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期末テスト終了! そして、氷山副会長の初クッキング挑戦!?

地獄のような期末テスト最終日の試験終了ベルが、校舎中に高らかに鳴り響いた。

「お疲れ様ぁぁぁーーっ!! 解放されたぞぉぉぉーー!!」

教室のあちこちから、ゾンビのようにやつれ果てていた生徒たちの歓声と悲鳴が上がる。

佐藤なんて、すでに机に突っ伏して微動だにしなくなっていた。

俺——藤野葵(ふじの あおい)も、ぐったりと息を吐きながら教科書をカバンに詰め込む。

テスト勉強の期間中、図書館での手つなぎや、毎日のように裏口で食べたスイーツが、まるで昨日のことのように思い出されて熱くなった。

ふと、斜め前の席に視線をやる。

長谷川凛(はせがわ りん)は、相変わらず美しい姿勢でピタリと座っていたが、どこかいつもより足元がそわそわしているように見える。

彼女は周囲の生徒が片付けに夢中になっている隙を突いて、そっと右手で自分の「右耳たぶ」を二回、ちょんちょんと触った。

(……『今日の放課後、いつもより少し早く行く』の合図だな)

俺は小さく頷き、ペンを二回カチカチと鳴らして返答した。

その瞬間、長谷川の肩が嬉しそうにぴょこんと跳ねたのが見えて、思わず顔が緩んでしまう。

◇

テスト終了から四十分後。

実家の洋菓子店『パティスリー・フジノ』の裏口。

鍵を開けて厨房に入り、エプロンをつけようとした、その時だった。

コンコンコン、といつもより少し早いノック音が響く。

扉を開けると、そこには制服の上にミニサイズのパティシエエプロンを無理やり(しかし完璧に着こなしつつ)装着した長谷川凛が立っていた。

「お、お疲れ様、長谷川さん……って、そのエプロンどうしたの!?」

「……い、いいじゃない別に! 今日くらい、私も手伝い……というか、作りたいものがあるのよ!」

珍しく頬を紅潮させ、息を弾ませている長谷川。

彼女はスタスタと厨房の奥まで入り込むと、気合十分といった様子で両手を腰に当てた。

「作りたいものって……まさか、長谷川さんが料理を?」

「なによ、私だってやればできるわよ。……い、いつも葵ばかり美味しいものを作ってくれてるから……たまには、私からお礼をしたいなって思って……」

最後の方は蚊の鳴るような小さな声になってしまったが、その真剣な眼差しからは、彼女なりの精一杯の愛情と気合いが伝わってきた。

(——っ、可愛すぎるだろ……!)

「分かった。じゃあ、今日は俺がシェフの指示に従う助手をするよ。何を作る予定なの?」

「えっとね……『特製いちごのショートケーキ』よ!」

長谷川が胸を張って宣言した。

……だが、その直後。

彼女が作業台の上に用意した材料を見て、俺は思わず数秒間フリーズした。

「……長谷川さん。これ、砂糖と塩を間違えてない……?」

「えっ!? ううん、ちゃんとレシピ通りに——って、こっちが塩でこっちが砂糖!? ひゃっ!?」

慌てた長谷川がボウルをひっくり返しそうになり、反射的にバランスを崩した。

「危ないっ!」

俺は慌てて彼女の腰を抱き寄せ、作業台との間に押し込むようにして支えた。

◇

「——っ!?」

気づけば、俺は両手で作業台の端を掴み、その間に長谷川をすっぽりと閉じ込めるような体勢になっていた。

至近距離。

お互いの鼻が触れ合いそうなほどの距離感。

長谷川の瞳は驚愕で見開かれ、顔面は一瞬でトマトのように真っ赤に染め上がっている。

「あ、ご、ごめん……怪我なかった?」

「なっ……なにいきなり抱きついて……っ! ち、近すぎるわよバカ葵……!」

「いや、ボウルが落ちそうだったから体が勝手に……」

「うぅ……もう、私の計画がめちゃくちゃ……」

長谷川は恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆ってしゃがみ込んでしまった。

ミニエプロン姿で小さくなっている彼女の姿は、破壊力抜群の可愛さだった。

「はは、大丈夫だよ。初めてなんだから失敗して当たり前だし、一緒に作ろうよ。ね?」

俺が優しく声をかけながら手を差し伸べると、長谷川は潤んだ瞳でその手を見つめた。

そして、恥ずかしそうに自分の小さな手を、俺の手のひらに重ねてきた。

「……うん……助けて、シェフ……」

◇そこから始まった、ドタバタのケーキ作りだった。

泡立て器で生クリームをホイップするのには「腕が疲れた」とぷっと頬を膨らませ、スポンジケーキを綺麗に切れなくて「うぅ、断面が歪んだ……」と落ち込み。

その都度、俺が後ろから手を重ねて一緒に支えたり、「十分上手だよ」と頭をなでたりすると、長谷川は茹でダコのように真っ赤になって湯気を立てていた。

そして——一時間後。

プロのパティシエから見れば少し形は不揃いだが、愛情と悪戦苦闘がこれでもかと詰まった『特製いちごのショートケーキ』が完成した。

「……できた……!」

長谷川は額の汗をハンカチで拭いながら、達成感に満ちた最高の笑顔を浮かべた。

その表情は、学校で見せる「氷山の副会長」の面影など微塵もない、ただの恋する可愛い女の子だった。

「じゃあ、さっそく切り分けて……」

「待って!」

長谷川が慌てて俺の制服の袖を掴んだ。

「え? どうかしたの?」

「……その……自分で切ったから、形が変だし……恥ずかしいから……その……」

彼女は顔を真っ赤にしたまま、フォークにケーキの一切れを小さくすくい取った。

そして、おずおずと俺の口元へと差し出してきた。

「……あ、あーん……って、早く食べなさいよ!」

(……あーん、だと……!?)

破壊力抜群のイベントに、俺の心臓は一撃で限界を突破した。

「じゃあ……いただきます」

俺が素直にパクッと口に入れると、甘い生クリームとスポンジ、そしてイチゴの酸味が口いっぱいに広がる。

少し形は崩れていたけれど、これまで食べたどんな高級ケーキよりも甘く、美味しかった。

「……どう……? 美味しくなかった……?」

不安そうに上目遣いで聞いてくる長谷川。

「すごく美味しいよ。世界一美味しいケーキだ」

「——っ! ま、当たり前でしょ! 私が作ったんだから……!」

照れ隠しのようにぷいと顔を背ける長谷川だったが、その口元には隠しきれない満面の笑みが浮かんでいた。

「ねえ、葵。残りは二人で一緒に食べよ?」

「うん、そうだね」

期末テストが終わった解放感と、二人で作り上げた甘いケーキ。

冬の寒さも忘れてしまうほど温かい時間が、放課後の小さな厨房を優しく包み込んでいくのだった。

(第10話 おわり)

お読みいただきありがとうございました!


第10話では、期末テスト終了の解放感と、長谷川さんの初クッキング&破壊力抜群の「あーん」イベントをお届けしました!

普段のツンデレ(塩対応)と全力デレのギャップを楽しんでいただけましたでしょうか?


【読者の皆様へお願い】

「長谷川さんの手作り&あーんが可愛すぎて昇天した!」「甘すぎて最高!」と思っていただけましたら、

ページ下部の**【ブックマーク追加】や【評価(★★★★★)】**をいただけますと、毎日の執筆の大きな大きな励みになります!


次回第11話は**「いよいよクリスマス直前? 街のイルミネーションと、二人の関係に訪れる新たな一歩」**をお送りする予定です。

ぜひブックマークしてお待ちください!

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