転.『ざまぁ』という名の愚かな最期
具体的に、どんなざまぁの最期になったかは、AIさんはもちろん、作者本人も知りません(マテ)
謀反は、あまりにあっさりと成就した。
レオンハルトが「地方視察」と称した狩りに興じている最中を狙って、セレスティア派は王城を静かに制圧した。
武装した兵士が城門と重要施設を押さえるが、抵抗らしい抵抗はなかった。衛兵たちの多くは事前に懐柔されており、ある者は進んで道を開けた。宮廷官僚たちも、突然の事態に驚きはしたものの、意外なほど冷静に新政権への協力を誓った。
多くの廷臣と、その背後にいる国民は、外面が良いだけで実態は傲慢で無能だったレオンハルトの治世よりも、怠惰だけど本気だしたら賢王と称しても良いほどに有能だったセレスティアの台頭を、密かに望んでいたのだ。
老王は玉座の間に一人残され、全てを悟ったように首を垂れていた。
セレスティアが、僅かな側近を従えてその間に足を踏み入れる。
「……そうか」
老王はゆっくりと顔を上げ、老い込んだ目で娘を見つめた。
「お前が本気で動く時は、これほどまでに迅速で、徹底しているのか」
驚きというより、ある種の諦観に近い声だった。
セレスティアは、相変わらず面倒くさそうな、少し疲れた表情で答えた。
「だって、長引けば長引くほど、反対派の対応や民心の離反を防ぐ処置など、後処理が面倒ですから。クーデターは短期決戦が鉄則です」
彼女は一歩前に進み出る。
「父上。あなたには、郊外の別邸に移っていただきます。少数の使用人と生活費は用意しますが、もう国政に関わらないでください。それが一番、あなたにとっても、国にとっても、面倒が少ない選択です」
老王と、遊びから呼び戻されて茫然自失のレオンハルトは、王位とその継承権を剥奪され、実質的な追放となった。
老王は心のどこかで、こうなる運命を予感していたのだろう。自らの教育の失敗、無能な長子への盲目的な擁護、有能な娘の反逆――その結果を、彼は何も言わず、静かに受け入れた。
だが、レオンハルトは違った。
「ふざけるな! この裏切り者め!」
彼は衛兵の静止を振りほどこうともがき、セレスティアに向かって激しい罵声を浴びせた。
「全てはお前の陰謀だ! セレスティア! お前が最初から余の婚約者エレオノーラを唆し、俺を貶めようとした! さらには新しい愛しい人マリアも……あの女が消えたのは、絶対にお前の仕業だろう!」
彼の逆恨みは、もはや現実を見る目を失い、狂気の域に達していた。
「俺は王太子だ! この国の正当な後継者だ! お前如きが玉座に座ることを、誰が認めるか!」
セレスティアは、彼の叫びを冷たい目で見つめた。
(今ここで適切に処置しなければ、この兄上は、追放先で面倒ごとをやらかす。逃亡を試みるか、残存勢力を集めて反乱を企てるか。どちらにせよ、将来の大きな面倒ごとになる)
彼女はため息をつきながら、即座に兄をより厳重に――場合によっては永久にさよならする処分を下そうとした。
衛兵隊長が命令を待ち、周囲の空気が張り詰める。
しかし……セレスティアは、その命令を口にすることができなかった。
処刑や永久監禁という言葉が、喉まで上がりながら、飲み込まれてしまう。
(面倒を避けるため、情に流されるな!!)
