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毒を啜るなら黒百合(ダークリリィ)と共に  作者: 3色あんこ


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第14話 王国に咲く黒百合

第14話 王国に咲く黒百合


 王宮の大広間には、張り詰めた沈黙が満ちていた。


 玉座の前に跪くのは、北方を治めるニグルム侯爵。そして、その隣に立つ男──王宮筆頭秘書官、セルキス・キネンシス。

 長年、王家に仕え、王宮の機密を管理してきた男。

 そして、王国の秩序を内側から蝕んできた裏切り者。


「陛下。此度の召喚について、私は何も存じ上げません。何かの誤解ではございませんか」


 ニグルム侯爵は、恭しく頭を垂れた。

 その声には、悲痛さすら滲んでいた。


「私はこれまで、王国の安寧と領民の幸福のために尽くしてまいりました。私が軍資金を横領したなど、到底信じられぬ話でございます」

「ほう」


 王太子アシュレイン・ボルシギアナは、静かに口を開いた。


「では、これも誤解だと言うのか?」


 彼が手を挙げると、近衛兵が一冊の帳簿を差し出した。


「北方軍へ支給された軍資金。その一部が、侯爵家と関係する商会を経由し、私的な倉庫へ流れていた記録だ」


 続いて、別の書類が置かれる。


「軍需物資の輸送記録。前線へ届けられるはずだった食糧と武具の数量が、実際の納入量と一致していない」


 さらにもう一冊。


「そして、隣国へ渡った軍の配置情報。警備交代の時刻まで正確に記されている」


 アシュレインは、侯爵を見下ろした。


「これらすべてが、偶然だと?」

「そ、それは……!」


 侯爵の表情が歪んだ。


「商会の者が勝手に行ったことでございます! 私の知らぬところで、誰かが侯爵家の名を利用したのでしょう!」

「なるほど。君は何も知らないのか」

「左様でございます!」

「では、慈善事業への寄付金が、軍需物資の不正移送に関係する商会へ流れていた件も?」


 侯爵は口を閉ざした。


「教会の帳簿、商会の取引記録、軍務局の出庫記録。異なる場所に残された記録が、すべて同じ経路を示している。君がどれほど嘘を重ねようと、記録までは口裏を合わせてくれないらしい」


