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白い日の奇跡と、世界で一番甘いホワイトデー

三月十四日。

晴れ渡る青空の下、春のあたたかな風が校庭の木々を揺らす白色情人節——ホワイトデー当日。

朝からクラスの男子たちが「お返し地獄だ……」「女の子の反応が怖すぎる……」と頭を抱えながら右往左往している中、私はいつも通り穏やかな気持ちで自分の席に座っていた。

——カバンの中には、先週こっそり試作して完璧に仕上げた『特製ホワイトショコラ・ムース、ベリーのジュレ包み』が入っている。

ふと、斜め前の席に視線を遣る。

長谷川凛(はせがわ りん)は、相変わらず美しい背筋を伸ばし、凛とした佇まいで生徒会のスケジュールを確認していた。

……だが、その耳たぶから首筋にかけては、まるで熟したリンゴのように真っ赤に染め上がっている。

(……昨日の夜から、『明日、放課後すぐに店に来るように』って、何通も念押しのLINEが来てたからな)

誰もいない隙を突き、長谷川がすっと右手でペンを二回カチカチと鳴らした。

——『絶対に忘れないでよね。遅れたら承知しないんだから』という、最高に可愛い無言の催促だった。

◇

そして、放課後。

終業のチャイムが鳴り響くと同時に、私は誰よりも早くカバンを掴み、教室を飛び出した。

実家の洋菓子店『パティスリー・フジノ』の裏口。

鍵を開けて厨房に入り、エプロンを整えて待つこと約三十秒。

ガチャリ。

勢いよく、でもどこか急ぎ足で勝手口の扉が開いた。

そこに立っていたのは、息を少し切らせた制服姿の長谷川だった。

「お、お疲れ様、凛。走ってきたのか?」

「っ……! だって……! は、早く葵に会いたかったんだもの……!」

長谷川はパタンと扉を閉めると、一目散に私の目の前まで歩み寄り、制服の裾を両手でギュッと掴んだ。

その瞳は潤んでいて、緊張と期待で胸がいっぱいになっているのが痛いほど伝わってくる。

「落ち着いて、ちゃんと逃げたりしないからさ。ほら、約束のホワイトデーのお返しだよ」

私は冷蔵庫から、丁寧にリボンをかけた特製の箱を取り出し、彼女へと差し出した。

長谷川はまるで宝物を受け取るかのように、震える両手でその箱をそっと受け取った。

そして、ゆっくりとリボンを解き、箱の蓋を開けた。

「——っ!」

中から現れたのは、先週彼女が目撃したあの『特製ホワイトショコラ・ムース、ベリーのジュレ包み』だった。

純白のムースの上には銀箔と粉糖がキラキラと輝き、まるで宝石のような美しさを放っている。

「これ……あのときの……!」

「うん。先月のお礼と、日頃の感謝を込めて。……ホワイトデーのお返しです、長谷川副会長」

「っ……! もう、そんな改まって……」

長谷川は嬉しさのあまり涙ぐみながら、小さなフォークでムースを一口すくい、そっと口へと運んだ。

「んん〜っ……♡」

食べた瞬間、彼女の全身から力が抜け、とろけるような最高の笑顔が咲いた。

「美味しい……っ! ホワイトチョコの優しい甘さと、中の甘酸っぱいベリーのジュレが……口の中で優しくとろけて……世界で一番、美味しい……!」

「気に入ってくれたなら、徹夜して作った甲斐があったよ」

「て、徹夜って……私のために、そんなに頑張ってくれたの……?」

長谷川は潤んだ瞳で私を見つめ、たまらなくなったようにスッと一歩近づいてきた。

そして、そのまま私の胸元にそっと額を預けてきた。

「……ありがとう、葵。こんなに素敵なサプライズ、一生忘れない……」

「どういたしまして。喜んでもらえて何よりだよ」

私は優しく彼女の黒髪をなでながら、ふと微笑んだ。

学校では誰もが恐れる「氷山の副会長」が、今ではこうして私の腕の中で甘いデザートに心を溶かしている。

このギャップと、彼女がくれる全幅の信頼が、愛おしくてたまらなかった。

「ねえ、葵」ん?

「ん?」

長谷川は顔を上げ、ほんのりと頬を染めたまま、真っ直ぐに私の目を見つめた。

「これからもずっと……私の隣で、こういう甘いお菓子と……甘い時間を、作ってくれる……?」

「もちろん。何度だって、世界一のスイーツを作ってあげるよ。約束する」

「……うん! 約束、ね……!」

彼女は満面の笑みを浮かべ、私の手のひらにそっと自分の手を重ねてきた。

恋人繋ぎ。

二人の指先がしっかりと絡み合い、これからの未来を誓い合うように温もりを分かち合っていく。

外の春風は心地よく吹き抜け、二人の甘いお菓子作りと秘密の恋は、これからもずっと、温かく続いていくのだった。

(第24話・おわり)

お読みいただきありがとうございました!


第24話では、ホワイトデー本番の「特製ホワイトショコラ・ムース」と、二人が交わした甘い約束をお届けしました!

長谷川さんの嬉し涙と、これからの未来に向けたデレデレの誓い、楽しんでいただけましたでしょうか?


【読者の皆様へお願い】

「ホワイトデーの展開が甘すぎて胸がいっぱいになった!」「二人にはずっと幸せでいてほしい!」と思っていただけましたら、

ページ下部の**【ブックマーク追加】や【評価(★★★★★)】**をいただけますと、毎日の執筆の大きな大きな励みになります!


次回、さらに甘さが加速する第25話もお楽しみに!

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