頭ではわかっていても、行動にはできなかった。
兄は、無能で、傲慢で、自分に多くの面倒を強いる愚者ではある。だが、子供の頃、一緒に庭を駆け回った記憶も確かにある。自分が熱を出した時、真っ先に駆けつけてきたのもこの兄だ。
家族としての情。それが、セレスティアの心のどこかに、かすかながら確かに存在していた。彼女は、兄への決定的な処分を、最後の最後で下せなかったのだ。
「私のこの甘さは、父上譲りかしら」
彼女は自嘲気味に、もう一度深いため息をついた。
答えはわからない。でも、セレスティアは、ただ甘いだけの老王とは違った。
「兄上の監視を予定の3倍に増やしなさい。何かあれば、すぐ私に報告を」
「監視だけですか?行動の制限はしないのですか」
「万が一にも反省して更生する可能性もあるし、温情としてある程度の自由は与える。その与えられた自由をロクでもない事に使おうとしたら……その時改めて……処分を……下す」
できれば、そんな選択肢を取らせないでほしい。
セレスティアはそう願いながらレオンハルトに温情を与えたのだが……
当然のことながら、アレは全く理解していなかった。
―——
追放先となる国境付近の小さな領地で、レオンハルトは早速とばかりに復讐の計画を練り始めた。かつての王太子としてのコネクションを頼り、密かに私兵を集め、武器を調達していた。
「見てろよ……俺が受けたこの屈辱。何倍にもして返してやる!!」
彼の声は低く、震えていた。その血走った目には、狂気の光が宿っていた。
王太子の座を追われた彼は、皮肉にもその眠っていた才能を開花させたようだ。王太子時代ではありえない程の手際の良さで復讐計画を進めたのだ。もっとも、その動きは、抜かりなく構築していた情報網でもって速やかに女王となったセレスティアに届けられていた。彼女は、報告を聞きながら、またしても深いため息をついた。
「はあ……やっぱり面倒なことになったわ。これ以上は放っておけないし、ここは心を鬼に……いや、よくよく考えたら、私が処分するよりも有効な手があったわね」
にやりっと面白い事を思いついたっと言わんばかりに笑ったセレスティアは呼び出した書記官に命じた。
「あれの元婚約者であるエレオノーラ様に連絡を。適当な報酬を提示して、あれに『容赦ない処分』を下してもらえるよう依頼しなさい。彼女なら……いや、彼女の新たな婚約者様が喜んで引き受けてくれるでしょう」
女王セレスティアの親書を持つ使者が向かった先は、ヴァルハリア帝国だった。
国から追放されたエレオノーラは、国境付近で皇太子であるフリオニールと出会い、事情を聞いたフリオニールは手を差し出したのだ。
「あなたの聡明さは我が帝国にも届いている。これからは、その聡明さを我が帝国のために使ってほしい」
その手を……申し出を受けたエレオノーラは彼の元でその聡明さを存分に発揮。
罵声を浴びせられながら押し付けられた政務や尻拭いに奔走する日々から、感謝されながら帝国がより豊かになるやりがいのある仕事に精を出す日々。
その充実した日々が、エレオノーラの眠っていた才覚をさらに開花させた。今では帝国の未来の皇太子妃として多くの者から尊敬を集めるほどになっていた。
女王セレスティアからの親書を読んだエレオノーラは、静かに微笑んだ。彼女の横に立つ皇太子フリオニールは、婚約者の微笑みで全てを察し、使者に告げた。
「報酬など無用だ。むしろ、我が婚約者が受けた屈辱を晴らす機会を与えてくれた、めんどくさがりだが何よりも賢いセレスティア女王陛下に感謝しよう」
使者が一礼と共に去った後、皇太子は目を楽しげに輝かせた。
「受けた屈辱は倍返し……いや、それ以上にして返すのが、帝国の流儀だ。女王様の望み通り……奴には『容赦ない処分』を下してやろう」
―——
レオンハルトが密かに集めた私兵は、三十人ほどだった。彼らは計画の第一歩として活動資金の調達。近場の村を襲ってその財を奪うため、森の中の簡易拠点に潜んでいたのだが、夜に襲撃を受けた。
闇に乗じて襲ってきたのは、モヒカンヘルメットを被り、トゲ付き肩パットの軽鎧を身に着けた、異様な集団——その正体はならず者に変装した、皇太子フリオニールが引きいる帝国の精鋭部隊——だった。
彼等は「ヒャッハー!」という奇声を上げながら釘バットを振り回し、突然の襲撃で混乱しているレオンハルトの私兵を次々と打ち倒していく。
