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月曜日の教室と、少しだけ変わった距離感

週が明けた月曜日の朝。

校門をくぐり、いつものように自分の教室へと足を運ぶ。


(昨日の今日だし……学校で顔を合わせるの、ちょっと緊張するな)


昨日の日曜、街の公園のベンチで交わした言葉や、私服の彼女が見せた照れくさそうな表情が、昨日のことのように頭から離れない。


ガラガラと教室の扉を開けると、いつものように窓際の席には、凛とした姿勢で教科書を読む長谷川凛の姿があった。


その美しさと隙のなさは相変わらずで、クラスの男子が話しかけようものなら、一瞬で凍りつかせるような「塩対応」を放つオーラをまとっている。


(……相変わらず、外では完璧な氷山だな)


俺は心の中で苦笑しながら自分の席に鞄を下ろし、朝のホームルームを待った。


やがて、担任の先生が教室に入ってきて、朝の連絡事項が始まる。

その間、長谷川は一度もこちらを振り返らなかった。


……だが。


ホームルームが終わり、次の授業の準備で周囲がざわつき始めたその瞬間。

長谷川がすっと右手を挙げ、自分の「右耳たぶ」にそっと指先を触れた。


(……っ!)


それは、紛れもない『今日の放課後、待ってる』という秘密の合図だった。


しかも、これまでなら背中越しにこっそりと送ってくるはずの合図を、今回はなんと、ほんの少しだけ顔をこちらに向けて、窓ガラスに映る反射を利用しながら見せてきたのだ。


その横顔の端には、隠しきれない微かな笑みと、うっすらと赤らんだ頬があった。


(おいおい、技術が高度になってるぞ……!)


俺はバレないように、そっとペンを2回カチカチと鳴らして『了解』の返事を示す。

すると、長谷川の肩が小さく跳ね、満足したように前を向き直った。


◇


お昼休み。

自分の机で弁当を広げていると、隣の席の男子・佐藤がひょいと顔を近づけてきたおい。


「なあ藤野、そういえばさっき職員室の前で生徒会の長谷川さんとすれ違ったんだけどさ」


「ん? それがどうかしたのか?」


「いや、それがさ……俺が挨拶しても、いつものように冷たい目でスルーされるもんだと思って身構えてたら、なんか……気のせいかもしれないけど、いつもより少しだけ機嫌良さそうに見えなかったか?」


「……機嫌が?」


「あぁ。なんていうか、口元が少し緩んでいたような……いや、気のせいか! あの氷山の副会長が機嫌いいわけないか!」


ハハハと笑いながら自分の席に戻っていく佐藤。


(いや、気のせいじゃないな……絶対にお菓子を楽しみにしている顔だ……)


周りからは相変わらず「近寄りがたい氷山」に見えているのだろうが、休日を経て、彼女の中で確実に何か小さな変化が起きている。

それは、俺の作ったスイーツに対する期待なのか、それとも——俺自身に対する信頼なのか。


考えるだけで、胸の奥がくすぐったくなるような甘い熱を帯びた。


◇


そして、放課後。


チャイムが鳴り響くと同時に、俺は誰よりも早く教室を抜け出し、実家の洋菓子店『パティスリー・フジノ』の裏口へと急いだ。


鍵を開けて厨房に入り、エプロンをつけ、今日の試作品である『特製レアチーズケーキ・ブルーベリーソースがけ』の仕上げをしていると——。


コン、コン、と控えめなノック音が響いた。


扉を開けると、そこには制服姿の長谷川が立っていた。

だが、今日の彼女はいつもと少しだけ違っていた。


部屋に入るなり、いつもなら一目散にソファへ倒れ込むはずが、今日は真っ直ぐ俺のところまで歩いてきたのだ。


「お、お疲れ様、長谷川さん。今日は早いね」


「……うん。なんだか、早く来たくなって……」


長谷川はそう言うと、エプロン姿の俺の服の裾を、キュッと両手で掴んだ。

そして、上目遣いでじっと俺を見上げてくる。


「……ねえ、葵」


「ど、どうしたの? そんなに近くで」


「昨日のこと……休日、一緒に買い物して、その……楽しかったから」


ポツリポツリと、紡ぎ出される言葉。

学校では絶対に聞けない、甘くて柔らかい彼女の本当の声。


「……私も、すごく楽しかったよ。また今度、休日に出かけられたらいいね」


「……っ! それって……デート、ってこと……?」


目を見開く長谷川。

その顔は一瞬で耳まで真っ赤に染まり、湯気が出そうなほどに熱を帯びていく。


「で、デートなんて一言も……!」


「う、うそつき……! そんなこと言われたら……私、次の休日まで待ちきれなくなっちゃうでしょ……!」


ぷっと頬を膨らませて、恥ずかしそうに俺の胸に小さくおでこをこつんと預けてくる長谷川。


冷淡な氷山の副会長なんて、ここにはもういない。

あるのは、俺の前でだけめいっぱい甘えてくる、愛おしい少女の姿だけだった。


「ほら、今日のレアチーズケーキ、冷えてるよ。食べる?」


「……食べる。葵が作ったものなら、なんでも……大好きだから」


「——っ!」


さらりと爆弾発言を落とした彼女は、真っ赤な顔のままソファへと小走りで逃げていった。


(……おいおい、今日の破壊力は反則級だろ……)


高鳴る心臓を抑えながら、俺は甘いチーズケーキのお皿を手に、彼女の元へと歩み出すのだった。

お読みいただきありがとうございました!


第6話では、休日を経て少しだけ距離感が縮まった月曜日の学校と、素直になり始めた長谷川さんの破壊力抜群なデレ姿をお届けしました!


【読者の皆様へお願い】

「長谷川さんの『大好き』破壊力がすごすぎる!」「二人の距離感がたまらない!」と思っていただけましたら、

ページ下部の**【ブックマーク追加】や【評価(★★★★★)】**をいただけますと、毎日の執筆の大きなモチベーションになります!


次回第7話は**「新たな波乱の予感? クラスの女子が長谷川さんの秘密に気づく……かも?」**をお送りする予定です。

ぜひブックマークしてお待ちください!


第六話の甘い展開と距離感の変化、いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ、このまま第7話のプロットや展開についてもお聞かせくださいね!

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