 その言葉に、侯爵の顔から血の気が引いた。

 玉座の隣に立つヴェルシェリア・ポインセットは、優雅な微笑みを浮かべていた。


「侯爵。あなたは慈善家として知られておりましたね」

「……公爵令嬢」

「貧しい領民を救うために寄付を募り、教会へ多額の献金を行い、王宮では平和を願う言葉を口にする。実に立派なお振る舞いです」


 彼女は、わずかに首を傾けた。


「ただ、あなたが救おうとしていたのは領民ではなく、ご自身の評判だったようですが」

「無礼な!」


 侯爵が顔を上げた。


「小娘が!貴様に何が分かる!貴族社会の現実も知らぬくせに、正義を語るな!」

「侯爵」


 アシュレインの声が、広間に落ちた。

 それだけで、侯爵は口をつぐんだ。


「今、発言を許されているのは君ではない」


 穏やかな声だった。

 けれど、その瞳には一片の温情もなかった。


「そして、君の罪を明らかにしているのは正義という抽象的な言葉ではない。君自身が残した記録だ」


 侯爵は、何も言えなくなった。

 アシュレインは、今度はセルキスへ視線を向けた。


「セルキス・キネンシス」

「……はい、殿下」

「君は長年、王宮の文書と命令の流れを管理してきた。その権限を利用し、軍事機密を外部へ流し、ニグルム侯爵の不正を助けていた」

「私は、職務を果たしてきたにすぎません」


 セルキスは表情を崩さなかった。


「さらに、王の御身に関する手配と、王太子の即位を阻止する計画について記された書簡も発見された」


 アシュレインは、書簡を一通、掲げた。

 そこには、黒い金属の徽章と同じ意匠が刻まれた封蝋が残されていた。

 円環の内側に、二枚の翼。そして、その中央を貫く剣のような紋様。

 その下に記された言葉は、ただひとつ。


──願いは、王の死によって成就する。


 セルキスの瞳が、ほんのわずかに揺れた。


「……それを、どこで」

「君が知る必要はない」


 アシュレインは書簡を下ろした。


「それよりも、答えてもらおう。なぜ、王の死が必要なのだ?」


 セルキスは沈黙した。

 やがて、彼は小さく息を吐いた。


「……殿下は、何もご存じないのですね」

「何?」

「この国の王家が、どのようにして今の地位を築いたのか。何が隠され、何が書き換えられたのか。殿下は、何も知らされていない」


 広間がざわめいた。

 セルキスの声には、初めて感情が滲んでいた。

 恐怖ではない。

 後悔でもない。

 長年胸の奥に抱えてきた、歪んだ確信だった。


「私は、誤った王を戴くことが王国の破滅につながると考えました。だからこそ、正しい未来を選ぶために動いたのです」

「そのために、王を殺す手配をしたのか」

「必要な犠牲です」


 その言葉に、広間の空気が凍りついた。


「王の死によって、正しい継承が実現する。そうすれば、この国は本来あるべき姿を取り戻せる」

「本来あるべき姿、か」


 アシュレインは、わずかに目を細めた。


「その正しさを決めるのは、君だと?」

「誰かが決めなければなりません」


 セルキスは答えた。


「誰もが真実を知れば、国は混乱する。だからこそ、隠すべきものがある。守るべき秘密がある。私はその責任を引き受けたのです」

「違うな」


 アシュレインは即座に否定した。


「君は責任を引き受けたのではない。自分の望む結末を正義と呼び、他者の命をそのための道具にしただけだ」


 セルキスの顔が歪んだ。


「殿下こそ、何を正義とおっしゃるのですか」


 彼の声が、わずかに大きくなる。


「殿下もまた、罪ある者を秘密裏に排除してきたのでしょう。公爵令嬢が標的を選び、殿下が裁定を下す。法廷にも、公開の審理にもかけず、ただ王族の判断によって人を消す」