「ヒャッハー!おかしら、こいつらはどうしやすか?殺しますか?」
私兵達を一通りボコって制圧した後、部隊のリーダー格の男が、ならず者に変装中の皇太子フリオニールに尋ねた。
「この一番偉そうな奴は捕縛して奴隷にする。他は……面倒だから、皆殺しだ」
「ヒャッハー!そういうことだー!!なぶり殺しにしてやるぜー!!」
首領となるレオンハルトだけは生きたまま捕縛され、他の者たちは命令通りに全員なぶり殺し。死体は疫病の原因にならないよう、油を撒いて燃やした。
一夜にして、レオンハルトの私兵軍団は壊滅したのである。
―——
「くそっ、俺は王太子なんだぞ!!貴様らは王太子に傷をつけた罪で処刑にしてやる!」
簀巻きで荷馬車に放り込まれたレオンハルトは、道中ずっと喚き続けた。しかし、誰も彼の言葉を真に受けない。適当にあしらわれながら、彼は帝国の鉱山奴隷として売り飛ばされることになった。
売り渡しの場には、偶然にも「鉱山視察」の名目に訪れていた皇太子フリオニールとその婚約者エレオノーラも同席する。
レオンハルトはエレオノーラの姿を見るなり、目を見開いた。
「エレオノーラ!お前か!よかった、助けてくれ!この誤解を解いて、俺を解放しろ!」
彼の傲慢な態度は少しも変わっていなかった。エレオノーラは静かに彼を見下ろし、ゴミを見るような目でこう返す。
「あらあら、奴隷の分際で『心が醜い』私に何を期待してるのでしょうか?」
『心が醜い者』
かつてのレオンハルトが彼女に投げつけた言葉が、彼自身を追いつめる言葉とした襲い掛かった。
「ち、違う。あれは……そうだ!お前は俺を愛していたんだろう!愛する者の危機なのだから、救うのが当然というものだろ!!そうだろう!!」
必死に喚くレオンハルト。エレオノーラは微動だにせず、淡々と告げた。
「どうやら、あのゴミは自分が奴隷だと理解してないようね。なら、わかるようしっかり教育しておきなさい」
さらに、フリオニールも続く。
「その通り、これは未来の皇太子妃の名で下す命令だ。自分の立場がわかるまで、たっぷりの鞭をくれてやれ」
「かしこまいりました」
鉱山の責任者は命令を実行するために鞭を取り出す。
「ま、まて!俺はアルテリア王国の王太子で、王になる男だ!!そんな男に……」
バシン!!
「ギャー!!」
バシン!
「ギョエー!!」
バシン!
「ギエー!」
鞭の音と悲鳴が響く中、フリオニールとエレオノーラは静かにその場を去った。後で聞いた話では、レオンハルトは半死半生になるまで鞭打たれたという。
だが、それだけ鞭打たれても、レオンハルトの傲慢さは変わらなかった。
むしろ、逆恨みの念を強くするばかり。反抗的な態度を取る度に鞭が振舞われるが、その度に「いつか必ず復讐してやる」と呟いた。
そんな傲慢な愚か者の最期は、報告によれば「鉱山の深い穴に落ちての事故死」だった。もっとも、事故の直前に再度視察として訪れていたフリオニールが、にやりと笑いながら「悲しい事故だったな」と述べたことから、単なる事故ではなかったことは誰の目にも明らかであろう。
その後、レオンハルトの愚かな最期は、誇張を交えた物語や演劇の題材となった。『傲慢王太子の末路』『倍返しざまぁ劇』などの題名で、各地で上演されるようになった。世間の人々は、これを痛快な「ざまぁ」話として楽しんだ。
一方、セレスティアの手配で逃げ出した平民のマリアは、帝国とはまた別の隣国の国境付近の街の酒場で看板娘として働いていた。
一部の者は彼女にもなんらかの報いを与えるべきっと主張したが、セレスティアは取り合わなかった。
「彼女の罪は、知らなかっただけ。真実を知った事で反省し、面倒ごとを起こそうとしないなら、もうそっとしておきなさい」
最大の被害者であるエレオノーラも、セレスティアと同じ意見だった。彼女は「マリアもレオンハルトの被害者です」と意思表示し、さらに「あのざまぁ劇で悪役として描かれるので、十分な報いは受けているでしょう」と付け加えた。これで、不満を抱く者たちも納得したという。
ちなみに、皇太子様の名前はAIさんが付けてくれなかったのでこちらが適当にというか……
レオンハルトでピンっと来たのが、あの童貞さんでした。
でもって、名付けた後に愛人が『マリア』だったことに気付いたりしますた_(:3 」∠)_エーアーサンハネラッテヤッタノダロウカ?




