に出国審査ゲートへと足を進めた。


5人の仲間は、これからの美しい夏休み旅行の夢を胸に、互いに笑い合いながら前へと歩み続けた。自分たちのうちの何人かが、二度とこの成田空港の床を踏む機会を得られないことなど、永遠に知る由もなかった。

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