 広間の空気が張り詰めた。

 それは、黒百合が公にしてこなかった領域だった。


「あなた方も同じです」


 セルキスは言った。


「国のためと称し、己の判断で人を切り捨てる。私と何が違うのです!」


 ヴェルシェリアは、一歩も動かなかった。

 彼の言葉は、完全な嘘ではない。

 黒百合は、清廉潔白な組織ではなかった。

 彼らは証拠を集め、罪を見極め、その結果を王へ届ける。その過程では、法の外側で情報を集め、敵の計画を阻止するために、時には人を欺き、秘密裏に手を下すこともある。

 彼ら自身もまた、罪を犯している。

 それを、ヴェルシェリアは否定しなかった。


「ええ」


 彼女は静かに答えた。


「私たちもまた、罪を犯しております」


 セルキスの目が、彼女へ向けられた。


「私たちは、自らを無垢だとは申しません。正義の名を掲げれば、すべての行いが許されるとも考えておりません」


 ヴェルシェリアは微笑んだまま続けた。


「ですが、私たちは少なくとも、自らが何をしたのかを知っております。何を守るために動き、何を犠牲にし、その責任がどこにあるのかを」

「それが、何になる!」

「あなたは違う」


 ヴェルシェリアの微笑みが、わずかに深くなった。


「あなたは裏切りを、王国への忠誠と呼んだ。命を奪う計画を、必要な犠牲と呼んだ。そして、自分の望む結末を、正しい未来と呼んだ」


 彼女は、赤い瞳でセルキスを見据えた。


「あなたが犯した罪よりも、あなたがその罪を何と呼んでいるのか。そのことを、わたくし達は問題にしております」


 セルキスは、何も答えなかった。


「自分が怪物であると知りながら、それでも進む者と。自分の怪物性を正義と呼び、他者にその罪を押しつける者。同じではございません」


 その言葉は、彼を救うためのものではなかった。

 ただ、彼が目を逸らし続けてきたものを、彼自身の前へ置くための言葉だった。

 アシュレインが、玉座の前に立ち上がった。


「王よ」


 彼は父である国王へ向き直った。


「ここにある記録と証言は、ニグルム侯爵による軍資金の横領、軍需物資の不正移送、隣国への軍事情報の漏洩を示しております。また、セルキス・キネンシスが王宮の職務権限を利用し、これらの行為を助け、王の御身に関する計画と王位継承を巡る陰謀に関与したことも示しております」


 彼は、わずかに間を置いた。


「ただし、王家の血統と継承に関する記録については、なお解明すべき点が残されております。彼らの罪と、そこに記された内容の真偽は、分けて調べる必要がございます」


 ヴェルシェリアは、静かに目を伏せた。

 まだ、すべてが明らかになったわけではない。

 敵は失脚する。

 だが、敵が残した謎まで消えるわけではなかった。

 国王は長い沈黙の後、口を開いた。


「ニグルム侯爵」

「……陛下」

「貴殿の爵位を剥奪する。領地と財産については、王国法に基づき調査を行い、不正に得た資産を没収する。また、軍資金の横領、物資の不正移送、隣国への情報漏洩について、正式な審理を行うものとする」


 侯爵の顔が、みるみる青ざめていった。


「お待ちください、陛下!私は王国のために──」

「黙れ」


 国王の声が、広間を打った。


「王国のためと称して兵を飢えさせ、領民を苦しめ、国の守りを危うくした。その責任から逃れることは許さぬ」


 侯爵は膝をついた。

 その姿を、誰も助けようとはしなかった。

 国王は続いて、セルキスへ視線を向けた。


「セルキス・キネンシス。貴殿を筆頭秘書官の職から解任する。王宮の文書管理権限を剥奪し、身柄を拘束する。王の身に関する計画、王位継承を巡る陰謀、ならびに機密文書の不正な持ち出しについて、厳正な審理を行う」

「……陛下」


 セルキスは、静かに頭を下げた。


「私は、間違ってなどおりません」


 誰に向けた言葉だったのか。

 王か。王太子か。それとも、己自身か。


「いつか、殿下も知ることになるでしょう。何が隠され、何が守られてきたのかを」


 その言葉を最後に、彼は近衛兵に連れられていった。

 ニグルム侯爵もまた、かつて自らの威光を誇った大広間から引き立てられていく。

 2人が去った後、そこには奇妙な静寂が残された。

 長く王宮を覆っていた疑惑のひとつが、ようやく形を与えられた。


 けれど、それはすべての終わりではなかった。

 むしろ、王国が長く隠してきたものへ至る、最初の扉が開いたにすぎない。

 アシュレインは、玉座の前で静かに息を吐いた。

 そして、隣に立つヴェルシェリアを見た。

 彼女は彼を見返し、いつもと変わらない微笑みを浮かべた。


 言葉は必要なかった。

 彼が何を裁き、何を背負うのか。

 彼女が何を見抜き、何を選んだのか。

 2人は、そのすべてを知っていた。


 王は裁定を下した。

 王女は最後まで、その隣に立っていた。

 それが、彼らの答えだった。



 ◇


 その夜。

 王宮の地下深くにある部屋へ、7人が集まっていた。

 石壁に囲まれた室内には、いつもと変わらない灯りが揺れている。


 豪奢な調度品はない。

 勝利を祝う酒も、花束もなかった。

 ただ、使い込まれた机と椅子そして、7人が帰ってくる場所があった。


「……ひとまず、侯爵の権力は崩れましたね」


 ソクラドが、机の上に置かれた報告書を指先で揃えた。


「商会への資金の流れも、かなりの部分が押さえられました。関係者の証言も得られています。少なくとも、これまでのように好き勝手には動けないでしょう」

「軍の命令系統も、再確認が必要だな」


 グロリアが腕を組んだ。


「侯爵の息がかかった連中が、まだ残っている。解任された秘書官の指示で動いていた者もいるはずだ。すべてを洗い出すまでは、安心できない」

「教会の慈善事業についても、調査を続けます」


 リンドウェルは、穏やかな声で言った。


「寄付金が本来届くべき場所へ戻るように。そして、今回の件に関わっただけで、罪のない者まで責められることがないように」

「私も、侯爵家の私兵が使っていた倉庫をもう一度調べます」


 ライラが続けた。


「それと、軍務大臣グラディウス公爵についても、引き続き調査が必要だな」


 グロリアが差し出した報告書に、ヴェルシェリアは静かに目を落とした。

 ニグルム侯爵の不正に関わる記録の中には、軍務大臣の管轄下で扱われた物資や、軍の管理番号が記された書類が残されていた。

 しかし、それだけでグラディウス公爵本人の関与を断じることはできない。


「関係者の名が記されていることと、その者が罪を犯したことは別ですわ」


 ヴェルシェリアは報告書を閉じた。


「証拠が揃うまでは、決して手を出してはなりません」

「承知した」


 グロリアは力強く頷いた。

 ニグルム侯爵とセルキスの罪は明らかになった。けれど、彼らの不正がどこまで広がっていたのか、まだすべてが解明されたわけではない。

 黒百合が暴いたのは、王国を蝕む闇のすべてではない。

 ただ、その一端にすぎなかった。


「まだ、見つかっていないものがある気がします」

「王宮の警備も、当面は強化する」


 ローレンは短く告げた。


「今回の一件で、敵がすべて消えたわけではない」


 誰も反対しなかった。

 勝利の後にも、やるべきことは残っている。

 失われた資金を取り戻すこと。

 不正に関わった者を調べること。

 傷つけられた者たちを救うこと。

 そして、セルキスが口にした王家の血統と継承に関する秘密を明らかにすること。

 黒百合の仕事は、まだ終わっていなかった。


「……それでも」


 ソクラドが、いつもの軽い調子を少しだけ取り戻した。


「こうして全員が無事に戻ってこられたことは、喜んでもよいのではありませんか?」

「お前は怪我をして帰ってきただろう」


 ローレンが言った。


「それはもう、治りましたよ」

「治ったことと、無事であることは違う」

「おや。剣殿は、なかなか厳しい」

「うるさい」


 グロリアが笑いだした。


「ははっ!まったく、いつも通りじゃないか!」

「騎士、声が大きいです」


 ライラが淡々と指摘する。


「ええっ、今くらいはいいだろう!?」

「駄目です。ここは地下です」

「地下なら声が大きくてもいいだろう!?」

「そういう問題ではありません」


 いつも通りのやり取りだった

 けれど、誰もが知っていた。

 この部屋に戻るまでに、彼らはそれぞれの手を汚してきた。


 誰かの嘘を暴くために、彼ら自身も秘密を抱えた。

 罪人を捕らえるために、法の外側から手を伸ばした。

 守るべき者を守るために、他者を欺き、時には容赦のない判断を下した。


 そして、その結果によって救われた者がいる一方で、彼らの行動によって傷ついた者も、きっといる。

 その事実を、誰一人として否定しなかった。


「……私たちは、正しいのでしょうか」


 ふと、ライラが呟いた。

 いつもなら、彼女は自分の思いを多く語らない。

 だからこそ、その問いは部屋の空気を静かに変えた。


「私たちは、罪を犯した人を裁きました。でも、私たちも罪を犯しています」


 ライラは、自分の手を見つめた。


「ならば、私たちも……いつか、裁かれるのでしょうか」


 誰も、すぐには答えなかった。

 リンドウェルが、静かに口を開いた。


「その可能性は、あるでしょう」


 ライラが顔を上げる。


「私たちも人間です。過ちを犯しますし、自分たちの判断が常に正しいと証明することもできません」


 彼は、穏やかに微笑んでいた。


「だからこそ、忘れてはならないのです。自分たちが何をしたのかを。そして、その結果に責任を負う覚悟があるのかを」

「……それでも、進むのですか?」

「ええ」


 リンドウェルは答えた。


「少なくとも、今の私たちは、そう選びました」


 ライラはしばらく考えてから、小さく頷いた。


「……私も、そうします」

「あたしたちは聖人じゃない」


 グロリアが、いつになく真剣な声で言った。


「けれど、だからといって、何もしない理由にはならない。目の前で誰かが踏みにじられているのを知っていて、何もしない。あたしは、そっちのほうが嫌だ」

「同感ですな」


 ソクラドが頷いた。


「商人は利益を求めるものですが、何を売り、何を売らないのかは、自分で決められますからね」


 ローレンは短く息を吐いた。


「俺は、王と王女を守る。それが俺の選択だ」

「私は、ヴェルシェリア様をお守りします」


 ライラも、迷いなく続けた。


「私がそうしたいからです」


 リンドウェルは目元のレースに触れた。


「私は真実を記録し、必要な場所へ届けます。何を見ても、忘れないために」


 ソクラドは、指先で報告書の端を整えた。


「私は情報を集め、売るべきものと売ってはならないものを見極めましょう」


 グロリアは、拳を握る。


「私は、守りたい者のために戦う」


 それぞれの答えは違った。

 けれど、そのどれもが、他人に与えられた命令ではなかった。

 自分で選び、自分で背負うと決めたものだった。

 最後に、6人の視線が王太子へ集まった。

 アシュレインは、しばらく彼らを見つめていた。


「私たちは、清廉潔白な正義の味方ではない」


 彼は言った。


「王国の法だけでは救えない者がいる。法を利用して罪を逃れる者がいる。そして、正しい手続きを待つあいだにも、誰かが犠牲になることがある」


 その声に、迷いはなかった。


「だからといって、私たちの行いがすべて許されるわけでもない。私たちが犯した罪もまた、消えることはない」


 アシュレインは、ゆっくりと六人を見渡した。


「それでも、私たちは選ぶ。何を守るのか。何を許さないのか。そして、自分たちが何をしたのかを、決して忘れないことを」


 ヴェルシェリアが、彼の隣に立った。


「わたくしたちは、怪物ですもの」


 彼女は微笑んだ。


「怪物だからこそ、それを飼い慣らし、振るうべきものに振るう」


 その言葉に、誰も異を唱えなかった。

 自分たちの手は汚れている。

 その事実を否定しない。

 罪を犯したことを美化しない。

 ただ、その罪を抱えたまま、自分たちが選んだ道を歩く。

 それが、黒百合の七席だった。

 やがて、アシュレインが口を開いた。


「今後も、真実を集めろ。罪を見極めろ。私に届けろ」


 そして、静かに告げる。


「裁くべき者は、私が裁く」


 王の言葉だった。

 その隣に、王女が立つ。

 7人の怪物たちが、同じ場所に集っている。


 王国の人々は、彼らを知らない。

 彼らがどれほどの秘密を抱え、どれほどの罪を背負い、何を守るために動いているのかも。

 人々が知るのは、王宮で下される裁定と、王国の秩序が保たれているという事実だけだ。


 彼らは、称賛を求めていない。

 赦しを求めてもいない。

 ただ、自分たちの選択が何をもたらすのかを見届ける覚悟を持っていた。

 王国の地下で、7つの影が静かに立ち上がる。


 その中心には、王と王女がいた。

 王国のために、罪を裁く者たち。

 そして、罪を犯しながらも、その罪から目を逸らさない者たち。

 彼らの名を知る者は、まだ少ない。

 けれど、王国の暗闇には、確かに花が咲いていた。


 誰にも称えられず。

 誰にも赦されず。

 それでも、枯れることなく。

 王国に咲く、黒百合が。

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